萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「華の碑文ー世阿弥元清」(杉本苑子著) を読む

今更ながら、杉本苑子さんの作品を初めて読みました。
面白かった!

3/19放映の「俺の家の話」に、
「家、家にあらず、継を以て家とす」という世阿弥の言葉が出てきたけど、
まさに、このことが体現されている作品。

晩年の世阿弥って、なんとなく不遇の人、というイメージがあったけど、
それが気持ちよく裏切られました。

この作品を読むまでの世阿弥イメージは、
若くして成功を納めたけど
自分の子供は早世しちゃうし、
佐渡に流されちゃうし、
失意のなかで生涯を終えた人
・・・だったんだけど。

いやいや、世阿弥は、ヨッシャーってくらい、満足して亡くなったのねー、と。

世阿弥の願いは、お能が後世も上演され続ける、ということで、
それ以外は、あんま重要じゃない、と思っていたっぽい。

そして、そのために入念に手を打って、
願いが叶うことを確信してたっぽいもの。

これは作者の杉本苑子さんの解釈も入っているのでしょうが、
それでもいい!
その解釈、私も乗った~、と喝采したくなりました。

前半は、義満に見初められる辺りから、メキメキ頭角を現してゆく、輝かしい展開。
サクセスストーリーとしても前半は面白いのですが、
客観的には暗転していくかにみえる後半が、ますます面白い。

この作品を読んだきっかけは、友人から、とある漫画との相似を教えて貰ったため。

それは、木原敏江さんの「夢幻花伝」という作品で、世阿弥の前半生のお話。

初めて読んだのは、三十数年前で、当時の私は、お能なんて観たこともない高校生。
そんな大昔に読んだ漫画でしたが、
「華の碑文」を読み初めてすぐ、わかりました。

木原敏江さんは、間違いなく
「華の碑文」をお読みになって、この漫画を掛かれたに違いない!と。

ストーリーが似ているのではなく、世阿弥の人となりや、作品を流れる空気が、そりゃもぉ、雄弁に語っています!!

そうですよねー?
木原さん??
と、馴れ馴れしく心中で何度も呟きつつ、ページをたどりました。

ということで、
「俺の家の話」が盛り上がっている(私の周りでは大盛り上がりです)いまこそ、
併せて読みたい2作品のご紹介でした。

「万作の会 狂言の世界」を観る

3月16日、有楽町朝日ホールへ。

年度末なのに、なんと今月は毎週お休みを貰う、という不届きな所行を予定しております。

だって萬斎さんが、そのようにスケジュールを組まれたのだから、もうそれに合わせるしか無いのです。
もちろん全公演を網羅するわけにはゆきませぬが。

最初に、萬斎さんによる解説。
なんと29分も!

揚幕の向こうでスタイバイされていたであろう万作さん、高野さんも、楽しくお聴きになられていたでしょうか。

はたまた、また超過かい!とお思いだったでしょうか。

私にとっては、もーぉ、いっくらでも超過してください!ってなモンです。

今日はまた、お手の表情が一段と、うつくしい。
知盛さまになっておられる日数が重なると、平家の大将としての矜恃が皮膚にも浸透してくるのかも。

初冠のフサフサをつけると、「馬になった気分」になられる、とのコメントに、ププッと会場から笑いが。
その反応に満足そうな萬斎さま。

「月見座頭」
座頭が万作さん、
上京の男が高野さん、
後見が月崎さん。

この座頭は、
けっこう好戦的で、気骨のある人柄に描かれているのですね。

盲目だからといって、引け目を感じたり、遠慮がちになったり、とかいったことは、一切なし。

こういうトコが、まさに萬斎さんが提唱されている、「この辺りの者」スピリッツに通ずるように思います。

痛々しくみえないし、湿度もなく、カラッとしてる。

こんな目にあっても、きっと来年も、トーゼン月見に出掛けることでしょう。

「業平餅」
在原業平が萬斎さん、
餅屋が深田さん、
法衣が裕基くん、
稚児が三藤なつ葉ちゃん、
侍が内藤くん、
随身が飯田くん、
沓持が月崎さん、
傘持が石田幸雄さん、
餅屋の娘が石田淡朗くん、
後見が岡さん。

まず、業平さまが、法衣(裕基くん)を従えてご登場。
なにやら主&太郎冠者コンビ風。
が、装束は全く違います。

業平さまは、
古代紫色の単衣狩衣、朱色地に八藤の指貫。
狩衣には、業平菱、藤や杜若の丸文。

そして、裕基くんてば、シテ方ちっくな装束がめちゃくちゃ映える。
勿忘草色地に雪輪露芝の単法被(それとも長絹?)、白大口。

これはもう、是非とも裕基くんを配役に加えた「歌仙」を上演していただきたいです!
雅やかなカッコが、さぞやお似合いなることでしょう。
こんどアンケートでリクエストしなくては。

このお二人が向き合って会話を交わすと、すっかり平安絵巻ワールドに。
なんとノーブルな光景なんでしょー

参詣に行くよー、と裕基くんがお供の者たちに呼び掛けると、
なつ葉ちゃんを先頭に、ぞろぞろお付きの人々が登場。

なつ葉ちゃん、かっわいい~
昨年7月に、子猿のお役を拝見して以来。
所作もセリフも迷いがなく、堂々としてる。
すぐに舞台から居なくなってしまうのが、もったいない。

萬斎さんの解説のおかげで、業平さまの語りと謡がよくわかり、楽しさ倍増でした。

これにて、私は今月の狂言観賞は打止め。
来週からは、知盛さま祭です!

「日本博皇居外苑特別公演 祈りのかたち(初日)」を観る

3月12日、皇居外苑 皇居前広場へ。

入口にて、手荷物検索と、金属探知機によるボディチェックがあり、
なにやらモノモノシイ。

「翁」
翁が観世宗家、
三番叟が萬斎さん、
千歳が観世三郎太くん、
面箱が裕基くん。

笛が松田弘之さん、
小鼓頭取が鵜澤洋太郎さん、
脇鼓が飯冨孔明さん&清水和音さん。
大鼓が亀井広忠さん~

番組表では、
小鼓頭取は大倉源次郎さんで、
脇鼓のお一人は大倉伶士郎くん、
・・・となっていたのですが。

後見が、片山九郎右衛門さん!&
坂口貴信さん。

三番叟後見が、太一郎くん&高野さん。

地謡は、梅若実さんを地頭に10人編成。
なぜ10人だったのかは謎。
屋外だから、音量アップのためでしょうか?

萬斎さんが揚幕からお出ましになっただけで、訳もなく涙が出てしまう。

萬斎さんの背後には、石垣と二重橋
橋の途中途中に配された燭台かや、親柱の、ろくしょう色が差し色として効いています。

二重橋の袂には、白壁の建物があり、屋根や窓枠も、ろくしょう色。

萬斎さんの直垂に描かれた鶴の翼にも、ろくしょう色がスッと刷かれたように、瑞々しく煌めきます。
石垣に点在する苔の色もろくしょう色。

不思議なのは、萬斎さんが現れる前までは、こうした色のリンクに気付かなかったのに、
萬斎さんのお姿を目にしたら、いきなりリンクがつながり、すべてが共振し始めたのですよねー

三番叟を踏まれている間も、共振
現象がずっと!

これ、大袈裟に言ってるんじゃなくて、ほんとに空気が、揺るがされるような感覚があったのです。

三番叟のなかで、橋掛りへ、ダーッと走り込まれる演出が!

わーっ
これは、あれです、あれです!
昨年7/27に上演された「翁」で、
萬斎さんが踏まれた三番叟の時と、同じヤツ!!

あの時は、萬斎さんのアドリブなのかと思っちゃいましたが、ちゃんと「???の式」という名前があるそうで。
せっかく学習したのに、またまた、その名前を失念してしまいましたが。

萬斎さんと広忠さんのコンビも嬉しかったです。
3/6のトークでの、お二人の間に漂う親愛ムードを反芻しつつ、にまにま拝見いたしました

他の演目に、以下の演目が上演されました。

一調「杜若」
金春憲和さん&三島元太郎さん

舞囃子「羽衣」
友枝昭世さん

狂言「三本柱」
果報者が万作さん、
太郎冠者が中村くん、
次郎冠者が内藤くん、
三郎冠者飯田くん、
後見が深田さん。

万作さんは、向鶴菱の素襖裃。
このお装束、久しぶりに拝見しました。

最近は、萬斎さんが果報者のお役をなさるときでも、これをお召しにならず、もしや処分されてしまったのかしら?と少々さびしく思っておりました。

だんだん傷んできたから、なるべく温存して、万作さんしか着ちゃダメ、とか、そういうルールになったのかしら?

能「高砂 祝言之式」
住吉明神が観世宗家、
神主友成が福王茂十郎さん、
従者が福王和幸さん&福王知登さん&福王忠世さん。

終演は、25分ほど押して、14時40分
ごろ。

最後まで雨もふらず、ときおり雲間から日射しがさしたりすると、舞台の上の色調も、ゆらゆらと遷移して、まるで演出のよう。

昔の人達は、こんな風に、天候の移り変わりもセットで、能楽を楽しんでいたのでしょうね。

休憩時間に、同行の母が、
「昔、あなた達きょうだいを連れて、ここへ来たことがある」
と言い出す。

えーっ
ぜんぜん覚えてない~

帰宅して、アルバムをひっくり返したところ、証拠写真、ありました!

自分の兄弟4人と、イトコ2人が、今は亡き祖母と共に、二重橋をバックに写っておりました。
まさに、萬斎さんの背後に拡がっていたのと同じ景色。

たぶん40数年まえの写真。
なんだか不思議な気持ちです。

「大槻文藏裕一の会東京公演」を観る

3月6日、観世能楽堂へ。
1ヶ月ぶりの能楽堂です。

まず、
「伝承ということ」というテーマで、大槻文藏さまと萬斎さんによる対談。
聞き手は、なんと亀井広忠さん!

「神3」による夢のトークタイムでした!!!
お三方ともに、舞台をおつとめになる時は神々しい耀きを放たれるけど、
トークに於いても同様でした。

スゴいお方というのは、全方位に
おいてスゴいのですねー

このドリーム対談の立案者は、裕一くんだそうで。
その裕一くんを「能のオタク」と仰る広忠さんが、やたら嬉しそう。

裕一くんは、中学生のころから単身で、銕仙会や国立能楽堂公演を観に行ってそうで。
大阪から新幹線で!

とにかく能に夢中で、ここまでの人って他に居ない、という広忠さんに対し、

「いえ、もっとすごい亀井広忠さんて人がいます」と、萬斎さん。
笑みを含んだ眼差しが、優しーのです。

ひゃふっ、
このラブラブな、空気ったらなんなんでしょう?!

あまりに親密で、くつろいだ空気に満ちているもんだから、
私は、ほんとにここで、こんなハッピー会話を聴かせていただいてよいのぉ?、と心配になってくる。

わたし、いま盗聴してる分けじゃないよね?
合法的にコレを聴けてるんだよね?
と、何度も心中で自問したほど。

広忠さんは、「石橋」の時とかの咆哮とはうってかわって、穏やかに柔らかくお話しなさる。

そして、相槌のお言葉が絶妙。
話し手の論旨が一滴たりとも、こぼれることなく伝わった、ということが明確にわかるようなレスポンスをなさるんです。

こんな聞き手には、そりゃー滑らかに心中を語りたくなっちゃいますね。

お三方とも鬘桶に座られたのだけど、萬斎さんの鬘桶だけ明らかに座面が高かった。
なんででしょ?

対談のあとに
「二人大名」。
通りの者が万作さん、
大名が萬斎さん&裕基くん。

この演目の、この配役!
なんどアンケートでリクエストしてきたことか!!

よくかかる演目ながら、萬斎さんがシテをなさることが多く、これまでずっと叶わずにおりました。

前日から私は、もう楽しみで楽しみで、録画してある「七転び八起き」(にほんごであそぼ)をリピートとしつつ、

くうーっ
明日、これをライブで観れちゃうんだ~
とニマニマでした。

そして、ついに迎えた「おきあがりこぼし」ライブは、サイコーでした!

膝だちの姿勢で、身体を斜に反らせる舞が、そらもぉカッコいいのなんの!!

「ワッハッハッハッ、まだせい、まだせい」
と万作さんが煽る。
私も「そそそ、まだまだ~」と心中で大喝采でした。

文藏さま&広忠さんによる
一調「土車」。

文藏さまにから不思議な色気が滲みます。
ほわー
文藏さまってば、さすらいのヒトがお似合いになるのかも。
「芦刈」とか、めちゃくちゃ素敵
なんじゃないでしょうか。

・・・なとど思っていたら、続く演目が、

観世三郎太くんの
仕舞「笠之段」。

さすらいモード気分に浸れる番組編成なっていたのですねー

休憩を挟んで
「海士 懐中之舞」。
シテが裕一くん、
子方ちゃんが谷本康介くん。
ワキが宝生欣哉さん、
ワキツレが則久秀志さん&大日方寛さん。
アイが野村太一郎くん。

囃子方が竹市学さん&鵜澤洋太郎 さん&亀井忠雄さん&林雄一郎さん。
地謡は、大槻文藏さまを地頭に8人編成。

陰のある母親のお役が、なぜ裕一くんは、こうもお似合いになるのでしょうか?
以前に望月のツレを拝見した時も思ったけど、
二十歳そこそこの男子が、このような情感のたゆたいをみせることがてきるのが、不思議でなりません。

テールグリーンの水衣の下から
チラ見えしていた縫箔が可愛い。
白磁色の地に、柴草の模様と、変化に富んだ姿態の燕ちゃん。
八掛は抹茶色。

こんな愛らしいお着物をみると、
しみじみ嬉しくなってしまう。

それと!
やっぱり谷本康介くんは、いい。
昨年末のMIRAI能でも唸ったけど、またまた唸らずにはおられまんでした。

2020裕基くんベスト15

先日の萬斎さんのベスト15に引き続き、今日は裕基くんのベスト10を
・・・と、思って選び始めたら、どれも捨てがたい。

うぬーう
こうなったら、
裕基くんもベスト15にしちゃいます。

●1位
狂言ござる乃座61st」(第1日目)(8/10、宝生能楽堂)での
屋島 大事 奈須與市語」のアイ
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/08/11/000349
語りも去ることながら、「屋島」の中の登場人物としての存在感が、格調高く、キリリと美しい。

●2位
狂言ござる乃座61s」(第2日目&3日目)(8/12&30、宝生能楽堂)での
「奈須與市語」
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/08/15/215941
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/09/05/164724
與市が憑依した裕基くんの煌めきがヤバい。

●3位
「第91回 野村狂言座」(9/18、放出能楽堂)での
「水汲」のアド(いちゃ)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/09/20/195248
萬斎さんが解説で、かなりハードルを上がったかに思われましたが、なんの、なんの、太一郎くんと共に、瑞瑞しい一時を見せてくださいました。
能楽タイムズ(11月号)でも、絶賛されていて、ファンとしては誇らしさマンテンです。

●4位
「木月孚行を偲ぶ会」(3/15、観世能楽堂)での「鷺」のアイ
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/03/21/013800
お声の幅がグンと拡がったことがまざまざと感じられた日でした。

●5位
平家物語の世界 語りの伝承 巻二十三」を観る(9/26、横浜能楽堂)での
「今参」のアド(職探し中の坂東方の者)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/10/03/103416
アイドル・裕基くんが振り付きで踊ると、大喜びして萬斎さんまで一緒に踊り出す、という眼福。

●6位
狂言ござる乃座 in NAGOYA 23rd」(10/3、名古屋能楽堂)での
「大般若」のアド(巫女)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/10/04/195327
我が道をゆくクールな巫女さま。

●7位
「波吉信和 三十三回忌追善 藤雅会」
紅葉狩のアイ(上臈たちのお供の女)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/11/01/004132
曰くありげな妖気をまとっておられました。「水汲」での可憐な少女もよいけど、こういう系もイケるんですねー
新たな一面を見せていただきました。

●8位
「新春名作狂言の会」(1/15、新宿文化センター)での
「靭猿」のアド(太郎冠者)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/01/18/220219
とてもよき太郎冠者でした。広いホールの舞台でも、裕基くんがおられると空間が締まります。

●9位
「第103回 粟谷能の会」(3/1、国立能楽堂)での「蚊相撲」のアド(蚊の精)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/03/07/124207
人ならぬお役をなさると、存在の美しさが際立ちます。

●10位
「十一月 五雲会」(11/14、宝生能楽堂)での
「鐘の音」のシテ(太郎冠者)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/11/22/142411
秋晴れの鎌倉の空に響く、鐘の音を堪能しました。

●11位
「第23回 長島茂の会」(10/24、喜多能楽堂)での「鶏聟」のアド(聟)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/10/25/215348
親子そろって素襖裃をお召しになったお姿が端麗。
ちから一杯バカバカしいことをなさっても、気品が損なわれたりはしないのです。

●12位
狂言ござる乃座 62nd(10/18)」
10/18
「煎物」のアド(何某)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/10/20/181005
鷺に扮装したお姿が、光り輝くよう。

●13位
「万作を観る会」(11/7、国立能楽堂)での
1番手のキノコ(黒色袴)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/11/08/183745
この演目の、このお役の格が、裕基くんによって、大きく引き上げられたように思います。

●14位
「第九回 佐久間二郎能の会 三曜会」(12/5、国立能楽堂)での
「成上り」のアド(主)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/12/06/150121
立姿が美しい。
お父様とのコンビネーションが絶妙です。

●15位
白雪姫の太郎冠者)
新作能「白雪姫」のブルーレイ
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/12/31/212537
当初はライブで観れるはずだったところ、コロナ禍のため中止となってしまった公演。
ライブで観れる日が、どうか来ますように。


ここまでが、ベスト15です。
ベスト15からは漏れてしまったけど、最後に番外編として1つだけ。


「このあたりのもの~禍(わざわい)の時、狂言三代の見つめる遠い未来~」(10/25、NHK放送博物館)その後、テレビ放映もありました。
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/11/01/143532

以上、裕基くんベスト15&番外編でした。

2020年の裕基くんといえば、とにかく奈須!に尽きると思います。
次なる披キは、釣狐でしょうか。

シツコク言いますが、人ならぬお役が突出しておられるので、狐さんへの期待大です!!

2020萬斎さんベスト15

2019年は、古典曲と非古典曲に分類してみたのですが、
どうもシックリこないので、
今回は区別なく一本化して選出してみたいと思います。


●1位
「大槻能 リニューアル公演 日賀寿能 第二日目」(1/4、大槻能楽堂)での
「翁 大黒風流」の三番叟
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/01/05/161355
鈴之段で、万作さん扮する大黒サマと、萬斎さんが、掛け合いみたいなことする、というレア演出に、目が釘付けでした。

●2位
能楽公演 2020 ~新型コロナウイルス終息祈願~」(7/27、国立能楽堂)での
「翁」の三番叟
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/07/27/231443
揉み出しの時点から、萬斎さんの
細胞がビッカビカに躍り跳ねだした三番叟でした。

●3位
「日本芸術文化戦略機構 JACSO設立記念公演 昼の部」(10/6、宝生能楽堂)での
「翁」の三番叟
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/10/11/153330
カミソリみたいな切れ味の中に、癒しもあり。

●4位
「高崎芸術劇場 能舞台 披露公演」(2/15、高崎芸術劇場)での
「翁」の三番叟
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/02/16/175714
萬斎さんが袂を翻すと、客席にまでブワッと風がくる!至近距離でした。

●5位
「第四回 文の会」(11/29、観世能楽堂)での
屋島 弓流 那須与市語」
のアイ
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/11/30/233106
萬斎サマ劇場。最高です!
後見の裕基くんの気迫も印象的でした。

●6位
「銕仙会 定期公演 3月」(3/13、宝生能楽堂)での
3/13内沙汰のアド(妻)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/03/20/140706
萬斎さんがなさる女性の役は、どれも絶品なんだけど、そのなかでも、このお役は、がナンバーワンに好きです。

●7位
国立能楽堂 狂言の会」(1/24、国立能楽堂)での
「法師ヶ母」のアド(妻)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/01/26/181341
後半、万作さん&萬斎さんが、お互いの想いを謡で伝えあうシーンが、もーぉ、素敵なのでした。

●8位
「坂口貴信の会」(9/16、観世能楽堂)での
「砧」のアイ(芦屋の某の下人)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/09/21/192731
沈痛な語り口に聞き惚れました。

●9位
「大槻文藏・裕一の会 第二部」(9/25、観世能楽堂)での
「邯鄲」のアイ(宿の女主)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/09/27/134941
盧生の夢を操っているかのような、女主サマ!

●10位
「第十二回 東京満次郎の会 FINAL」(11/1、宝生能楽堂)での
「邯鄲 傘之出」のアイ(宿の女主)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/11/05/180032
ぎらり、と豹変しそうなナニモノカを内包した謎の美女。

●11位
「能を知る会 横浜公演」(3/12、横浜能楽堂)での
藍染川」のアイ(大宰府神主の本妻)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/03/15/001654
夫の愛人を自殺に追い込んでしまう、凄絶なイジワル妻。

●12位
「東京大槻清韻会別会」(3/7、観世能楽堂)での
「望月 古式」のアイ(望月の下人)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/03/08/231659
下人サマのかっこよさに加えて、
友房の大槻文藏サマの気品と、友治の未亡人の大槻裕一くんの憂いも、忘れがたいです。

●13位
国立能楽堂 企画公演 ◎働く貴方の能楽公演」(1/30、国立能楽堂)での
「痩松」のアド(女)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/02/01/175021
盗賊を撃退するだけではあきたらず、小刀まで強奪してしまう!麗し女子。

●14位
「梅村能の会 道成寺」(2/24、観世能楽堂)での
道成寺 赤頭 中之段数躙(なかのだんかずびょうし) 無躙之崩(ひょうしなしのくずし)」のオモアイ
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/02/29/232443
アドアイの裕基くんとのコンビネーションが嬉しかったです。

●15位
「第103回 粟谷能の会」(3/1、国立能楽堂)での
「朝長」のアイ(長者内の者)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/03/07/124207
サーカス団長・広忠さんが鞭ならぬ右手をしならせ、統制されているかのような舞台。


以上、ここまでがベスト15でした。
最後まで候補に残りながら、ベスト15には漏れてしまった分も、下記に記載しておきます。
(順序は時系列です)

●「新春名作狂言の会」(1/15、新宿文化センター)での
「靭猿」のアド(猿曳)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/01/18/220219

●第89回 野村狂言座(金曜日)(
1/17、宝生能楽堂)での
「大黒連歌」のシテ(大黒天)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/01/18/192130

●「能と土岐善麿 秀衡を観る」
(2/18、喜多能楽堂)での
「秀衡」のアイ(中尊寺金色堂の堂守)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/02/20/234946

●「狂言ござる乃座61st」(第1日目)(8/10、宝生能楽堂)での「隠狸」のシテ(太郎冠者)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/08/15/001325

●「狂言ござる乃座61s」(第2日目&3日目)(8/12&30、宝生能楽堂)での
「庵の梅」のアド(女子会のリーダー?)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/08/15/215941
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/09/05/164724

●「銕仙会 9月 定期公演」(9/11、宝生能楽堂)での
「鏡男」のシテ(夫)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/09/16/222737

●「狂言ござる乃座 in NAGOYA 23rd」(10/3、名古屋能楽堂)での
狂言「蝉」のシテ(蝉の亡魂)
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2020/10/04/195327

以上です。

2020年は、中止になってしまった公演も多々ありましたが、
そんななかでも、なんとか開催に漕ぎ着けてくださった公演も、色々あったのだなー、と改めて感謝の念を深く感じています。

ほんとーに、救われました。
ありがとうございました。

「第二回 士乃武能」を観る

2月7日、国立能楽堂へ。

ロビーには、今回の公演チラシのイラストを描かれた天野喜孝さんの原画が。

私は黒ガシラのフォルムが大好きなんだけど、そのテイストを汲みつつも、
でも、写実寄りになりすぎず、
しっかり天野喜孝さんワールドになってました。

座席は、市松の50%。

一調「春日龍神
中村昌弘さん&吉谷潔さん(太鼓)

今回の番組の中で、これだけが義経ガラミじゃないのは、なぜ?
と思ったら、ちゃんと番組表に解説が。

「会の最初は派手にファンファーレ的な曲を」という意図なのですって。

仕舞「八島」 金春憲和さん、
仕舞「吉野静 キリ」金春安明さん、

仕舞「二人静 クセ」
辻井八郎さん&井上貴覚さん。

袴で舞う「二人静」は、足拍子も完全に揃ってるのがよく分かりました。
以前にお能で観たときは、足元は縫箔で覆われていたので、そこまではわからなかったけど。
通常は縫箔で見えないのに、
こんなに綺麗に揃えておられるんだ!

地謡の方々は、直面で入場してこられ、それから後ろを向いてマスク装着する、という新スタイル。

マスクは、暖簾タイプで、鎖骨のチョイ下くらいのまでの長さ。

狂言「千鳥」 
太郎冠者が萬斎さん、
主が高野さん、
酒屋が石田さん、
後見が岡さん。

太郎冠者さまは、若葉色の格子の縞熨斗目、並び扇の紋の腰帯、納戸色の狂言袴。
灰色がかった山葵色の地に、大胆に白梅を配した肩衣。
チャコールグレーの梅の幹が効いてます。

太郎冠者は、酒樽を網のつもりの設定にしよう、と、かなりの無茶発言。

酒屋は
「ははぁ、それが網か・・・
なるか!」
と。

これを、現代語風に言うなら
「ははぁ、それが網か・・・
てか、なるかいっ!」
て感じにでしょうか。

ノリツッコミの元祖は、この酒屋さんだったのねー

ラスト、太郎冠者さまは
「おンマが参る! おンマが参る!」
と跳ね駆けてゆきました。

早春の一陣の風のように、華やぎのなかに内包された、キリリと鋭い冷感冷さえも、嬉しくなってしまうような、そんな疾走でした。

仕舞「船弁慶 クセ」本田光洋さん、
仕舞「船弁慶 キリ」山井綱雄さん。

こちらの地謡も、登場後に後ろ向きでマスク装着スタイル。

休憩の後に、金子直樹先生による解説。

今回、金子先生のお話で私が学習したことの1つは、
船弁慶の後シテが頭に付けてるアレの名称。
「クワガタ」というのですって。
そのまんまのネーミングなんだ。

そして、間狂言の説明を丁寧にしてくださったのが有難かったです。

この演目の間狂言(船頭)の場面は、いくつかのシーンがカットされがちなんだけど、今回は全部入りです、とのこと。
そのカットされがちシーンとは、
下記の3つ。

①宿借りのシーン
②送り込みのシーン(義経と別れたあとの静を、船頭間が送って行く)
③訴訟のシーン(将来は、自分を船奉行に取り立ててくださいよ、と船頭が頼む)

今回の間狂言は、裕基くんが格子のお勤めになり、初役とのこと。

今後は省略版もなさっいくのでしょうが、
まずは正式版を体験させておこう、というお父様の親心でしょうか。

シテ方の先生のご理解なしには成り立たないでしょうから、高橋忍さんもご賛同くださったのですね。

記念すべき初役、かつ、全部入りを観る機会に恵まれ、感謝です。

能「船弁慶 遊女ノ舞 替ノ出」
静&知盛が髙橋忍さん、
義経中村優人くん、
弁慶が殿田謙吉さん、
従者が御厨誠吾さん&野口能弘さん、
船頭が裕基くん、

笛が藤田貴寛さん、
小鼓が鵜澤洋太郎さん、
大鼓が安福光雄さん、
太鼓が吉谷潔さん。

裕基くんは、レモンイエローの地に濃紺の公私の縞熨斗目、紺の襟、濃紺地に碇の肩衣、褐色(かちいろ)の狂言袴。

くぅ~っ
カッコイイ!

狂言袴は、パリッと張りがあり、丈もぴったり。
今回のお役の為に、裕基くんレングス仕様で、新しく誂えられたのでしょうか。

声が!もう最高です。
萬斎さんと同様に、常の狂言のときより、更に重低音のお声。

「波よ、波よ波よ波よ波よ、しーっ」も、気持ちよくキマってました!

でも、撃退されてしまう知盛に、なぜか肩入れしたくなってしまうんですよねー

とても充実した時間でした!