萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「新春名作狂言の会」を観る

1月15日、新宿文化センターへ。

最初に茂山千五郎さんによる「禰宜(ねぎ)山伏」の解説。

千五郎さんが仰ることには、
この演目に登場する山伏は、狂言の中に出てくる山伏の中で一番エラそう、なんですって。

千五郎さんの解説おわりに出てこられた萬斎さんは、
「ダークサイド」とニヤリ。

禰宜山伏」には大黒天が登場するのですが、大黒天の御遣いがネズミなので、子年には、茂山家ではこの曲がよく出るのですって。

知らなかった!
大黒天とネズミって、そういう関係だったのかー

この時、私は、1/4の「翁 大黒風流」にネズミちゃん達がワラワラと登場した理由をようやく理解したのでした。


恒例の小舞の競演は「土車」。
これ、こないだ国際フォーラムで舞われたヤツ!

地謡ナシなので、謡もそれぞれ自前でやってくださる。

なんでココまで違うの?というくらい違ってました。

舞台を廻る時の軌跡も違う。
万作家の方が舞台を大きく廻られる。

「二人袴」で「左右に廻って舞わせられい」なんてセリフがあるくらいだから、廻る、というのは、昔の人にとって、最大のひゅーひゅーポイントだったのでしょうか。

となると、それぞれのおうちで粋を極めた「廻る」スタイルが、数百年かけて確立していったのかしらねー


千五郎さんが御仕度されるために退出された後は、萬斎さんによる「靭猿」の解説。

靭をサル皮でラッピングしたい、という表現が独特なんだけど、わかりやすい。

大名が猿に近寄って、自分の腰の靭と子猿を見比べるシーンがある、とのこと。
今まで3回観たはずなのに、気づかなかった!
ソコ注目しとこう。

解説の最後に、オリ・パラリンピックに対する「この辺りの者」スピリッツを述べられました。

もしかして、最近の萬斎さんの解説では、常にオリ・パラに言及される?
そうしよう、と意識されてなさっているのかな?

萬斎さんの思いを浸透させていって、オリ・パラの時までに国民の意識改革をする、という遠大な計画なのかも。

そのターゲットとしていただけることの、なんというありがたさ。


禰宜山伏」
山伏が千五郎さん、禰宜が茂山茂さん、茶屋が七五三さん、大黒天が山下守之さん。

七五三さんの長裃のお姿がキレイ。
御茶碗を扇ぐ所作も優雅で、見惚れる。


「靭猿」
大名が万作さん、猿曳が萬斎さん、太郎冠者が裕基くん、子猿が三藤なつ葉ちゃん。

猿曳サマの謡が、最高なのナンの。
「はーぁ」のトコ、とくに好き。

で、そのタイミングで、なつ葉ちゃんが、ビシッと両手を胸の前に揃えるの。
猿曳サマとなつ葉ちゃんの、この連帯感!

謡がノリノリになっていくと、なつ葉ちゃんの舞もノってゆく。

まっすぐに伸ばした腕が小気味よく動くのが、なんて可愛い。

「月を見たり」を万作さんがマネっこして、なつ葉ちゃんと同じポーズをするシーンでは、大きな拍手が。

ほんとうは拍手はヨロシクないのかもしれないけど、ホール中がワサワサと喜びまくってるのが伝わってきて、嬉しくなってしまう。

それと!裕基くんの太郎冠者が、とーっても良かった。

数あるアド役の太郎冠者のように思ってたけど、いやいや、とても存在感のあるお役なのね。

ちょっと冷酷な感じで、淡々と大名の命を伝言するとこも、なんかいい。
「あえてポーカーフェイスでやってます、これが仕事だから。」という雰囲気で。

セリフを発しないで控えているときも、裕基くんの身体があることで空間がしまる気がします。