萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「田中一村展‐千葉市美術館収蔵全作品」を観る

ついに憧れの、田中一村を観た!
伺ったのは、千葉市美術館。

往復5時間かかりましたが、
奄美大島までの所要時間に比べたら、なんのその。

奄美といえば、私にとっては田中一村記念美術館の所在地。

田中一村を観るために、いつか奄美に行かねば、と思っていたけど、千葉で観れるなら、これは行くしかない!と。

以前に読んだ評伝の内容を思い返しつつ、じっくり堪能しました。

とてつもなくストイックで、
誇り高く、
岩清水のように純粋な人となりが、
ヒシヒシと感じられました。

有名な「アダンの海辺」は、図録では何度も観たことがあったけど、原画はその何十倍ものインパクト。
崇高な雰囲気を醸し出してして、風景画なのに、宗教画のような印象を受けました。

アダンのような大作の他に、色紙に掛かれた作品が大量にあり、これがまた、素晴らしい!

「ほおずき」とか「さえずり」とか、ちゃちゃっと描いたかのようにみえる簡潔な筆運びに、うっとりです。

あと、数々の風景画の空や雲が、とにかく美しい。
前景の木立のフォルムも絶品なんだけど、それは空の美しさを際立たせたいが為に、描かれたのかも、って気がします。

うわうわー
何てきれいな空なんだ~、という一村の心の震えが伝わってくるんだもの。
一村は、空フェチだったんじゃないでしょうかねー

「国立能楽堂 1月 狂言の会」を観る

1月22日、国立能楽堂へ。

コロナ渦の余波により、20時までに終演とすべく、少々の番組変更がありました。
素囃子がカットされ、休憩時間も無しとなり。

狂言「餅酒」。
越後国のお百姓(シテ)が松田髙義さん、
加賀国のお百姓が奥津健太郎さん、
奏者が野口隆行さん。
囃子方は、小野寺竜一さん&飯冨孔明さん&亀井洋佑さん&林雄一郎さん。

お上から歌を詠め、とイキナリ言われても困りますよね~?

が、越後国のお百姓は、それが如何なる行為かも知らなかったのに、
お手本を見聞きした直後には、
失敗1回だけで見事クリア!

バツグンの順応性です。
この演目が生れた時代って、これくらい臨機応変に対応できないと、生き抜けなかったのかしら。

なにか準備すべきことがあるなら、事前に言っといて貰わないと、なーんて文句を言いたくなりそうなもんなのに。

理不尽な目に遭う前提で、日々生活していたのでしょうか。
たくましいです!


狂言「泣尼」。
出家が茂山七五三さん、
施主が茂山千三郎さん、
尼が茂山あきらさん、
後見は逸平ちゃん。

七五三さんの、ユルッとした立ち
姿が、なんとも風情がありました。
特に袈裟なしの姿が。

墨色の長衣&角頭巾の着こなしが、萬斎さんと同じくらい似合う方が、この世に存在したとは!

萬斎さんとは方向性が違うんだけど、
七五三さんは七五三さんで、独特の出家スタイルが確立されてて、すっかり気に入ってしまいました。

長衣の裾のテロンとした落ち感といい、少し身体を前傾させたときの衿元の弛み具合といい、アウトローな気配が漂います。

尼のファースト泣きに
「早や泣くか」と応じる言い方も、
ノホホンしてて愉しくなっちゃう。


狂言「牛盗人」。
兵庫三郎が万作さん、
牛奉行が萬斎さん、
太郎冠者が高野さん、
次郎冠者が月崎さん、
三郎の子が松原悠羽太くん。

地謡が、石田幸雄さんを地頭に、内藤くん&飯田くん&淡朗くん。

後見が深田さん&中村くん、
幕は、遠目でよく見えなかったけど、裕基くんらしき風貌。

萬斎さんは、黒い長いお髭に、長袴タイプの直垂。露草色の毘沙門亀甲の模様に、鶴亀が配されています。

容疑者の情報が舞い込むや否や、
誤認逮捕でもいいから、とにかく連行せよ、と、やや横暴で厳めしい奉行サマ。

容疑者として万作さんを部下が引き立てくると、
縛ってる紐をもっとキツく縛れ!
なーんて命じたりして、冷血にも程がある。
わーっ
いい!

そうそう、
万作さんが橋懸りに出ていらした時、
孤高のオーラがあり、俳優さんみたいだった。

万作さんは、罪を認めたあとも毅然としていて、犯罪に至った経緯を話すときも卑屈になることなく、堂々としています。

「武悪」の要素も感じられ、魅力的。

萬斎さんは、最後には貰い泣きしてしまうんだけど、かなり手前から、涙をこらえておられるように見えました。

犯行に到るまでの経緯を聞きながら、
万作さんの犯罪は必然だった、という思いに駈られていたのでは?

でも、法に照らせば罰せざるを得ないし、という葛藤が、早い段階から始まっていたのではないかと。

なので、三郎の子供の願いを知ったとき、それだ!
と即、感じたのではないかしら。

理性では、そんなん許容できるわけない、と打ち消しつつも、それだ、それだ、それしかない、と心中でせめぎあって、ついに落涙、という風でした。

とても素敵な演目。
丑年にカンケーなく、定番で拝見したいです。

「梅若研能会 1月公演」を観る

1月16日、国立能楽堂へ。
 
「翁」

翁はの梅若万佐晴さん。
当初、翁は万三郎さんがつとめられることになっていたのですが、ロビーに貼り出された案内によりますと、万三郎さんはお怪我のため、代演となったのだとか。

千歳が梅若万佐志さん。
三番叟が飯田豪くん。
飯田くんは、披きだそうです。
面箱が淡朗くん。

笛は栗林祐輔さん、
小鼓頭取が久田舜一郎さん、
脇皷が古賀裕己さん&清水和音さん、
大鼓が大倉慶乃助さん。

橋懸りに、面箱、千歳、翁、三番叟がでてきて、
そのあとに素襖裃の囃子方、後見、地謡、と、次々に入場してくる光景が、なんともいえず大好き。

ことに、国立能楽堂の長~い橋懸りだと、壮観です。

シテ方後見のあとに続く狂言後見は、萬斎さん。
と、ここまでは期待もこめつつ、予想していた範囲内でしたが・・・

萬斎さんの背後に従う、あのシルエットは?
はうっ
ゆゆゆ裕基くん??
揚幕の奥に現れた時点から、もう目が釘付けでした!

小鼓方の後見も豪華で。
小鼓頭取の後見は大倉源次郎さん、
脇鼓の後見が、大倉伶士郎くん&飯冨孔明さん。
囃子方の後見の皆さまは紋付き裃。

千歳の直垂には、大きなスモーキーピンクの梅が一面に咲き誇っていました。梅の間には鶴亀も配されていて華やか。
こんなフェミニンな色調の直垂も、アリなんですねー

狂言後見コンビ様たちは、青鈍色の素襖裃で、裾の方が松皮菱きりかえで露草色になっています。
露草色エリアは、向鶴菱でしょうか、細かい模様がびっしり。

目が洗われるようだ、とは、正に、こんな方々に使うために創出された表現なのではないでしょうか。

裕基くんの素襖裃のお姿、私は初見かも。
なんてお似合いになるんでしょ。

この1週間前に、「末広かり」のシテをなさったようですが、観てみたかった~
チャンス再来に期待します。

飯田くんは、披きとは思えないくらい堂々としておられ。
烏飛び、格好いい~
シッカリ万作家の三番叟でした。


「二人袴」
親が萬斎さん、
聟が裕基くん、
舅が石田幸雄さん、
太郎冠者が高野さん、
後見が中村くん。

萬斎さんと裕基くんは、翁に続いてのご出演で、間に休憩時間20分があるもはいえ、大忙しですね。

萬斎さんは、ブルーグレーの段熨斗目、八掛は滅紫色。
今までは、このお役をなさる時の段熨斗目は、大半が裏柳色で、時たま榛色だったのですが。

このたびの長袴の色味とのバランスのためでしょうか?

この演目で使われる長袴は、深緑色のことが多かったんだけど、今回は、松皮菱きりかえの紫&あらいしゅのツートンカラーだったのです。
紫とブルーグレーは、無敵の組合せですもんね。

そして、リアル親子による親子コンビも、無敵でした。

お二人そろって舅殿の前に出てからの会話では、
裕基くんの操る「マ」が、サイコー。
あそこまで長い「マ」でも、お相手が萬斎さんだからこそ、成立するのでしょうね。

でも、まだまだ、萬斎さんの聟も観たいなー、と、私の欲望は、果てしないのでした。

高野さんの扇が、可愛かった。
白地に、竹の根元が描かれていて、その側にタケノコがパラリ、と。
金銀が少しだけあしらわれていて、余白が良いのです。


仕舞
 「嵐山」 梅若志長さん
 「屋島」 梅若紀長さん


二人静 立出之一声」
菜摘女が加藤眞悟さん、
里女&静御前が梅若紀彰さん、
手宮の神主が安田登さん、
神主の下人が中村くん。


笛が小野寺竜一さん、
小鼓が鵜澤洋太郎さん、
大鼓が大倉庄之助さん、
地謡は5人で、1列。
アイの幕は、紋付裃の高野さん。

前シテは、白い水衣をまとっていて、肩の辺りの華奢な風情が綺麗。

物着の時に、水衣を長絹にチェンジなさる後見の方々のお仕事ぶりが丁寧で、見とれてしまう。

まず水衣の衿を少し抜いておき、
長絹を水衣の上から着せ掛け、
それから長絹の裾からの水衣を下へ引き抜いておられ。

こうすると、下に着ている摺箔の肩が一瞬たりとも、アラワにならずに済むのですねー


長絹は古代紫色の地に、金・銀・胡桃色の藤の花。

後ツレの長絹は、白地で、柄はシテと同じながら、花の色を地の色に寄せているため、パッと見は、花がまばらに見える、という凝りよう。

一方、長絹の下から見える橙色の縫箔は、杜若&蝶&藤の花がはいされたもので、こちらは、色・柄とも完全にオソロ。

二人の装束を、こんな風な取合せにするパターンもあるのですね。
とっても素敵でした!

「梅若研能会 1月公演」を観る

1月16日、国立能楽堂へ。
 
「翁」

翁はの梅若万佐晴さん。
当初、翁は万三郎さんがつとめられることになっていたのですが、ロビーに貼り出された案内によりますと、万三郎さんはお怪我のため、代演となったのだとか。

千歳が梅若万佐志さん。
三番叟が飯田豪くん。
飯田くんは、披きだそうです。
面箱が淡朗くん。

笛は栗林祐輔さん、
小鼓頭取が久田舜一郎さん、
脇皷が古賀裕己さん&清水和音さん、
大鼓が大倉慶乃助さん。

橋懸りに、面箱、千歳、翁、三番叟がでてきて、
そのあとに素襖裃の囃子方、後見、地謡、と、次々に入場してくる光景が、なんともいえず大好き。

ことに、国立能楽堂の長~い橋懸りだと、壮観です。

シテ方後見のあとに続く狂言後見は、萬斎さん。
と、ここまでは期待もこめつつ、予想していた範囲内でしたが・・・

萬斎さんの背後に従う、あのシルエットは?
はうっ
ゆゆゆ裕基くん??
揚幕の奥に現れた時点から、もう目が釘付けでした!

小鼓方の後見も豪華で。
小鼓頭取の後見は大倉源次郎さん、
脇鼓の後見が、大倉伶士郎くん&飯冨孔明さん。
囃子方の後見の皆さまは紋付き裃。

千歳の直垂には、大きなスモーキーピンクの梅が一面に咲き誇っていました。梅の間には鶴亀も配されていて華やか。
こんなフェミニンな色調の直垂も、アリなんですねー

狂言後見コンビ様たちは、青鈍色の素襖裃で、裾の方が松皮菱きりかえで露草色になっています。
露草色エリアは、向鶴菱でしょうか、細かい模様がびっしり。

目が洗われるようだ、とは、正に、こんな方々に使うために創出された表現なのではないでしょうか。

裕基くんの素襖裃のお姿、私は初見かも。
なんてお似合いになるんでしょ。

この1週間前に、「末広かり」のシテをなさったようですが、観てみたかった~
チャンス再来に期待します。

飯田くんは、披きとは思えないくらい堂々としておられ。
烏飛び、格好いい~
シッカリ万作家の三番叟でした。


「二人袴」
親が萬斎さん、
聟が裕基くん、
舅が石田幸雄さん、
太郎冠者が高野さん、
後見が中村くん。

萬斎さんと裕基くんは、翁に続いてのご出演で、間に休憩時間20分があるもはいえ、大忙しですね。

萬斎さんは、ブルーグレーの段熨斗目、八掛は滅紫色。
今までは、このお役をなさる時の段熨斗目は、大半が裏柳色で、時たま榛色だったのですが。

このたびの長袴の色味とのバランスのためでしょうか?

この演目で使われる長袴は、深緑色のことが多かったんだけど、今回は、松皮菱きりかえの紫&あらいしゅのツートンカラーだったのです。
紫とブルーグレーは、無敵の組合せですもんね。

そして、リアル親子による親子コンビも、無敵でした。

お二人そろって舅殿の前に出てからの会話では、
裕基くんの操る「マ」が、サイコー。
あそこまで長い「マ」でも、お相手が萬斎さんだからこそ、成立するのでしょうね。

でも、まだまだ、萬斎さんの聟も観たいなー、と、私の欲望は、果てしないのでした。

高野さんの扇が、可愛かった。
白地に、竹の根元が描かれていて、その側にタケノコがパラリ、と。
金銀が少しだけあしらわれていて、余白が良いのです。


仕舞
 「嵐山」 梅若志長さん
 「屋島」 梅若紀長さん


二人静 立出之一声」
菜摘女が加藤眞悟さん、
里女&静御前が梅若紀彰さん、
手宮の神主が安田登さん、
神主の下人が中村くん。


笛が小野寺竜一さん、
小鼓が鵜澤洋太郎さん、
大鼓が大倉庄之助さん、
地謡は5人で、1列。
アイの幕は、紋付裃の高野さん。

前シテは、白い水衣をまとっていて、肩の辺りの華奢な風情が綺麗。

物着の時に、水衣を長絹にチェンジなさる後見の方々のお仕事ぶりが丁寧で、見とれてしまう。

まず水衣の衿を少し抜いておき、
長絹を水衣の上から着せ掛け、
それから長絹の裾からの水衣を下へ引き抜いておられ。

こうすると、下に着ている摺箔の肩が一瞬たりとも、アラワにならずに済むのですねー


長絹は古代紫色の地に、金・銀・胡桃色の藤の花。

後ツレの長絹は、白地で、柄はシテと同じながら、花の色を地の色に寄せているため、パッと見は、花がまばらに見える、という凝りよう。

一方、長絹の下から見える橙色の縫箔は、杜若&蝶&藤の花がはいされたもので、こちらは、色・柄とも完全にオソロ。

二人の装束を、こんな風な取合せにするパターンもあるのですね。
とっても素敵でした!

「佛淵静子 展 ーshellー」を観る

大好きな日本画家さんの個展に行って参りました。

その画廊 Gallery Suchi は、
茅場町駅から徒歩1分のレトロな建物の2階にあります。
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女性の皮下脂肪を、こんなにも魅力的に描く方を、私は他に知りません。

特に、関節まわりのような、あまり脂肪が付きにくい箇所に、うっすらと付いた脂肪の表現がタマリマセン!

足の親指の関節のあたりとか、もう素敵すぎます。

鳩尾からお臍の辺りにかけて、すこーしだけ付いている脂肪も、またよし。

これ、女性のパーツに関する私の嗜好の話ではありません。
あくまで、佛淵先生の絵の話です。

そもそも私は、ジャン・ジャンセンの描く人物くらい、痩せぎすな方が好きですし。

ラッキーなことに、先生が在廊しておられ、プラチナ泥(でい)なる画材の使い方をお教えいただきました。

1/30まで開催中(日月は休廊)だそうです。

「宝生月浪能 特別会」を観る(その2)

(その1の続き)

狂言「鶯」
シテが万作さん、アドが深田さん、後見が月崎さん。

万作さんが鶯を献上したい「梅若殿」は、
姿は登場しないんだけど、なんとなく美少年ぽいイメージを彷彿とさせます。

そういうイメージといい、
鶯のかごの作りの繊細さといい、全体が優美なベールに包まれてるかのよう。

万作さんがリピートなさった最後のセリフ、2回目が格別に味わい深くて、長く余韻が残りました。

このあとの能1番は、事情があり拝見できず。

能「烏帽子折」
シテが武田孝史さん、
子方ちゃんが水上嘉くん、
ツレが野月聡さん、
若武者が高橋亘さん、
立衆が小林晋也さん&亀井雄二さん。
法師が、佐野玄宜さん&藪克徳さん&内藤飛能さん&佐野弘宜さん&川瀬隆士さん&小倉伸二郎さん。

盗賊の手下(?)が萬斎さん&中村くん&内藤くん。
3人とも、お髭は黒。
里人が太一郎くん。
早打ちが飯田くん。

笛が松田弘之さん、
小鼓が住駒匡彦さん、
大鼓が佃良勝さん、
太鼓が小寺佐七さん。

地謡は7人編成の2列で、後ろの4人の方々はフェイスシールド装着。

地謡が、とても素敵でした。
切り組シーンは圧巻。
牛若ちゃんも、とてもよかった~
単に上手というだけでなく、
自分の運命を受け入れて、達観したような雰囲気があって。

萬斎さんは、蜜柑色&金糸の燕尾頭巾、白地に洗朱の格子の縞熨斗目、煉瓦色の狂言袴の括り袴、
色刀の鍔が配された厚板をブラウジングしてアウターに。

松明を振りかざしては、ぴ。と止める、その一瞬の停止の姿が美しい。
この3人組の間狂言は、もうコントそのものなんだけど、
ビジュアルも所作も端正なので、格調高さが破綻しないのですよねー

飯田くんが橋懸りに出ていらした時、がっつり不織布マスクを。
すぐに気付かれたようで、スッとご自身でマスクを外されましたが。
出番の直前まで、楽屋でもマスクをしておられるってことなのでしょうね。

「宝生月浪能 特別会」を観る(その1)

今年初の宝生能楽堂へ。

「翁 烏帽子之祝儀」
翁が和久荘太郎さん、
千歳が藤井秋雅さん、
三番叟が裕基くん、
面箱が石田淡朗くん、
狂言後見は萬斎さん&高野さん。

笛が藤田次郎さん、
小鼓頭取が幸信吾さん。

この方の素襖裃が、ウィリアムモリスちっくな模様で楽しくなる。
脇鼓が森貴史さん&住駒匡彦さん。

大鼓が広忠さん。
わーっ
今年ハツの広忠さん~
紫色の松皮菱模様の素襖裃に、若紫色の熨斗目。

地謡は七人で、橋掛りに2列に座られました。

揚幕から裕基くんのお姿が現れた時、いっしゅん萬斎さんかと思った。

事前に番組表は見ていたので、三番叟を裕基くんがなさることは、知ってたのに。

ビジュアルというより、肩の辺りから天井までの空間が、萬斎さんが形成なさるのと同じなんだもの。

三番叟が面箱と問答するときの裕基くんのお声が、めっちゃくちゃ素敵だった!

しかも、この問答が通常とは全く違っていて、かなり長いのです。

最高のお声を存分に聴けて、そのうえ問答の中身も面白い!

とっても興味深い問答だったので、帰宅してから、手元の本でセリフを復習しちゃいました。

裕基くんから淡朗くんへの問い掛け
『唯今翁の大夫殿の召されたる烏帽子は、何と申し候ぞ。』

←「狂言の道」(野村万蔵(六世)著)から引用させていただきました。以降の『』付き文も、同書籍からの引用ですに。

淡朗くん
『あれは立烏帽子と申し候。』

続いて裕基くんは、左半身を少しひいて、囃子方の方を指し示しつつ、淡朗くんに再び問い掛けます。

『またアドの大夫殿。これなる囃子方の衆の召されたる烏帽子は何と申し候ぞ。』

淡朗くん
『これは折烏帽子と申し候。』

それを受けて裕基くんは、
《立烏帽子に折烏帽子だなんて、どっちもめでたいネーミングだから、祝ってあげるよ》←私のテキトー意訳です。以降の《》付き文も、同様に私のテキトー意訳です。

淡朗くん
《どーにでも祝っちゃってください~》

裕基くん
『先づ四方に四萬の蔵を立て烏帽子、その中にどうと折り烏帽子候よ。』

このタイミングで洒落なんて言っちゃうだ~、とワクワクが募る私。

淡朗くん
《めでたいですねー
こっちからも訊いていいですか?》

裕基くん
《何でしょ?》

淡朗くん
『唯今翁の大夫殿の召されたる烏帽子にも違ひ、将棊の駒なりに候は何と申す烏帽子にて候ぞ。』

裕基くん
《これはねー、あれだよ》

淡朗くん
《なになに?》

裕基くん
『天より七珍萬寶が、このところへふらりふらりとふり烏帽子候よ。』

淡朗くん
『そりゃメデタイ』

で、このあとは通常の
鈴を参らしょ~・・・となったのでした。

淡朗くんが訊いてるのは、剣先烏帽子のことなのでしょうね。
とにかく烏帽子にめっちゃ執着する二人なのでした。

なんて不思議な問答なんでしょー

ちなみに、万蔵さん(六世)のおうちでは元来、「烏帽子之祝儀」は、翁が数日続いて上演された場合の二日目に附く小書なのだそうです。←この情報も、「狂言の道」(野村万蔵(六世)著)に記載されていました。

また、知人から教わった情報によりますと、「烏帽子之祝儀」は、
「翁」と「烏帽子折」が同時上演になったときのみに附く小書なのだとか。

そうなのです。
この日の番組は、最後の演目が「烏帽子折」だっのです。

が、今日はここまでにしときます。
続きは、また後日に。
(その2に続く)