萬斎さん観賞と日本画修得の日々

能楽や展覧会の観賞の感想を書いています

「国立能楽堂 1月 狂言の会」を観る

1月22日、国立能楽堂へ。

コロナ渦の余波により、20時までに終演とすべく、少々の番組変更がありました。
素囃子がカットされ、休憩時間も無しとなり。

狂言「餅酒」。
越後国のお百姓(シテ)が松田髙義さん、
加賀国のお百姓が奥津健太郎さん、
奏者が野口隆行さん。
囃子方は、小野寺竜一さん&飯冨孔明さん&亀井洋佑さん&林雄一郎さん。

お上から歌を詠め、とイキナリ言われても困りますよね~?

が、越後国のお百姓は、それが如何なる行為かも知らなかったのに、
お手本を見聞きした直後には、
失敗1回だけで見事クリア!

バツグンの順応性です。
この演目が生れた時代って、これくらい臨機応変に対応できないと、生き抜けなかったのかしら。

なにか準備すべきことがあるなら、事前に言っといて貰わないと、なーんて文句を言いたくなりそうなもんなのに。

理不尽な目に遭う前提で、日々生活していたのでしょうか。
たくましいです!


狂言「泣尼」。
出家が茂山七五三さん、
施主が茂山千三郎さん、
尼が茂山あきらさん、
後見は逸平ちゃん。

七五三さんの、ユルッとした立ち
姿が、なんとも風情がありました。
特に袈裟なしの姿が。

墨色の長衣&角頭巾の着こなしが、萬斎さんと同じくらい似合う方が、この世に存在したとは!

萬斎さんとは方向性が違うんだけど、
七五三さんは七五三さんで、独特の出家スタイルが確立されてて、すっかり気に入ってしまいました。

長衣の裾のテロンとした落ち感といい、少し身体を前傾させたときの衿元の弛み具合といい、アウトローな気配が漂います。

尼のファースト泣きに
「早や泣くか」と応じる言い方も、
ノホホンしてて愉しくなっちゃう。


狂言「牛盗人」。
兵庫三郎が万作さん、
牛奉行が萬斎さん、
太郎冠者が高野さん、
次郎冠者が月崎さん、
三郎の子が松原悠羽太くん。

地謡が、石田幸雄さんを地頭に、内藤くん&飯田くん&淡朗くん。

後見が深田さん&中村くん、
幕は、遠目でよく見えなかったけど、裕基くんらしき風貌。

萬斎さんは、黒い長いお髭に、長袴タイプの直垂。露草色の毘沙門亀甲の模様に、鶴亀が配されています。

容疑者の情報が舞い込むや否や、
誤認逮捕でもいいから、とにかく連行せよ、と、やや横暴で厳めしい奉行サマ。

容疑者として万作さんを部下が引き立てくると、
縛ってる紐をもっとキツく縛れ!
なーんて命じたりして、冷血にも程がある。
わーっ
いい!

そうそう、
万作さんが橋懸りに出ていらした時、
孤高のオーラがあり、俳優さんみたいだった。

万作さんは、罪を認めたあとも毅然としていて、犯罪に至った経緯を話すときも卑屈になることなく、堂々としています。

「武悪」の要素も感じられ、魅力的。

萬斎さんは、最後には貰い泣きしてしまうんだけど、かなり手前から、涙をこらえておられるように見えました。

犯行に到るまでの経緯を聞きながら、
万作さんの犯罪は必然だった、という思いに駈られていたのでは?

でも、法に照らせば罰せざるを得ないし、という葛藤が、早い段階から始まっていたのではないかと。

なので、三郎の子供の願いを知ったとき、それだ!
と即、感じたのではないかしら。

理性では、そんなん許容できるわけない、と打ち消しつつも、それだ、それだ、それしかない、と心中でせめぎあって、ついに落涙、という風でした。

とても素敵な演目。
丑年にカンケーなく、定番で拝見したいです。