11月24日、国立能楽堂へ「第十六回 桂諷會」を観に行ってきました。
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「求塚」
菜摘女&菟名日処女の霊が長山桂三先生、
ツレの菜摘女が北浪貴裕さん&坂井音晴さん。
旅僧が宝生常三さん、
従僧が館田善博さん&梅村昌功さん。
所の者が深田さん。
笛が松田弘之さん、
小鼓が曽和正博さん、
大鼓が國川純さん、
太鼓が金春惣右衛門さん。
地頭が浅井文義さん。
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前シテも後シテも、白の摺箔に流水紋なのに、模様が違う
、というコダワリ!
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前シテは観世水ちっくな流水で、柔らかな曲線のフォルムが、ふっくら愛らしい面と相まって、春の日差しのキラキラ感。
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その一方で、後シテの流水は、曲線を最小限に抑えてあって直線の主張の強い怜悧な模様。
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頬の削げた面と呼応して、死の場所となった川の水の冷たさを感じさせます。
同じ川なのに、川のイメージをこんな風に転換させるって面白いです。
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そして、この後シテの面は不思議な吸引力があって、上下で表情が変わるだけじゃなく、ごく僅かに横を向くだけでも陰影がガラリと変わり。
様々な表情に惹きつけられました。
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「磁石」
すっぱが万作さん、
田舎者が萬斎さん、
宿屋が高野さん、
後見が月崎さん。
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萬斎さんが横たわって寝る場面、後ろ姿が美しいー
身体は横たえてはいるけど、頭部は重力方向に垂れずに、ピシッと身体と同軸を保っており。
「寝る」のピクトグラム!
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そして、「磁石」の死を悼む万作さんの謡と、それに続く萬斎さんの謡が最高でした。
この情感、万作さん・さんコンビならではなんじゃないでしょうか。
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仕舞「菊慈童」
観世銕之丞センセ。
地頭が馬野正基さん。
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「石橋 大獅子」
童子&赤獅子が凜三くん!
披きだそうです!!
白獅子が長山桂三先生。
寂昭法師が野口能弘さん。
仙人が野村裕基くん。
笛が杉信太朗さん、
小鼓が大倉源次郎さん、
大鼓が大倉慶乃助さん、
太鼓が林雄一郎さん、
地頭が銕之丞センセ。
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キレキレの獅子コンビでした。
白獅子は赤獅子の親という設定らしいのですが、親子というよりは兄弟っぽく、キレキレの相乗効果がかっこよかったです。
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そして、アイの裕基くんは、ユリのある謡とともに橋掛を渡ってきたのですが、これが素敵で。
その後の語も、マといい、抑揚といい、めちゃくちゃイイ!
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新しいエネルギーに、明るい未来を予感した日となりました。
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「第3回 DenBun能 夜の部」を観る
11月17日は、国立能楽堂の「万作を観る会」の後は、
矢来能楽堂へ。
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体力やら腰痛やらを考慮すると、ハシゴは避けるべきなのですが、
出演陣のお顔ぶれを知ってしまったら抗えず。
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伺ったのは、「第3回 DenBun能 夜の部」。
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お話 味方玄さん。
井筒の解説をしてくださる中で、謡の一節を歌ってくださったのですが、声色がガラッと急変。
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お話されているときは、柔らかく可愛いらしいお声なのに、謡のお声は重低音。
声色のスイッチングが「寝音曲」みたいでニマニマしちゃいます。
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仕舞
「花筐 クルヒ」谷本健吾さん
「鵺」武田祥照さん
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能「井筒」
里女&在常ノ娘が味方玄さん、
旅僧が宝生欣哉さん、
里人が萬斎さん!
笛が竹市学さん、
小鼓が大倉源次郎さん、
大鼓が広忠さん!
地謡は、観世喜正さんを地頭に、小早川康充さん、
武田崇史さん、
小早川泰輝さん、
武田祥照さん、
谷本健吾さん。
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夢のような時間でした。
神々が三々五々に集って、ふと饗宴になった、という風。
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観る側の私は、井筒の物語を楽しみつつ、それを紡ぎ出す神々のご様子にも耽溺いたしました。
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同じ神様たちが、またあの矢来の空間に集う事があったら、もーぅ絶対に駆けつけます!
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「万作を観る会 野村万作 芸歴九十年記念」 を観る
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「翁」
翁が観世宗家、
三番叟が万作さん、
千歳が観世三郎太くん、
面箱が裕基くん、
笛が松田弘之さん、
小鼓頭取が大倉源次郎さん、
脇鼓が鵜澤洋太郎さん&清水和音さん、
大鼓が広忠さん!
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後見が大槻文蔵さま&坂口貴信さん、
狂言後見が深田さん&萬斎さん。
小鼓後見が伶士郎くん。
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地謡は、観世銕之丞さんを地頭に、
観世喜正さん、
岡久広さん、
観世淳夫さん、
野村昌司さん、
角幸二郎さん、
長山桂三さん、
関根翔丸さん。
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橋掛りの切り火に出てこられたのは文蔵さま!
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万作さんが目附柱へ鈴を差し向けるや、鈴を振る前に種おどしの気が飛んできた!
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扇の右手と鈴の左手を左右に開くと、
鈴を打ち鳴らす前から刻み拍子の鼓動が。
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「名人伝」の「不射の射」って、こういう事?
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舞囃子「安宅 瀧流」
観世銕之丞さん。
笛が一噌幸弘さん、
小鼓が鵜澤洋太郎さん、
大鼓が國川純さん。
地謡は、
岡久広さん、
観世喜正さん、
観世淳夫さん、
長山桂三さん、
大槻裕一くん。
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一調「道明寺」
謡が文蔵さま、
大鼓が広忠さん!
広忠さんは消炭色の裃。
後日ラジオで萬斎さんが仰る事には、当初は忠雄さんにお願いしていたのだとか。
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小舞「鶉舞」
三宅右近さん
地謡が三宅右矩さん、
三宅近成さん。
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小舞「貝尽」
野村又三郎さん
地謡が野村信朗さん、
野口隆行さん、
奥津健太郎さん。
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狂言「棒縛」
太郎冠者が遼太くん、
次郎冠者が中村くん、
主が飯田くん、
後見が岡さん。
幕は万作さん!黒紋付です。
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舞囃子「枕慈童」
宝生宗家。
鼈甲色の裃です。
笛が藤田貴弘さん、
小鼓が森澤勇司さん、
大鼓が柿原光博さん、
太鼓が桜井均さん、
地謡は、
大坪喜美雄さん、
辰巳和磨さん、
水上優さん、
鶴田航己さん。
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狂言「太鼓負」
夫が萬斎さん、
妻が高野さん、
参詣人が深田さん、
裕基くん、
飯田くん、
岡さん、
祭頭が石田さん、
稚児が三藤なつ葉ちゃん、
舞人が太一郎くん、
巫女が内藤くん&中村くん、
太鼓打が竹山さん、
沓持が福田成生さん、
傘持が破石晋照さん、
警固が月崎さん&遼太くん、
後見が
三宅右矩さん、
三宅近成さん。
囃子方は枕慈童と同メンバ。
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パレードの一行が橋掛りにズラリと並んで謡を歌う場面は壮観。
萬斎さんてば、ヨタヨタして登場したのに、謡のお声は厳粛な響き。
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なつ葉ちゃんが鮮やかな水車を!
万作さんの系譜は、皆んなが皆んな、水車ができてしまうものらしい。
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いや、もちろん練習はされたのだとは思いますが、練習したって身体能力の限界という個体だってあるはず。
なつ葉ちゃんの行く末が益々楽しみになってきました。
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さて、なつ葉ちゃんが華麗に退出していった後、萬斎さまは、なんちゃって水車を。
なつ葉ちゃんとの対比が楽しー
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これで笑いを誘って終わるかと思いきや、ラストは妻と謡を交わし合う、という清水座頭ばりの展開に。
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ナサケナイ姿を晒しておいてからの、情感あふれる謡!
ギャップがたまりませんでした。
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「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」を観る
先月、東京都美術館へ「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」を観に行ってきました。
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有名な絵もすてきだったけど、襖絵がとても良かった。
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菊を何種類も描き並べた襖が、トクベツ気に入りました。
菊の美しさって、お花だけじゃ成立しなくて、葉っぱがキモだったのか、と開眼です。
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しかも、一村ってば、菊のお花を際立たせるために、葉っぱも緻密に描いた、というより、
むしろ菊の葉っぱを偏愛しているんだけど、カムフラージュにお花も描いた、という気配が。
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一村が撮った写真も展示されていたんだけど、
ビロウ樹を撮った写真とかにも、一村の嗜好が感じられます。
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このフォルムと、稜線の鮮やかな切り替わりを偏執的に愛でています、という思いが滴るようで。
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写真は、一村の展覧会を観た後日、たまたま通りかかった大阪医療センターのお庭です。
一村ちっくな景色だったので撮影してみました。
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「大槻能楽堂 創立九十周年記念公演 10月公演」を観る
10月27日、「大槻能楽堂 創立九十周年記念公演 10月公演」 を観に行ってきました。
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「粟田口」
大名が万作さん、
太郎冠者が太一郎くん、
すっぱが裕基くん、
後見が内藤くん。裃です。
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途中までは「末広かり」と似た展開ですが、こちらの演目は大名も太郎冠者と一緒に騙されてしまいます。
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なので太郎冠者は取り違えを叱咤されることもなく、
鷹揚な大名さまとの会話がほのぼのしていました。
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「屋島 弓流 奈須與市語 語掛」
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漁翁&義経の霊が大槻文蔵さま、
漁夫が大槻裕一くん、
旅僧が福王知登さん、
従僧が喜多雅人さん&廣谷和夫さん、
屋島の浦人が萬斎さま、
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笛が竹市学さん、
小鼓が観世新九郎さん、
大鼓が広忠さん!
囃子方と後見は長裃。
広忠さんの長裃は薄鈍色。
地頭は観世喜正さん。
地謡は裃。
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「語掛(かたりかけ)」というのはワキ方の小書だそうで、狂言方に何かエピソードを聴かせてくれない?、と話を振る件を指しているようです。
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そんな事言ったら、他の演目のアイの語りも、基本的にはワキ方が狂言方に話を振って始まりる気がしますが。
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萬斎さんが静かに橋掛に入ってこられ、そこに座を占めると、闇溜まりのような空間が。
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照明が暗くなったという訳ではないのに、何ものかを内包した淀みとでもいうような。
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前場では、文蔵さまと裕一くんが交互に歌うところが素敵でした。
戦いの臨場感もありつつ、でも格式があって。
で、その後に地謡とお囃子がグイーッと盛り上がるのが、カッコ良く。
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前場のおわりの謡は叙情的で、橋掛りにたゆたう闇溜まりと相まって、奈須への期待が高まります。
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萬斎さまは、縦長亀甲っぽい総柄の、濃紺色・鉄黒色の松皮菱切替の長裃に、濃色の段熨斗目。
全方位隙のない、ストイックなお姿。
奈須の後見は裕基くん。
裃〜
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すごい奈須でした!
場を支配する、とか、掌握する、というのは、こういう事を指すのでしょうね。
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私はちょうど見所の中央あたりのお席だったのですが、
見所じゅうの気配が放射線状に萬斎さまに集約されているのをまざまざと感じました。
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萬斎さまのお声も、所作も、耳に、目に焼き付いています。
全てがベストショット!とい叫びたくなる、厳粛な美しさでした。
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ありがとう萬斎さま、
ありがとう文蔵さま、
ありがとう広忠さん、
この公演の場に居合わせる事ができて、とても幸せです!!
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「狂言ござる乃座 70th Anniversary」(10/24)を観る
10/24は、前週に引き続き、
「狂言ござる乃座 70th Anniversary」を観るべく、
国立能楽堂へ。
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前週の10/19の釣狐は小書なし、今回は小書あり、との事だったので、両方とも見なくては、と。
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舞囃子「善知鳥 翔入」
シテが片山九郎右衛門さん、
笛が杉信太朗さん、
小鼓が観世新九郎さん、
大鼓が広忠さん!!
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狂言「舟ふな」
主が万作さん、
太郎冠者が三藤なつ葉ちゃん
後見が石田さん。
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狂言「釣狐 白狐之習」
白蔵主&狐が萬斎さん、
猟師が裕基くん、
後見は万作さん&太一郎くん。
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前シテは、テールグリーンの紋紗(と、萬斎さんが後日ラジオで仰っていました)、
白い狐の面に、花帽子。
胸騒ぎの妖気!
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狐の耳と思しき箇所は、花帽子が釣鐘状に尖っていて、これが絶妙のフォルムで。
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狐の面の正中線にはスーッとラインが入っていて、縫合の傷痕のようにも見え、それがクローンちっくでクールな印象なのです。
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ケモノとクールという相反するな要素が同居して、不思議な魅力を醸し出していました。
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公演翌日のラジオでは、萬斎さんは男性(もしくは雄ってワードだったかも)のつもりで演じました、と仰っていたけど、謎めいたオーラがメーテルっぽい。
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番組表によると、この10/24公演は、白蔵主の面を使わずに、狐の面だけで通す、という試みだったのだとか。
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ありがとうございます!
とても気に入りました!!
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10/19の常の型を観た時も、凄っ、と興奮しましたが、こうして2パターン観せていただくと、私は10/24版の方が
いっそう好みです。
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なお、10/12京都公演は、「白狐之習」の小書つきでも、面は、白蔵主と狐の二面を使われたようです。
色んなパターンがあるなんて知っちゃうと、全部観たくなってしまう。
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そして、後場では、面の切り顎が大活躍。
着ぐるみだと、お遊戯会的な可愛らしさが出るリスクがありそうだけど、顎の動きが可愛らしさを完全に封じ込めていた気がします。
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顎の動きはシャープというか、エキセントリックで、なにものかが憑依して神託を語っているって風でした。
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今回、後場で橋掛から本舞台へ走り込む場面で、狐サマがシテ柱に激突され。。。
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走るっていっても、四つ這いで、しかも着ぐるみに面を付けて、と、何重にもハンデのある状態だったのです。
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そのあと本舞台に仰向けに倒れてしまわれたので、
これって、こういう演技なんだよね?
まさか着ぐるみの中で流血とかなさってないよね?
、、、と慄いてました。
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翌日にラジオで定常運行のお声が聴けて、ようやく安堵したのでした。
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#白蔵主
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#萬斎
#猟師
#裕基
「狂言ござる乃座 70th Anniversary」(10/19)を観る
10月19日、国立能楽堂へ「狂言ござる乃座 70th Anniversary」を観に行ってきました。
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舞囃子「善知鳥 翔入」
シテが梅若紀彰さん、
笛が竹市学さん、
小鼓が観世新九郎さん、
大鼓が広忠さん!
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狂言「舟ふな」
主が万作さん、
太郎冠者が三藤なつ葉ちゃん
後見が石田さん
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太郎冠者は主に対して、「私の前では無理にカッコつけなくていいんですよー(もっと味のある言い回しだったんだけど失念)」なーんて言ったりして、
上から目線なトコが可愛い。
そんな扱いをされちゃう万作さんは、もっと可愛い。
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狂言「釣狐」
白蔵主&狐が萬斎さん、
猟師が裕基くん。
後見は万作さん&太一郎くん。長裃!
囃子方は、先程の舞囃子と同メンバですが、裃にお着替えされていました。
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自分の化けっぷりを水面に映して確認する所作が、幻惑的な美しさ!
頭や身体の向きを様々に変えてみる様は、三番叟の面替りのようで。
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美しさが、得体の知れない存在を、より不気味に感じさせてくれます。
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語りの場面では、萬斎さんが座っておられる鬘桶に、万作さんが膝をピタリと寄せて正座なさり。
なんともビシッとしたお姿。
さっきの「舟ふな」のチャーミング主とのギャップがすごい。
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そして、餌を見つけてからの逡巡お狐様は、ハムレットのよう。
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危険と分かっている餌を食すべきか、無視すべきか、それが問題だ
・・・というセリフがあった訳じゃないけど、2つの選択肢のはざまで苦悩する様が。
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裕基くんの釣狐もハムレットみを感じたんだけど、萬斎さん狐も然り、というのが興味深いです。
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ハムレットを演じた事がある方が狐をなさると、ハムレット要素がでるって事なのでしょうか。
裕基くんの釣狐は、リーディングのハムレット後だったと記憶しています。
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とにかく凄い舞台を観てしまった、という興奮がまだ続いています。
来週の小書つきも楽しみです。
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