萬斎さん観賞と日本画修得の日々

能楽や展覧会の観賞の感想を書いています

「能を知る会 横浜公演」を観る

3月12日、横浜能楽堂へ。

最初に御挨拶に出てこられた貫太センセが仰ることには、
藍染川」は、たいへんな稀曲で、今回の出演者の中で、この曲の経験者は広忠さんだけです、と。

後見をなさるに観世喜之さんも?
そんなことってあるんだ。

 
「文荷」
太郎冠者が萬斎さん、次郎冠者が深田さん、主が月崎さん。
後見が飯田くん。
 
萬斎さんは、白地に萌黄色&山吹色の格子の縞熨斗目、紺の襟、薄煉瓦色の狂言袴、浅葱色地に橋&波頭は配された肩衣。
 
スタート早々、
主がラブレターを太郎冠者に託そうとしますが、
あっと、ラブレターがエアーです。

懐へのセット漏れでしょうか。
よりによって、この演目のキーとなる小道具が。
 
しかし、後見の飯田くんがまだ舞台上に現れておられないので、如何ともしがたい。
 
はやく、はやく、飯田くん、来て~
お、来ました。
次なる小道具の竿を持って。
 
後見座に座り、キリリと真剣に舞台に目を注いでおられる。
が、その視線の先は、萬斎先生へ。
飯田くん、そっちじゃなくて、月崎さんだよ、
月崎さんの手元を見て~
 
月崎さんは勿論ですが、萬斎さんも深田さんも、落ち着き払って演技を進めているので、

何か異変が起こってる、と、飯田くんには直ぐには伝わらない。
 
が、月崎さんがエアーのラブレターを萬斎さんへ差し向ける所作をするや、瞬時に察知した模様の飯田くん。

いえいえ、取り乱されたご様子はカケラもお見せにならず、さっと緊張がかすめただけです。

飯田くんは、間髪入れずに置かれた竿を手にして、すっと切戸口へ消える。
 
なんで竿も一緒に?
後見さんが居ない状態で、後見座に何かしらのグッズを置いておいちゃいけない決まりがあるのかな?
 
10秒かそこらで、竿とラブレターを手にして戻ってこられ、まず竿を後見座へ。
続いて、ラブレターを月崎さんのもとへ。
 
ようやく実体を得たラブレターは、その直後に、主から太郎冠者サマへと手渡されたのでした。

はふー 間一髪でしたー
頼りになる飯田くん。
 
ラブレターを竿に吊るし、太郎冠者が謡いはじめます。
その最初のとこのユリが、とーっても美しい。

太郎&次郎冠者が、ラブレターを開封して、
「小石だくさんに詰め込んだ」
「富士の山まで詰め込んだ」
とか言い立てて笑いあう。

太郎冠者が冗談を投げると、次郎冠者が正しくキャッチして、正しく応酬する、この感じ、とてもいいなー
分かりあえてる同僚な雰囲気が。
 

藍染川」
梅千代ノ母(前シテ)&天満天神(後シテ)が貫太センセ。
梅千代が富坂唐くん(たぶん小学3年生)。

大宰府神主が福王和幸さん。
その妻が萬斎さん。
左近尉(宿の主)が福王知登さん。
神主ノ従者が村瀬慧さん。
 
囃子方が、杉信太朗さん&飯田清一さん&広忠さん&小寺真佐人さん。
後見が、観世喜之さん&奥川恒治さん&小島英明さん。
地頭が観世喜正さん。
 
萬斎さんは、若紫色の縫箔、立涌&花丸文が配された濃紺の縫箔を壺折ちっくに着付けています。
腰帯は、金地に朱色・青色の花文の腰帯。
 
ひー
ビ・ジ・ン!!
 
そして、今までに観てきたアイの中でも、一・ニを争うほどコワイ。
「班女」に出てくる野上宿の長者をなさった時の萬斎さんと同じくらい、コワイ。
つまり、とんでもなく魅力的。
 
夫が在京中に仲よくなってしまった女性がおり、子供までいた、で、その親子が夫を訪ねてきた、と知って激昂するのです。

そして、夫が書いたと見せかけて、その女性への絶縁状を偽造することを思いたつ。
 
手紙を書くための紙を萬斎さんに渡したのは、後見の奥川センセ。
シテ方の後見が、狂言方に何らかの物を渡すってレアだぁ

翁の時に千歳(もしくは面箱)へ、鈴を渡すくらいしか、観たことない。
 
妻は、扇の柄を筆先に見立てて、返事をしたためる。
「熊野」の中でシテが和歌を書き付ける場面みたい。
きゃー シテ方のようですーー
 
更に、親子を泊めている宿主に、宿から即刻追い出せ!、と命じる。
こっわ!
容赦ありません。
 
最初の解説で小林健二先生が仰っていたんだけど、この妻の役をなぜ狂言方がやるのかというと、
激しく怒る役だから、と。

シテ方は様式化されているために、怒る演技ができないのです、と。
 
偽の手紙にショックを受けた京のオンナは、川に身投げして自殺してしまう。
こりゃもう、正妻・萬斎さんは徹底的な悪役に確定です。
悪役、いいですね―
 
そんな中、出先から戻ってきて、京のオンナの亡骸に対面する神主。
梅千代に後を継がせる、なーんて言う。
あー
そんなこと言っちゃって、本妻サマのこと、説得できるのぉ?
 
本妻サマとの間の子供(がいるかどうかは言及されてないケド)には、家督を継がせないってこと?

しかし、和幸さんが、あまりに気高い様子で死体(着物)を見つめるので、メロドラマには陥らないのね。
 
この時の子方ちゃんが、またよくて。
セリフを発していない時も、ちゃんと梅千代としてそこにおり、母の死体を見つめている。
 
今回は、コロナウィルス対策として、見所の数ヶ所の扉が開け放たれた状態での上演でした。

扉から流れんでくるヒンヤリとした空気が、川べりに立ち尽くす梅千代くんを取り巻く空気のように感じられます。
 
天満天神は、不気味さをまとった怖ろしげな面立ち。
そうか、大宰府の天神さまってことは、雷さまなのね。
 
ところで、和幸さん&萬斎さん夫妻って、美男美女過ぎるカップルではないですか!
しかし、お二人が同時に舞台にはお出にならない。
生々しくなりすぎちゃうのかな。
 
手紙が3通も出てくるお能でした。
お手紙つながりで、狂言は「文荷」をセレクトしてくださったのですね、きっと。