3月7日、観世能楽堂へ。
「采女 美奈保之伝」
里の女&采女の幽霊が泉雅一郎さん。
旅僧が殿田謙吉さん。従僧が則久英志さん&御厨誠吾さん。
里人が石田幸雄さん。
囃子方が、一噌庸二さん&幸正昭さん&安福光雄さん。
後見が大槻文藏さま&裕一くん。
帝が采女の水死体を見るシーンの謡の言葉がきれい。
顔にかかった藻のくだりのとことか、
ミレイのオフィーリエの絵が、不意に連想されました。
後シテの姿が、めちゃくちゃ綺麗。
濃紺色の無熨斗目を被って、両手で目深に引き下げて、橋掛りに登場。
真珠色の長絹の両袖が、ちょうどお顔の前にふわりと垂れ下がって、優美なことったら。
新たな形状の生命体が彷徨い出てきた、と、トキメいてしまいました。
無熨斗目を脱ぎ捨てた姿が、またまたキレ~
長絹の露は白藍色で、同色の大口をコーデ。
更に、本舞台に入ってきて、片膝をついて合掌(でいいのかな?)の型をしたところが、
ほわわ―ってなるくらい、好み。
面のアングルの斜め加減も、長絹の下からせり出した大口の形も、私にはストライク。
長絹が張りを保ちつつ緩やかにカーブを描いてる一方で、
合掌した右手に持っている扇は右顎の方に向かって少し上向きにスッとのびており。
曲線と直線のコントラストが、もーぉ
最高。
それと! 檜垣模様の葛帯もきれいでした。
この葛帯が、とても凝ったデザインで、頭にぐるっと巻く部分も、後ろに長く垂らす部分も横長の檜垣模様。
1つのパターンの布から、縦長と横長に布を採ったのか、とも思ったんだけど、
となると紫色・蜜柑色・緑色のグラデーションが説明つかない。
頭に巻く部分は、横長方向にグラデーション。
一方、後ろに長く垂らす部分は、上下方向にグラデーション。
てことは、同じ模様だけど、グラデーションの入り方が横方向のパターンと、縦方向のパターン、と、2種類のデザインを織ってるってこと?
ひー
なんとゆうコダワリなんでしょ!
素謡「景清」
景清が阿部信之さん、
景清の娘・人丸が長山桂三センセ、
人丸の従者が小早川泰輝さん、
宮崎の里人は浅井文義さん。
宮崎の里人は通常ならワキ方のお役のようですが、素謡の時はシテ方がなさることもあるのですねー
お社中会とかでは、そういったパターンを観たことがありましたが。
出演者は全員、本舞台中央に斜めに2列で座られました。
前列は、向かって左から、従者/人丸/景清/里人。
後列は4名の地謡。
地頭は浅見真州さん。
みなさま黒紋付。
前列4名は、ちょいちょい地謡にも転じます。
そうか、ワキ方のお役もシテ方が務めてると、地謡と掛け持ちできちゃうわけですね。
景清をなさった方に、心惹かれてしいました!
景清の人生をほんとうに、追体験なさっているかのように感じられ。
スナフキンちっく、というか、仙人ちっく、というか。
銕仙会のサイトによると1939年生まれとのこと。
阿部信之さんですね。今後は要チェックです。
「貰聟」
舅が万作さん、夫が深田さん、妻が飯田くん。
後見が月崎さん。
コッワイお舅サマ。
かつ、神がかり的に立ち姿がうつくしい。
舅のお役の中ではこのお役が、ピカイチ万作さんにマッチするんじゃないでしょうか。
金茶の段熨斗目、同色の地に細かい松の木(?)柄の長裃が、実に映えます。
観世銕之丞センセの仕舞「花筐 狂」
地頭は、阿部信之さん。お声も好きです!
「望月 古式」
友房は大槻文藏さま、友房の上司・友治の未亡人が大槻裕一くん。
友治の忘れ形見・花若が谷本康介くん。
友治の仇・望月が宝生欣哉さん。その下人が萬斎さん。
囃子方は、松田弘之さん&大倉源次郎さん&亀井忠雄さん&小寺真佐人さん。
後見は、銕之丞センセ&谷本健吾さん&赤松禎友さん。
下人サマは、古代紫色の格子の縞熨斗目、紫紺色の襟、白地に柳鼠色の変り市松柄の狂言袴、焦げ茶色地に鳶が染め抜かれた肩衣、瓢箪紋の腰帯。
なんだってもお、麗しい・・・
憂いの未亡人が、これまた魅惑的で。
更に、友房サマの気品がヤバイ。
なので、未亡人が曽我兄弟の謡を歌ってるときは、もはや豪華絵巻の景観。
向かって左から、
未亡人、花若くん、少し奥に友房サマ、忠雄さん&源次郎さん、下人サマ、と半円上に居並ぶ様は、
ひゃあああ どこみても幸せが満ちているよぉぉ・・・という贅沢きわまりないコトになっちゃってました。
花若くんが「いざ討とう!」と叫ぶやいなや、
下人サマは瞬時に反応し、片膝立ちに。
太刀の柄に手を掛け、問いただすお声の気迫が!
その所作が!
ぎゃーっ 悶絶のカッコよさ!!
友房が取り成した後に、花若くんが、望月と下人サマにお酌するシーンがありました。
通常でも、友房じゃなくて子方ちゃんがお酌してた?
それとも「古式」の小書つきだから?
花若くんがお酌するために下人サマに近づくと、下人サマは、さっきの剣幕はどこへやら、
忽ち、でへへ~ ってなっちゃう。
相当なアルコール好きなのですね。
あとねー
花若くんが鞨鼓を打ち終わったあと、撥をキッと上げて幕を指し示すシーンも、いいー
そうすると、幕が半分だけユラユラと上がって、友房サマがチラ見えする、と。
眼福まみれの公演でした。
このような状況のなか、中止にしないで開催してくださり、ありがとうございました。