9月11日、宝生能楽堂へ。
「実盛」。
シテは観世宗家。
ワキは森常好さん、ワキツレは舘田善博さん&梅村昌功さん。
アイは石田幸雄さん、
囃子方は、一噌庸二さん&観世新九郎さん&広忠さん&小寺佐七さん。
地謡は5人編成で、地頭は銕之丞さん。
後シテのビジュアルが、私にはストライクでした。
こっくりした黄金色の地に、古代紫&スモーキーブルー&緑青色の向鶴菱模様の厚板。
肩脱ぎにした枇杷色の長絹(?)には、金糸の唐草模様。
山葵色&ゴールドの亀甲花菱の半切。
美老人~
何より、面がカクベツに美しくて、白垂との調和も相まって、気品を湛えたお姿でした。
公演パンフによると、
面は、朝倉尉で、河内作(観世宗家蔵)だそうです。
これまで私が朝倉尉に抱いていたイメージって、妄執ムキダシな感じなんだけど、今回の面は、もっとサラサラしていて、
解脱してるような面差し。
こういう面の方が好きです。
「鏡男」
夫が萬斎さん、その妻が高野さん、鏡売りが深田さん。
後見が内藤くん、幕が飯田くん。
萬斎さんは、
松&笹&梅入りの小豆色と、折鶴&亀入りの山葵色が
松皮菱で切り替わっている掛素襖。
えらく張りがあって、パリッパリ。
その効果なのでしょうか。
腰の辺りでタックを取って腰帯で絞められた裾は、大きく拡がり、金魚の尾ヒレのよう。
腰帯は梅紋。
白地にブルーグレー青海波の狂言袴の括り袴、
裏柳色の格子の縞熨斗目、
紺色の襟。
松&笹は山葵色、梅は胡桃色。
縞熨斗目も狂言袴もペールトーンで、
素襖の裾エリアやポイント柄もペールトーンなので、色調のリンク感がすてきです~
前半は、未知なる物体(鏡のこと)に出会った夫の、新鮮な驚きっぷりが愛嬌いっぱい。
色んな形相を鏡に写してみては、いちいち喜ぶところが、無邪気でかわいーのです。
後半は、夫の浮気(誤解なんだけど)に怒り狂う妻に、アタフタする様が、もーぉ いとおしい!
誤解を解こうと手を尽くせば尽くすほど、誤解がヒートアップしちゃうんですねぇ
鏡の中に見えているのは、自分たち夫婦の姿なんだよ、と妻に示すために、
夫は妻の肩を抱き寄せて、一緒に鏡に写りこんで見せます。
それだけのシーンなんだけど、
なにやら艶っぽい。
別に狙っておられないと思うんだけどなぁ。
何に起因しているのでしょうか?
とても楽しかった。
見所で笑い声が起こった時、あ、そうか笑っていいのか、と我に返りました。
この2日前に会社でショックなことがあって、ずっと感情がフリーズしていたようです。
そうか そうか、
笑うって行為があったよね。
うん、うん。
・・・と、妙に安心してしまいました。
私もフリーズを溶解して、笑うことができました。
狂言を見て笑うって、とてつもない治癒力があるんですねー
笑っても、問題は問題として、依然として在るんだけど、
でもフリーズを溶かしてくれるって、重要なことです。
この週末に観に行けて、ほんとうによかったです。