萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「観世会定期能 1月」を観る

1月3日、観世能楽堂へ。

「翁 父尉延命冠者之式(ちちのじょうえんめいかじゃのしき)」

翁は観世宗家、
三番叟は太一郎くん、
千歳は三郎太くん、
面箱は飯田くん、
狂言後見は深田さん&中村くん。

笛は松田弘之さん、
小鼓頭取は大倉源次郎さん、
脇鼓は鵜澤洋太郎さん&大倉伶士郎くん、
大鼓は柿原弘和さん。

今回は、千歳も面をつけました。
紐を結ぶのは坂口貴信さん。

邯鄲男が笑ったらこうなるのかも、というような顔つきの面。
これが「延命冠者」の面、ということでしょうか。

観世宗家は、父尉の面を。
こちらの紐も、坂口貴信さんが結わえられました。

翁の舞がおわると、翁と千歳が二人で並んで、面を外されました。

太一郎くんは、ろくしょう色の直垂。
明るく、華やぎのある三番叟。

鬱々したニュースが毎日流れてきますが、新しく年が開けたのだなー、と漸く感じることができました。

ところで今回は、面箱の中に、
父尉、延命冠者、黒色尉の3つの面が入っていたということですね。

実は、翁が座についた後、飯田くんが面箱を翁の前へ持っていって面さばきをする時間が、やたらと長かったのです。
面の数量が多かったことと、関係あるのでしょうかねー

なお、2年前に観た金春流では、延命冠者の面は、狂言方が付けていました。
金春流では、千歳を狂言方が務めるので、そのようなことになるのですね。

その時は、シテは、まず白色尉を、続いて父尉を着けておられました。
今回の公演より小書が一杯ついていたので、そのためなのか、もしくは流派による違いなのか、興味がそそられます。

その金春の公演を拝見したときのblogは、こちら。
https://jizo.hatenablog.jp/entry/2019/01/12/021150


さて、今年の話に戻ります。

「末広かり」
果報者が萬斎さん、
太郎冠者が裕基くん、
すっぱが石田幸雄さん、
後見が内藤くん。紋付裃です。

果報者サマは、淡い色調の紅白段熨斗目、紺と洗朱の松皮菱きりかえの素襖裃。
紺地には松竹梅、洗朱地には折鶴&亀。

素襖裃のフォルムが、格調たかく美しい。

裕基くんは、白地に小豆色の格子の縞熨斗目、コウモリ(?)の腰帯、常磐色の狂言袴。
肩衣は、茶褐色地に梅の枝が染め抜かれ、青磁色の霞がたなびいています。

今回の配役の「末広かり」、はじめて拝見しましたが、とーっても良い!

裕基くんの安定感に、目を見張りました。
アドの太郎冠者のなかでは、この太郎冠者はトクベツ大変そうですが、何度も演じてこられたかのように軽々とこなされる。

「居るけど居ない」ポジションにおられる間も、萬斎さんは実に穏やかなお顔。

お使いから帰って、間違ったウンチクを得々と披露する裕基くんと、呆れ、いらつく果報者サマとのやり取りが絶妙です!

そして、ラストのキメが、柔らかくなりすぎす、祝賀性のなかにも硬質な美しさがあるのです。
なんと見目麗しい親子なのでしょうか!!


仕舞
高砂」  梅若猶義さん。
「羽衣 クセ」 梅若万三郎さん
「合浦」  観世喜正さん

独吟「老松」 梅若実さん
鬘桶に座っておつとめなさいましたが、お声は健在でした。


「吉野天人 天人揃」
シテ(里女&天人)が観世芳伸さん、
ツレ(天人)が坂井音晴さん&武田文志さん&北浪貴裕さん&武田祥照 さん&藤波重彦さん。

ワキ(都人)は福王和幸さん、
ワキツレは、村瀬堤さん&村瀬慧さん。

アイ(里人)が高野さん。

笛が杉信太朗さん、
小鼓が幸正昭さん、
大鼓が亀井実さん、
太鼓が大川典良さん。

後シテの面キレイ。
後場では、4人のツレを含め、5人の天人がズラリと並びます。

後シテは白い舞衣の壺折で、鳳凰の天冠。
ツレは藤紫地に金糸の長絹で、月輪(?)の天冠。

ツレもモチロン綺麗なんだけど、後シテは、やはり主役オーラがあり、飛び抜けて気高かったです。