「翁」
翁が観世宗家、
千歳が三郎太くん、
三番叟が萬斎さん、
面箱が裕基くん。
三番叟後見が深田さん&中村くん。
狂言方の幕は、飯田くん。
笛は杉信太朗さん。
小鼓頭取が大倉源次郎さん、
脇鼓が大倉伶士郞くん&田邊恭資 さん。
大鼓が広忠さん~!
紫色の毘沙門亀甲の素襖裃です。
地謡は、角寛次朗さんを地頭に、10人編成。
最初に登場する裕基くんは、いつも以上に重々しい低速度で橋掛りを進んでくる。
明るめの藍色の地に、鶴亀&松竹が配された直垂。
前々日の「法螺侍」の太郎冠者とガラリと変わり、見事なまでのポーカーフェイス。
この静寂な面の下には、めまぐるしく喜怒哀楽が変換する豊かな表情筋が隠されていたんだなー、と、感慨深い。
萬斎さんは、墨紺色の直垂で柄は裕基くんとオソロ。
三番叟を務める前は、精進潔斎する、と、一般に言われているけど、
萬斎さんてば前々日に、”ほらたすけえもん”の役をなさって大丈夫だったのかしら?
女性とナカヨクしようとトライはしたけども、成就ならず、だったから、ギリギリセーフでしょうか。
翁に向き合い、対面する白皙の横顔は気高い冷気に包まれて、”ほらた”の片鱗は全くなし。
はーっ
ウツクシイ三番叟だったー
キレと、格調高い所作に加えて、シュンッ シュンッ、と狂気が掠めるのが最高すぎる。
伶士郞くんは、背がグンと延びられ、美少年オーラ増し増しでした。
数年前、増田正造センセのオープンカレッジの講座を受講した際に、若かりし頃の源次郎さんを評しておられた言葉を思い出しました。
「鼓を打ってると、まだ指の皮が薄いから指先がピンク色に染まってくるんですねぇ。それが非常に色っぽかった。」と。
その描写のお父様そのままに、伶士郞くんの長く華奢な指先も、ほんのり朱に。
おお、増田正造センセが仰るのは、このことだったのですねー
翁が終わると、脇鼓のお二人は退出され、他の囃子方はそのまま残られ、
「高砂 八段之舞」が始まりです。
太鼓は金春惣右衛門さんで、
「翁」の時から舞台に出ておられました。
シテが観世宗家、
ツレが三郎太くん。
ワキが福王茂十郎さん、
ワキツレが村瀬堤さん&矢野昌平さん。
アイが太一郎くん。
太一郎くんも、素襖裃&侍烏帽子。
通常の「高砂」では長裃だった記憶があるけど、
翁つき脇能になると、アイの装束もトクベツになるのですね。
いったん退出された伶士郞くんは、前場の途中からお父様の後見を務められました。
先程の素襖裃から、紋付裃にお着替えされています。
後シテの住吉明神の舞が颯爽とカッコいい。
お囃子も、トーゼンながらカーッコいい~
やっぱり広忠さんと源次郎が揃うと格別です!
「末広かり」
果報者が万作さん、
すっぱが石田幸雄さん、
太郎冠者が遼太くん。
後見が内藤くん。
なんと、内藤くんも素襖裃&侍烏帽子。
この曲の太郎冠者は、すっぱに騙される太郎冠者の中では、ハイスペックなランクではないかと。
騙される、という失態がありつつも、上司の怒りをシッカリ解消できんですもの。
そのハイスペックぶりに、遼太くんの端然とした様がベストマッチ。
最後に万作さんが退出する方向へ、ターンなさるとき、シュバッと袂を大きく捌かれる。
萬斎さんと、おんなじだぁ
この「シュバッ」は、萬斎さんのオリジナルではなかったのね。
「エイヤーッ」の止めの後に、「シュバッ」が付くと、いっそう締まる気がします。
ここまでで3時間5分。
この間、お笛と太鼓は、正座しっぱなし!
オソロシー芸能です。。。
仕舞「砧」 観世銕之丞
「清経 恋之音取」
シテが観世宗家、
ツレが坂口貴信さん、
ワキが宝生欣哉さん、
笛が杉市和さん、
小鼓が幸正昭さん、
大鼓が柿原崇志さん。
戴いた公演パンフでは、今回の小書について、「笛が地謡前に膝行し、幕の方を向いて」と書かれています。
ふむふむ、と問題のシーンが近づくと、市和さんに大注目して見守りました。
市和さんの体の向きは、確かに幕の方向に向いていましたが、視線は全く幕には向けられず、ご自分のタイミングで吹いておられました。
無音の時間がながーく続いて、その間は清経は動きを止め、再びお笛の音が流れ始めると、清経も動き始める、と。
”だるまさんが転んだ”のゲームのよう。
「道成寺」の乱拍子のようでもあります。
でも、マは「道成寺」よりも、ずーっと長い気が。
このマは、どの流派でも同じなよかしら?
小書で疑問が沸いたときは、コレ!
「能にも演出がある 小書演出・新演出など」。
帰宅してから、清経の頁を見てみると、
マは口伝になっている、と。
更に、シテの方では、笛とともに動く流派と、逆に笛止んできる間だけ動く流派があるんですって。
今回、不思議なことに私は、清経の中に宗家が入っていることをスッカリ忘れて、見ていました。
なにしろ”だるまさんが転んだ”方式なので、清経は、なかなか橋掛りを渡りきらない。
観世能楽堂の橋掛りは短いにも関わらず。
それだけ長い時間のなかで、
宗家が清経になって、
更に亡霊になって、
という二重の虚構がリアルになってゆくということでしょうか。
ところで、
欣也さんが笠を投げ捨てるシーンがあったのだけど、それを拾うためだけに、大日方寛さんが紋付裃で後見座に一時スタンバイされており。
わわわっ
紋付裃のお姿なんて、レアですーー