萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「第49回 花影会」を観る

4月18日、観世能楽堂へ。

「翁」
翁が武田宗典さん、
三番叟が萬斎さん、
千歳が武田崇史さん、
面箱裕基くん。

笛が斉藤敦さん、
小鼓頭取が鵜澤洋太郎さん、
脇鼓が田邊恭資さん&飯冨孔明さん、
大鼓が安福光雄さん。

萬斎さんは、鶴亀&松の葉が配されたろくしょう色の直垂。
硬質な煌めきがまばゆくて、
松の葉が、雪の結晶のように見えてきます。

アナ雪のエルサに自己投影なさるお方がお召しになると、クリスタル仕様になっちゃんうですねー

すごい三番叟でした!

今ここにいる時こそが、生きている事そのものだ、と強く思わされました。
ありがたやエルサさま。
ありがたや面替。

1週間前に東大寺ボレロを舞った(踏んだ、と言うべきでしょうか)時に励起され、
そのポテンシャルが持続されたまま三番叟を踏むと、こういうスパークが起こるのでしょうか。

そうだとしたら、ボレロと三番叟を交互に、1週間ターンで踏んでいったら、新エネルギーが作れちゃうかも。

これは是非とも検証していただきたい研究テーマです。
その際には、有観客上演でお願いします!

「翁」が終ると脇鼓は退出され、そのまま
「弓八幡」が始まります。

シテ(老人&高良神)が宗典さん、
ツレ(老人に同行する男)が武田崇史さん。

ワキ&ワキツレ(天皇の臣下)が、
舘田善博さん&梅村昌功さん&野口琢弘さん。
お三方とも大臣烏帽子。

土地の男は、深田博治さん。
侍烏帽子。

地謡は、観世宗家を地頭に、8人編成。こちらも侍烏帽子。

囃子方は、翁の時のメンバ(脇鼓を除く)+太鼓の大川典良さん。
とはいっても、翁の上映中から、太鼓の方も舞台上に出ておられました。
つまり、素襖裃に侍烏帽子の出立
ち。

烏帽子コーデ率、高し!

前シテは、小尉(?)の面の下側から、わずかに顎が見えるんだけど、そのラインがとても綺麗。

中入になると、素襖を肩脱ぎにしていた囃子方は、いったん素襖をちゃんと着ます。
で、後場になるとふたたび肩脱ぎに。

翁の舞台を務められた方々が、そのトランス状態のまま、脇能に雪崩れ込むっていうのが、いいですねー

そう考えると、太鼓が最初から座っているのは、トランスに乗り遅れるからなのかしら。

単に入場を一度に済ませちゃおう、ってことではなく。

飲み会に途中から参加すると、テンションが合わないようなもんでしょうか。


「末広かり」 
主人が万作さん、
都の男が石田さん、
太郎冠者が高野さん、
後見が飯田くん。

おお~ 万作さんは、3/12と同様に向鶴菱の素襖裃。
この素襖裃すきすき大すき。

囃子方は、弓八幡メンバが、そのまま続行出です。

小鼓・大鼓は床几に座ったりするから、オール正座ではないんだけど、
笛と太鼓は、3時間ずーっと正座!

すごい芸能だぁ

今回のように、「翁」、そして脇能、脇狂言を続けて上演する形態を
「翁附」というのですって。

ということで、番組には、
「翁附 弓八幡・末広かり」と記載されていました。

この「翁附 弓八幡・末広かり」に出演された方々の烏帽子コーデ率があまりに多いので、ちょっと集計してみました。

翁・三番叟・千歳・面箱:5烏帽子
(三番叟は途中で烏帽子をチェンジするので2カウント)

弓八幡のワキ&ワキツレ:3烏帽子
アイ:1烏帽子
囃子方:6烏帽子
地謡:8烏帽子
シテ方後見:2烏帽子
三番叟の後見:2烏帽子
末広かりの後見:1烏帽子

以上、なんと、28烏帽子!

なお、烏帽子を付けていないのは、
弓八幡のシテ&ツレと、
末広かりの太郎冠者だけ。

とはいえ、弓八幡のシテ&ツレのお二人は、翁&千歳をなさっているので、そこでは烏帽子を付けておられた、と考えると、
完全な烏帽子レスは、
太郎冠者ただ一人!

"このあたりの者"のアイコンともいうべき太郎冠者が、
「翁附」界隈では、マイノリティになる、というのが面白いです。


二人静」 
シテ(女&静御前の霊の影)が武田文志さん、
ツレ(菜採女)が松木千俊さん、
ワキ(神職)が野口能弘さん、
アイが太一郎くん。
       
笛が栗林祐輔さん、
小鼓が鳥山直也さん、
大鼓が國川純さん。


後シテの面は、高岡早紀さんのような魔性系の美貌。

シテとツレの後場の長絹は、柄ゆきがオソロで、色は全く違う、というパターンでした。
ツレは柳色で、シテは古代紫

長絹の下の腰巻に至っては、二人は柄も色も全く違う。

ツレはハッキリしたオレンジ系の縫箔。
一方、シテはピンク色ベース。
印象派風とでもいいましょうか、輪郭がもやもやと霞むような藤の花が一面に。

色調のためか、
ツレは生身の人っぽさが際立って、そのぶんシテは、いかにも実態のない霊のよう。

この藤の装束がめちゃくちゃ素敵で。
以前に虫干の見学に伺った際に、大量のお着物の群の中にこれがあり、染め紬と教わった記憶があります。

その時も、なんて素敵なお着物~と、うっとりでしたが、
こうやって舞台の上で拝見すると、益々もって心ざわつきます!


トータル5時間という中々のボリュームでしたが、あー観たぁーっていう充足感で満たされた公演でした。