萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

主に萬斎さん公演メモ 2019年9月

??9/1、「能の会」、国立能楽堂
永島忠侈さんによる「檜垣」。
アイ(所の者)は萬斎さん。

鉄紺色の地にウニみたいな模様がびっしり配された長裃、水色&白の段熨斗目、ブルーグレーの襟。
いちばん好きな長裃!

格調高い語りのお声と、長すぎるくらいのマが、すてきでした。

後シテの長絹は、星座のデザイン。
これ、前から私が憧れてたやつ!

観世喜正さんの写真集に載っていた写真を観て以来、いつかこの装束を生で観たいと思っていました。

乳白色の地に、銀糸のドットを散りばめ、各々のドットを銀のラインで繋いでいます。

写真集によると、「白地 廿八宿星 長絹(しろじ にじゅうはちしゅくせい ちょうけん)』というんだそうです。

??9/1、「初秋のめぐろ狂言」、
めぐろパーシモンホール

最初に萬斎さんによる解説。40分もの大サービス!

「魚説法」の解説では、
「今日は私の息子が、親の追善って言いますが、てことは俺の追善なのか・・・えー 個人的なことはトモカク」
なんてと仰っる。
萬斎さんが解説なさると、その演目の設定がグンと身近になるんですよねー

解説のあとは、プログラムに記載されていた番組の順番が入れ替り、魚説法、休憩、入間川、棒縛の順番に。

「魚説法」は、万作さんの新発意&裕基くんの施主。
裕基くんは、焦げ茶色の変わり松皮菱の長裃、瑠璃紺色の段熨斗目。

裕基くんの長裃の姿、しみじみイイ。

「棒縛」は、萬斎さんの太郎冠者&深田さんの次郎冠者&淡朗くんの主。
萬斎さんは、狐色の狂言袴、紺のギンガムチェックの縞熨斗目、紺の襟。蕪が染め抜かれた薄群青色の肩衣。

●9/6、「第87回 野村狂言座」、宝生能楽堂

最初に萬斎さんによる解説。
薩摩守」の解説のなかで仰ることには
「菅笠には水衣、塗笠には十徳を着る。なーんてことは、偉い学者さんは中々言わないので、今日、わたくしが申し上げるわけです。」と。

ありがとうございます!
知らなかったですー

「伯母ヶ酒」の解説では、「今日は未成年役者が酒を飲む、という不道徳なシーンですが、ま、エアーですから、お気になさらずに。」と。

こういうふうに、萬斎さんからツルツルと繰り出される言葉の連なり、すき。

裕基くんの「伯母ヶ酒」。
フラつきながら橋掛りを退出していくところが、舞みたいで美しかった。

萬斎さんの「瓜盗人」。
カカシ相手に、なんと素晴らしい設定の練習をしてくれるんでしょ。
お陰で、苦悶の謡が堪能できました。

??9/11、「東京能楽囃子科協議会定式能 九月夜能」

「法師ヶ母」。
萬斎さんが夫、高野さんが妻。
地謡は、中村くんを地頭に、内藤くん&裕基くん&飯田くん&淡朗くん。
後見は深田さん&月崎さん。
 
萬斎さんと狂乱って、なぜこんなに相性がよいのか。
「金岡」よりも、更にいい!
「法師ヶ母」の方が、狂ってる時間が長いですし。
しかも謡が盛りだくさん。後場なんて、ほぼ全て謡!

能楽タイムズ11月号で、村上湛センセが、この時の萬斎さんを絶賛してらして、嬉しくなる。

更に、当曲や、花子・千切木・内沙汰において、萬斎さん演じる夫の相手役(妻)を、ソンハくんで観てみたい、と!

村上湛センセ、その願望を是非、現実に!!
ご自身で企画してくださってもいいんですよぉ

??9/14、「能を知る会 東京公演」、観世能楽堂

最初の解説で葛西さんが仰ることには、今回の演目のために、貫太センセは、装束を新調されたそうで。
その装束は、鎧直垂という銘が付いており、オーダーする人が居ないと職人さんが忘れてしまうから、誂えたのですって。

狂言は「長光」。
お能が「仲光」なので、「萬斎さんが単なる語呂合わせで選んだ」そうです(葛西
さん談)。

すっぱが萬斎さん、田舎者が裕基くん、目代が淡朗くん、後見が中村くん。

「仲光」。
シテの仲光は、貫太センセ。

二人の子供が並んで下居し、仲光がその背後に回って、どっちに刀を振り下ろすか逡巡するシーン。

私は、固唾をのんで見守りつつも、その一方で「ゴチになります」みたい、と思えてしまう。

お会計の伝票を持った支配人が、最後までテーブルに残った二人の背後で、どっちの肩に手を置くか、という、あの状況と似てる。

さて、鎧直垂なる装束は、背後に菱模様の地紋が入った紺色の直垂でした。
でも、遠目には、ただの無地にしか見えなさそう。
この地紋が識別できるくらいの至近距離に、全員が座りきれるくらいコジンマリした会が、昔は主流だったのでしょうか。
紺一色の地に、紫〜白の暈しの露が映えます。

??9/16、「第十四回 奥川恒治の会」、宝生能楽堂

「宗論」。
浄土僧は万作さん、法華僧は中村くん。
中村くんが「寝法華を致そう!」と、ビタッと横たわったとこが、キレがあって、法華僧のキャラにぴったり。

屋島 弓流 奈須与一語」
義経は奥川恒治センセ。
アイ(浦人)は萬斎さん。
アイの後見は裕基くん!!

萬斎さんは、
鉄紺色の地にウニ模様が配された長裃、古代紫色&緑青&白の段熨斗目、水色の襟。

気迫の語り!
後見の裕基くんに見せる、という意図もおありだったのかしらねー

この公演を観た後日、裕基くんの奈須の披きが年明け3月にあることを知ったのでした。

??9/23、「第六回 和久荘太郎 演能空間」、宝生能楽堂

「柿山伏」
山伏が萬斎さん、畑主が淡朗くん。
縞の地模様の紺の水衣、ヤツデの腰帯、枇杷色&紺の格子の厚板、象牙色の地に大きめ丸文入り今日は袴の括り袴。
鳶のマネをして柿の木から落っこちる様までが美しい。

「烏帽子折」
シテが荘太郎さん、牛若丸が和久凜太郎くん、烏帽子屋の妻が��橋憲正さん。

アイは5人も登場。
火振の盗賊が、萬斎さん&中村くん&内藤くん、宿の亭主が太一郎 くん、早打が裕基くん。

萬斎さんは、橋掛りの欄干の上に立ったところを、仲間に脅かされて落下。
柿山伏に引き続き、1公演の中で2度も落下するお方。

コミカルな役なのに、所作は美しい。
暗闇の中へ松明を振り振り進んでく時、振った後に一瞬ピタリ、と静止する姿にハッとなりました。