萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「日本芸術文化戦略機構 JACSO設立記念公演 昼の部」を観る

10月6日、宝生能楽堂へ。
萬斎さんの三番叟つき翁がある、となれば、平日の昼間であろうと
万難を排して駆けつけない訳にはゆきません!

会議があったけど、かなり前から参加メンバに根回しをして
他の日に変えてもらいました。
 
「翁」
翁が辰巳満次郎さん、
三番叟が萬斎さん、
千歳が辰巳和磨さん、
面箱が石田淡朗くん。

笛が竹市学さん、
小鼓頭取が大倉源次郎さん、脇鼓が飯富孔明さん&清水和音さん。
大鼓が広忠さん~
 
狂言方後見が、太一郎くん&高野さん。
黒色尉の紐を結ぶのは太一郎くん。
小鼓頭取の後見は紋付裃の伶士郎くん。
 
萬斎さんは、茄子紺の直垂、枇杷色の地にグリーン&金糸の格子の厚板。

広忠さんは、ブルーグレーの熨斗目に、紺色の毘沙門亀甲の素襖裃。
 
すごい三番叟でした!
美しくて、スタイリッシュで、
鋭利な刃物のようで、
でも、大いなる癒しも内包している三番叟。

いま、この時代に萬斎さんがおられて、ほんとうに良かった。

コロナ渦になってみて、不思議に思うのだけど、
2020年にコロナがくることが予め定められたことだったのだとしたら、

これに拮抗する三番叟を踏む者として、
神様は、萬斎さんを今の時代に
誕生させてくださったのでしょうか。
 
半能「高砂
住吉明神が宝生和英さん、
神主友成が森常好さん、
囃子方は、翁メンバ マイナス脇鼓 プラス太鼓の金春惣右衛門さん。
 
つづいて榎戸二幸さんによる箏曲「大和の界」。
 
ここで休憩時間。

休憩時間に、ロビーで「書パフォーマンス」なるものがありました。

ロビーの絨毯のうえに、グレーのビニールシート、その上に緋毛氈が敷きつめられています。
3種類のサイズの和紙が設えられています。

小・中・大、というよりは、中・大:特大、といった方が相応しいサイズ感。
特大に書くときは、太いハタキみないな筆を使われました。

意外なくらい短時間でシュシュッと書かれるものなんですねー

急いでるんじゃないけど、リズムを意識しておられるように見えました。
息継ぎとは違うのかもしれないけど、この字とこの字の間は一息に書きたい、とか、そういうコトかしら?
 
最後に、和太鼓舞「ウズメノマイ」。
アメノウズメが小島千絵子さん、
篠笛が木村俊介さん、
和太鼓がTahさん。
 
ロビーには、杉本洋さんという方の日本画展示も。

この方は、番組表によると、夜の部のシンポジウム登壇者のお一人だったようです。
ちょっと聴いてみたかった気がします

「狂言ござる乃座 in NAGOYA 23rd」を観る

10月3日、名古屋能楽堂へ。

能楽公演を観るために新幹線に乗ったのは、お正月に大槻能楽堂へ伺って以来、9ヶ月ぶり。


「大般若」
僧が萬斎さん、巫女が裕基くん、施主が石田幸雄さん。
笛が竹市学さん、小鼓が後藤嘉津幸さん。
後見が中村くん。

裕基くんは、金糸の模様は配された真珠色の長絹に、シテ方が女性の役をがなさる時につけるような蔓に、蔓帯。

うっわ
美人~
お仕事ヒトスジのクールビューティー

萬斎さんは角頭巾に、墨衣、袈裟。
角頭巾の萬斎さん!
なんて久しぶりなんでしょー

巫女さんの舞は、公演パンフにも書かれていましたが、三番叟の鈴之段と、ほぼ同じ型。

種おどしの時に、長絹の袂が、お経と唱える萬斎さんにバサッと。
萬斎さんが迷惑がる度に、見所の私たちは楽しくなってしまうのでした。


「柑子」
太郎冠者が万作さん、主が深田さん。
後見が内藤くん。

万作さんは、終始マジメに語られるんだけど、それがナントモいえずオカシイ。
蜜柑カラーの縞熨斗目が、この演目にピッタリでした。


休憩後は、
竹市学さん&後藤嘉津幸さん&河村眞之介さんによる
素囃子「羯鼓」。

素囃子のあとは、そのまま舞台に残られ、

狂言「蝉」に移行。

蝉の亡魂が萬斎さん、旅僧が太一郎くん、所の者が飯田くん、
地謡は、高野さんを地頭に中村くん&内藤くん&裕基くん&淡朗くん、
後見が深田さん。

この曲、以前に小舞で拝見したことがあり、いつか狂言版を観たいと思っていたのです。

萬斎さんは、通常の狂言をなさる時よりも、重々しく低~いお声。
苦悩のお声が、クラクラするほど魅力的です。

テッテー的にシリアスにやるのに、謡の内容がふざけてるってトコがツボでした。
それなのに、ツッコミが出てこないっていう奥ゆかしさ、いいですねー


今回は、休憩時間にアナウンスがあり、終演後に萬斎さんがご挨拶をなさる!と。

終演し、ワクワクしつつ待機していると、切戸口から裕基くんご登場。
インターネット有料配信チラシと、マイクを手にされ。

おわっ
裕基くんおひとりで?
大丈夫?

「父(←この呼称だったか、記憶アヤフヤです)が黒紋付に着替えているので、
その間、ツナギとしろ、と言われて出てきました」・・・と。

ここで、ワーッと拍手が沸き、裕基くんからも少し笑みがこぼれます。

おおーっ
落ち着いておられる。
心配なんぞして、失礼いたしました。

そして、チラシの前面を見所へ向けつつ、裏面のカンペを読み上げられ始められる。

途中まで読み上げたところで、「あ、これは読まなくていいヤツ・・・」と、プチミスも淡々と静かになさる。
テンション低めの感じに、ますます好感度アップです。

数分ほどで萬斎さんが出てこられ、バトンタッチとなりました。

萬斎さんが仰ることには、「大般若」の巫女は白い水衣を着るらしいのですが、「蝉」の装束も白い水衣なので、それと重ならないよう、今回の巫女は“替え”で長絹にしたのですって。

「この巫女の役は私も何度かやっていますが、長絹は着たことなかったです」
と悔やしがられる。

ボレロとかでは、散々ゴーカな装束を着ておられるのに。
ご子息と張り合ってしまうトコがカワイイ。

蝉のラストで、黒頭を外して白い能力頭巾になったのは、髪を剃ったことを表しているんですよ。

・・・という話から、能楽における白の意味のは何通りかあって、とのご説明にまで及び。

また、黒頭は能で使われる物と同じだけど、舞台上で外してしまうのは、狂言ならではなんです、というお話も。

このサービス満点の解説サプライズは、どうした風の吹き回しだったんでしょう?

萬斎さんも、有料配信のPRに言及されていたので、PRがメイン目的だったのかもしれませんが、
めちゃくちゃ得した気分です。

サプライズの黒紋付き萬斎さんを、ありがとうございました。

「平家物語の世界 語りの伝承 巻二十三」を観る

9月26日、横浜能楽堂へ。
 
狂言「今参」。
大名が萬斎さん、
太郎冠者が太一郎くん、
職探し中の坂東方の者が裕基くん。
後見が内藤くん、幕は高野さん。
 
大名サマは、紺地に折鶴&松葉の素襖裃、緑青色&鶸色&サーモンピンクの段熨斗目、ブルーグレーの襟、大名烏帽子。
 
裕基くんは、常盤色の籠目模様の狂言場袴の括り袴、
藍鉄色の地にススキ&蛍の肩衣、
ダリア紋の腰帯、
薄蜂蜜色の格子の縞熨斗目、
璃色の襟、
剣先烏帽子。
 
前半は「蚊相撲」と殆ど同じなので
油断して観ておりましたら・・・
なんと、なんと、トンデモナイ大曲だったのです!!

後半は、昆布売ちっくな要素もある展開に。

職探し中の裕基くんは、大名サマの前へ出て採用面接を受けるのですが、緊張のあまり、義経の恋人を弁慶と答えしまう。

ここで正解が言えると、うまいこと洒落が完成するはずだったんだけど。
大名サマは、色の黒い弁慶が義経の恋人のワケあるかい!と激怒。

え?そこ?
怒るんなら、洒落がコケた点を怒るんじゃないのかな?

その後も、失言続きの裕基くんは、
大名サマが「目を鷹のようにグルグルされるから、びびっちゃうんです」なーんて言ったりする。
 
でも、自分が得意な踊り節(小唄節とか、別の節だったかも)でなら、緊張しません!
と自己アピール。

そんなら、ということで、
裕基くんのビジュアルについて、
節つきで大名サマが問いかけ、
節つきで裕基くんが返答することに。

「かまきりスネ」とか、
「ありごし(漢字で書くなら蟻腰?)」とか、
ミゴトなまでに裕基くんに合致したパーツ、パーツを指摘なさる大名サマ。

「ありごし」の時なんて、
大名サマの問い掛けに、裕基くんが腰を振りながら拍子つきで応じると、
大名サマも一緒になって腰を振っちゃう!

もはや、アイドル(裕基くん)の振り付けを瞬時に完コピして、
一緒になって踊ってるファン(萬斎さん)の図式。
 
ラストは、囃子の「ヒョロロォ~ ピッ」というトメ(というのかな)を、お二人でアカペラで。

裕基くんは、閉じた扇を横笛ちっくに構えて「ピッ」と。
 
なんだぁ? この可愛い過ぎる親子は!

初見の演目でしたが、一気にマイフェイバリット曲の上位に入りました。
これ、ゼヒゼヒまた観たいです。
一世代アップさせて、万作さん&萬斎さんの組合せでも拝見してみたい~

 
須田誠舟さんによる平曲は、「判官都落」。

日本語とは、なんと美しい言葉なのでしょう。言い回しを、真似して使ってみたくなっちゃう。
変なヒトと思われるからやんないけど。

子供の頃は、小説の中に出てくる
「・・・じゃなくってよ」という言い回しが気に入って、
兄弟間でおしゃべりするときに使ったりしてたなー、と、ふと思い出しました。

今回、終盤の方で、プロンプタが付きました。
後見の方は舞台上へは出ておられないのですが、裏に控えておられるですねー
 

能「舟弁慶」。
「遊女ノ舞」と「替ノ出」の小書き付き。

静御前平知盛が櫻間右陣さん、
義経が村下瑠惟くん、
弁慶が森常好さん、
従者は館田善博さん&梅村昌功さん
船頭が高野さん、狂言方の幕が飯田くん。

囃子方が、広忠さん&飯田清一さん&金春惣右衛門さん&松田弘之さん。
 
広忠さんは、梅鼠色の袴。前日に観世能楽堂でお召しになっていた袴と、色の系列は似てるけど、今回の袴の方が、やや深い色味。
 
地謡と後見の方々はマスク装着。
マスクの形が凝っていて、フレアースカートのようなダーツが入った立体フォルム。
丈は、お着物の胸の紋ギリギリ上くらい。
 
地謡が素敵だった。
静の哀しみよりも、知盛の無念さの方が、より胸に迫ってくるのは何故なんでしょう。

来年は、8/15、14時~、演目は未定とのことでした。

「大槻文藏・裕一の会 第二部」を観る

9月25日、観世能楽堂へ。

最初に、観世宗家による仕舞「砧」。
地頭は文藏さま。

6日前はこの曲の地頭を宗家がされたんだよね、と思いだしながらウットリしてました。
文藏さまの地頭もうつくしかったです。

続いて「邯鄲」。
盧生が裕一くん、
舞童が観世和歌ちゃん。

勅使が福王和幸さん、大臣が福王知登さん、
輿昇が村瀬提さん&村瀬慧さん。

宿ノ女主が萬斎さん。

囃子方が、広忠さん&源次郎さん&杉信太朗さん&林雄一郎さん。

広忠さんは、薄灰桜色の袴。
源次郎さんの後見は、伶士郎くん。

後見は、観世喜正さん&赤松禎友さん。
地頭は観世宗家。

やっと邯鄲のアイをなさる萬斎さんを観ることが叶いました!
このお役なさる萬斎さんを観るのが、私の願いの1つでした。
以前に、他流のお社中会では観たことがあったのですが、
ちゃんとした公演で拝見したのは、今回が初。

何がうれしいって、まず女主サマの登場で始まるのですよねー
なんと綺麗な女主サマ!

美男葛ではなく、鬘をつけておられ。
シテ方が女性の役をするときに付ける鬘と同じ物でしょうか?

でも、シテ方と違って、直面なのです。
鬘も、背中に長く垂らしたマント(?)も、金糸と共にターコイズブルーやピンクが使われていて豪華絢爛。
オリエンタル美女~

橋掛りに座るときに、マントの裾を捌く所作が新鮮です。
橋掛りに控えているときにお顔は、6日前の砧の時とは違って
端然としておられる。

もしかして、盧生の夢は、枕がみせてるんじゃなくて、女主サマがみせてるじゃないのぉ?
だって、盧生が悟りを開くだろうことを予見してる風なんだもの。

オリエンタルな麗人として、
萬斎さんと双璧を成す、もうお一方が福王和幸さん。

やはり煌びやかなマントをまとっておられ、これまたお似合いになります!
盧生を夢に誘う扇の音も、厳かに響きます。

悩める青年・盧生の、鬱屈した様子がよい~
さらに、女主サマに起こされて、夢から目覚めた後の放心した様もイイ。
わずか20数歳のイマドキ男子が、これを体現なさるとは!

裕一くんの法被が、2週間前の銕仙会の実盛で観世宗家が着ておられたものと同じだったような。
枇杷色の地に唐草と謎の漢字が配された法被。

違うおうちでも、地頭やってくださるご縁で貸してくださった、ということなんでしょうか。
緑青色の向鶴菱の厚板と、豊かに響きあっていました。

「能を知る会 東京公演」を観る

9月22日、観世能楽堂へ。

狂言は「蚊相撲」。
大名が萬斎さん、太郎冠者が石田さん、蚊の精が太一郎くん。

大名さまは、古代紫&鶸色&サーモンピンクの段段熨斗目、水色の襟、
紺色の地に色々な紋が配された素襖裃。

この素襖裃、脛の辺りで無地の同色の生地が継ぎ足されているのですが、私はこのお装束が妙に好きなのです。

修繕しながら大切に使ってる愛着が感じられるし、
紋の柄が途中スッパリ切られてしまったことで、前衛なデザインになってるとこも好き。

お相撲を取ることになった大名さま、振りかざして、かーっと拡げた手がきれい。
そして最後の「まいったか?」が可愛い!!

しかし付き合う太郎冠者は大変だ。
大名に奉公するっていうのは、家事とかの業務だけじゃなくて、
遊び相手になることも含まれていたのですねー

能は「土蜘蛛」。
謎の僧&土蜘蛛が中森貫太センセ、
源頼光が観世喜正さん、
胡蝶が永島充さん、
頼光ノ従者が中森健之介くん。

独武者が殿田謙吉さん、その従者が則久英志さん&野口琢弘さん。

独武者ノ下人が裕基くん。

囃子方は、広忠さん&飯田清一さん&小寺真佐人さん。
お笛の方は、お名前はからず。

裕基くんは、シュッとしていてキビキビ動く敏捷な下人クンでした。
お声の幅があって、特に低音のお声がうつくしい。

土蜘蛛を成敗したあとの独武者は、切なそうでした。
うぇーい 勝ったぜ!という感じはなくて、
「ごめん、こうするしかないんだよ」とでも言いたげな。

今回は、見所への糸の飛来が殆どなく、ちょっと残念。
コロナ感染対策だったのかも。

でも、時間としては短いのに、観た~っという満足感でいっぱいの公演でした。楽しかった。

能を知る会に萬斎さんが出られる時の狂言って、
お能の演目とリンクするような選曲になってることが多いですが、
今回は、虫の精つながりでしょうか。

「坂口貴信の会」を観る

半年ぶりに観世能楽堂へ。
また来れるようになったことが、しみじみ嬉しい。

「砧」がすてきでした!

芦屋の某の妻&その亡霊が坂口貴信さん、侍女・夕霧が谷本健吾さん。
芦屋の某が森常好さん、
その下人が萬斎さん。

囃子方が、松田弘之さん&飯田清一さん&亀井忠雄さん。

後見が、坂口信男さん林宗一郎さん&観世三郎太くん。

地謡は、観世宗家を地頭に、ちゃんと8人おられる!
ちょうどこの日からイベント制限が緩和され、収容率50%から100%までOKになったのですよね。

とても謡が綺麗。
とくに砧をうちはじめる辺りからの謡が、耳に気持ちよくて。

これでもか、これでもか、と畳みかけてくる妻の寂しい心象に、
私も一緒になって漂ってる感が、快感になってくる。

萬斎さんは、鉄紺色の地に雲丹ちっくな柄の長裃。
万作家の長裃のなかで、コレいちばん好き。
段熨斗目は瑠璃色&白、襟はブルーグレー。

この演目のアイは、所の者ではなくて、もうちょいシテに近しい立場なのですね。
そのためか、所の者としてアイをなさる時より、沈痛な風情です。

憂いにけぶる額が美しい。
瞼は照明をうけて冴え冴えと白く光り、ほのかな憤りが宿っているようにも感じられます。
芦屋の某の妻の心情に寄り添うような、悲哀のお声もイイ~!

他に、三郎太くんと坂口信男さんによる仕舞と、狂言が1番、一調が1番ありました。


狂言は「悪太郎」。
悪太郎が太一郎くん、叔父が深田さん、僧が中村くん、後見が内藤くん。

悪太郎が叔父に向かって「この長刀にのせてくりょう~」と、長刀を繰り出すシーンで、
ちょっと、あれ?長刀は長刀のままだな、と不思議なひっかかりが。

萬斎さんが悪太郎をなさる時って、このシーンでは長刀がウネウネウネ~っと、のたうって蛇みたいに変化するのです。それが私の目に染み付いていたようで。

きっと太一郎くんのなさり方がスタンダードなのでしょうね。
でも、スタンダードを拝見したことで、蛇は萬斎さんのオリジナルだったのか!と気づきました。

ラスト、僧と悪太郎が一緒に謡うところで和みました。
太一郎くんの謡のお声って、華やかです!


一調は、観世宗家と広忠さんによる「女郎花」。
広忠さんは、古代紫色の紋付に灰白色の袴。

めちゃくちゃ主張する大鼓。
それに拮抗して観世宗家もシャウト。
シャウトというか、吐血するかのように謡われる。
ゾクゾクする~!
お能でも観てみたくみたくなりました。

「第91回 野村狂言座」を観る

9/18、宝生能楽堂へ。

通常は2回の公演ですが、今回は
1回プラスして、3回公演。

座席占有50%以下を守りつつ、年間購入者を収用するためには、
2回では入りきれないそうで。

私が伺ったのは、3回目の公演です。

最初に萬斎さんによる解説。
まず、4月の野村狂言座が中止となってしまった事をお詫びなさりつつ、

「と言っても、オレのせいじゃねえ」
と、軽い毒を。
絶好調のご様子に嬉しくなっちゃう。

そして、まったくもって仰る通り!
演者さんサイドは、ムシロお詫びを言われる側ですよね。

長光」のご説明では、

「太刀を佩く・・・"はく"と言っても"オエッ"じゃないですよ。
解説を3回もやってると厭きてきちゃって。」
と。

ええ、ええ、
どんどん暴走なさってくださいませ~
4連イブってだけでも開放的になってる心が、いい感じにふやかされてゆきます。

「水汲」の説明では、「大蔵流では『お茶の水』と言います・・・隣の駅みたいだ」
と、シュタッと左へ身体をひねりつつ、右手をピストルみたいにしてワキ座の方を指す。

振りつきで歌ってるアイドルみたい。
かーわいい~!

更に
「これはとても粋な配役なんですよ。昔、野村萬・・・万之丞といったんですけど・・・と、父が、この曲でナラしましてね。
その孫どうしが今回はやるという。」
と。

以前に、万作さんご自身も「兄と何度も演じて、得意としていた。」と、何かに書いておられたのを読んだ記憶があります。

"得意としていた"、が、ご子息の口を経由すると、"ナラしていた"に変換されちゃうんだ。

謡のビブラートの説明をなさるのに、
「うーぅ うーぅ うーぅ~」
と実例を。
はうー
魅惑ヴォイス~

が、
「ピーポー ピーポ ピーポー」と後に付け足される。

本気の謡をずっと続行くださってもいいのになー

予定では15分のところを20分も解説くださいました。

長光
すっぱが竹山さん、目代が石田さん、田舎者が岡さん、後見が中村くん。

竹山さんてば、怪しさマンテン。
燕尾頭巾にモサモサのお髭が、妙にお似合いになる。

この曲は「茶壺」と違って、すっぱの不正を目代がしっかり見抜いてくれます。

私はいつも「茶壺」を観てると、不正に気付かない目代にヤキモキしてしまうのだけど、この目代は珍しくマトモなのですね。

でも、不正がバレたらバレたで、すっぱが不憫に思えてきてしまう。

長光はゲットしそこねたけど、背中に隠し持ってた過去の戦利品は、取り上げられずに逃げおおせますように。

「水汲」
新発意が太一郎くん、いちゃが裕基くん、後見が淡朗くん。

萬斎さんが「いちゃという名前が、・・・タマラナイんですよねー」などと仰ってました。

裕基くんは、着物を濯ぐ所作が少したどたどしいんだけど、それが初々しく映る。

濯ぎにまだ不馴れな女子って設定なのね、と、観てる側に思わせてしまう説得力のある可憐さです。

この日の新発意は、いちゃから手痛い拒絶を受けたけど、いちゃの怒り方からすると、しばらくすれば怒りは解けそうな気が。

これはワンチャンありますよぉ、
新発意くん!

「咲嘩」 
太郎冠者が高野さん、咲嘩が萬斎さん、主が飯田くん、後見が内藤くん。

萬斎さんは、
濃紺のフロア向鶴菱の長裃、ブルーグレー&胡桃色&白の段熨斗目、水色の襟。

高野さんが萬斎さんの背中を威勢よくバシッと叩かれるので、ドキドキしてしまう。
2回も!

やり過ぎじゃない?
3回公演てことは、計6回も、その調子で叩いたのぉ?

「祐善」
祐善という名の傘職人が万作さん、僧が深田さん、所の者が月崎さん。

地謡が、萬斎さんを地頭に、中村くん&内藤くん&裕基くん&淡朗くん。

萬斎さんと飯田くんは、10分の休憩中に早着替えされたのですね。

囃子方が、柿原光博さん&飯冨孔明さん&栗林祐輔さん。
後見が飯田くん。

解説で萬斎さんが仰るには、舞狂言というジャンルなのだとか。
月崎さんは、ちゃんとアイちっくに幕の脇から出てらして、橋懸りに控えます。

謡がカーッコいい!
盛り上がっていくと、若手くん達が勢い付いてきて。
最初は抜きん出て響いていた萬斎先生のお声が、かき消されそうなくらい。

とくに裕基くんのお声が
「これぞ誠の極楽世界~」のあたり
から、ひときわ響く、響く。

謡の盛り上がりと共に、万作さんも小気味良く狂い舞う。
面が、とってもよいお顔立ちでした。