萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「ハムレット」を観る

萬斎さん演出のハムレットを観に、世田谷パブリックシアターへ行って参りました。

伺ったのは、3/11,14,16,19のマチネ。
上演時間は休憩を含め3時間半でしたが、体感的には、もっと短く感じました。

面白かった!
ストーリーが面白い、というのとはちょっと違って、
ハムレットを演じる裕基くんの清新さに目を奪われてしまって。

4回観て4回とも、その魅力に新鮮な衝撃を味わい続けていました。

ハムレットの苦悩の場面では、苦悩するハムレットを鑑賞するんでなく、
苦悩するハムレットを演じる裕基くんを堪能する、といった具合に。

所作が美しいので、動いても静止しても、フォルムがキマルのですね。

繰り出される言葉が、ちゃんと生身の青年の実感を伴う言葉に感じられ。

あまりに実感が乗っているので、もしかして河合センサの訳を書き換えてるのかしら?と思い、以前に買った訳本を見直してみるも、裕基くんのセリフそのままで。



ほわわー
この文章が、舞台の上であのように生きた言葉になるのかぁ、と改めて感嘆しました。

一方で、ローゼンクランツとギルデンスターンは、狂言方のテイストが随所にあって、ニマニマしてしまう。

二人して後退りして背中あわ
せにぶつかっちゃう場面なんて、お能の「道成寺」の間狂言そのまんま。

驚いて尻餅をつく所作は、太郎冠者や次郎冠者の定番の型が使われていたり。

そして、クローディアスが意外にも繊細キャラで想定外でした。
え?
そんなにウジウジ悩んだり、逡巡したりしてたの?と。

クローディアスを主人公に据えたら、マクベスみたいな雰囲気の劇になるのかも、という気がしてきました。

クローディアスの人となりをこんな風に考えさせられるのって、やはり萬斎さんがなさってこそでしょうか。

が、なんといっても、萬斎さんご出演の1番のポイントは、枠組みを形成されたことかと。

能楽堂の屋根と柱が揺るぎない枠組みとなっているのと同じように、
先代王亡霊の存在感と、クローディアスの語りが、ビシッと額縁を構築した気がします。

額縁があってこそ、他の人々の揺らめきや突出が鮮やさを増すのではないでしょうか。

ただ、そういうことは別にして、私の勝手な嗜好としては、萬斎さんにはもっと思いっきり振り切れた悪〜いヤツの役をやっていただきたいです。

私の中では、「藪原兼業」の杉の市が萬斎さんのなさった
お役の中でナンバーワンなので。
テッテー的な悪役、お待ちしております!