萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「野村万作萬斎 狂言の現在2023」を観る

7月12日、関内ホールへ。

最初に萬斎さんによる"トーク"。
ちょっと屋外に出るのさえ躊躇するような酷暑日でしたが、黒紋付の萬斎さんは涼やかな風情。

「みなさん・・・生きてます?」と、ニヤリとなさり。
先月末のハムレットコンプレックス講義を受講した身としては、ハッとしてしまいます。

これは、生きていると実感できていますか、と問われてるんだよな、と。
ハムレット王子と共通の悩みを抱えてはいませんか、と問われたようで。

萬斎さんは、「解説はこの後にやって貰うので、それで私は安心してヨモヤマ話をしてるんですが」などと仰り、
この日の前日に結崎座で三番叟を踏まれたお話などを。

萬斎さんのお着替えタイム中に、深田さんによる解説。
舞台袖から「鳥目 からかね」のカンペ。

鳥目の材質と磁石との相性を解説しといて、という意図のカンペだったのでしょうか。

深田さんが中々カンペに気付かれず、時間切れの中、個々の単語の語句解説をされて退出してゆかれましました。

「磁石」 
すっぱが萬斎さん、
田舎者が裕基くん、
宿屋が岡さん、
後見が福田成生さん。

宿にチェックインした後、田舎者が寝入ってしまうと、すっぱは静かに踵を返します。

これが、安達原の中入り前のシテのよう。
ぬらり、と本性が立ち現れる様が。
なんとも心ときめくスイッチングでした。

パワーチャージ源の刀身を収納されて、裕基くんは昏倒してしまうんだけど、ほんとに板金っぽい物体感。


突かれたときのグランッという反動が、いかにも硬い鋼鉄のようで。

磁石の精という設定に説得力がありました。

「咲嘩」
太郎冠者が万作さん、
主が内藤くん、
咲嘩が石田さん、
後見が深田さん。

万作さんの扇に、墨絵で大量の茄子がゴロゴロと。
群れ泳ぐ鯉のようにも見え、かっこいい。

太郎冠者は融通が効かないけど、使いこなすのも主の才覚のうち、という気もします。

 

そして、なかなか使いこなせない、というスペックも含めて面白がって、関係性を構築してたんじゃないかなぁ、と思いました。