萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

萬斎さん公演メモ 2019年2月

●2/2
「未来につながる伝統 ―能公演―」

この日は、観能デビューの知人3人が初参戦。
仕舞1番、狂言1番、能1番というボリュームでt丁度よかったみたい。トークも付いていて分かりやすかったようで、好評。

「望月」。
アイの萬斎さんは、ブラック地に枯葉色の格子の縞熨斗目、変り亀甲の腰帯、鉄紺色の襟、鬼瓦が配された墨色の肩衣、茄子紺の狂言袴。

主役のような存在感のあるお声。
前日の「七つの会議」の初日舞台挨拶で、監督が「主役臭」と仰っていたことが喚起されます。

この日は、朝はブランチ出演、昼間は三鷹で、そのあとの望月、という過密スケジュールだったのですが、お疲れをお見せになることなく。

母の独白の謡い手が、母ー>地謡ー>母子、と遷移してくとこが面白いし、かっこいい。

それと、ストーリー展開と関係なくなった人はサクサク舞台からハケてく簡潔さも好き。

●2/5
「万作の会 狂言の世界」(有楽町朝日ホール
萬斎さんによる解説が24分も。

「金岡」の中に出てくる謡の
「われ なかぞらに なすな恋」を萬斎さんが翻訳なさると
「そんなところに行かないでよ、僕のハートちゃん」。

「金岡」では、シテ登場の時に「おまく」と言わないのだとか。
「実際にはフラフラと徘徊しているからでしょうか。」と萬斎さん。

解説のシメでは「最後に蛇足ではありますが」と前置きされつつ「七つの会議」が初登場1位となったことに言及され
「私もやらかしておりますが」なーんて仰る。

悪太郎」。
濃紺のギンガムチェックの縞熨斗目、同色の地に白い輪宝の腰帯、紺色の襟、同色の狂言袴の括り袴。
このアウターとして、前シテは厚板を。厚板は、菱文入りオレンジと、紺&緑の格子の段替。

お酒にムセて、深く前屈みになったときの盆の窪がキレイ。
後シテのアウターは紫鼠色の水衣。

●2/17
「第59回 式能 第一部」

「翁」。
翁は観世宗家、面箱は太一郎くん、三番叟は萬斎さん。
萬斎さんは、鶴亀が配された紺墨色の直垂。袴の裾にはグラフィカルな松の枝。

鶴の羽根の一部と、松の実だけが金糸で、ほかは白抜き。金色が際立ってる。

朱色の襟に、紅白段替の厚板。
厚板の白エリアは青海波の地文に亀の丸紋、紅エリアは亀甲の地文に向鶴菱紋。

種おどしって、目付柱へ鈴を振りかけるベクトルだけじゃなくて、背後にまわした扇の上縁にベクトルがあって、両方が拮抗してるんだ。

動から静へ転換したときのフォルムが美しい。
特に、面替りで仰向いてからビシッと静止するとこ。

ここでイキナリ「七つの会議」の萬斎さんが何故イイのかについて。
止まったときキメの姿が、やはり美しいからなのかも。
タイトな黒いスーツのキメポーズは、黒紋付の三番叟に通ずる。
黒紋付の三番叟は、直垂での三番叟よりも、身体の動きがストレートに現れるし。

ところで、今回レアだったのは、小寺佐七さんの素襖裃&侍烏帽子のお姿。

というのは、「翁」から続けて「嵐山」へ移行したので、太鼓の方も「翁」コーデをなさってたのでした。
納戸色の総柄の素襖がよくお似合いだった。

「嵐山」の地謡の素襖裃もオシャレ。山葵色地に千鳥の裾模様。観世謡本の表紙で目にする、あの千鳥。全員でオソロ。

大蔵流の「鬼の継子」。
子供の人形がツヤピカでグロス感つよめ。
万作家が同曲で使う人形はマットな質感だった記憶が。違いが面白い。

●2/24
「第26回 長野能」

「敦盛」。
シテは武田友志さん、アイ(里人)は裕基くん、ワキ(蓮生法師)は大日方寛さん。

裕基くんは、青鈍色の矢羽の肩衣、同色の襟、同色の格子の縞熨斗目、常盤色の狂言袴。

いままで聴いた裕基くんのアイの中でナンバーワン。
緩急といい、間といい。
声質も狂言の時と全く違う。
もーぉ 今すぐにでも奈須与一語できちゃうんじゃない?
今年の秋には披きでしょうか。

「二人大名」。
通りの者が萬斎さん。
ライトイエロー地に紺の格子の縞熨斗目、紺の襟、モスグリーン地に橋&波頭の肩衣、網目模様の濃紺の狂言袴の括り袴、波頭の腰帯。

萬斎さんが、正面から左へ向くときの頭のめぐらし方に見とれる。頭とともに身体ごと向く所作がうつくしい。

萬斎さんが刀を抜き放った時、刀の柄の根元にピローンと巻きついた謎の物体が。
伸びた幅広ゴムらしきもの。

飯田くんからブン取った脇差を床に置いたタイミングで、セルフで取り外されてた。
その取り外し素早さに、お怒りが滲んでるー

?「きょーうに きょーうに はーやーあーるぅ」を大名たちにレクチャーなさるお声が、サイコー

「邯鄲」。
盧生の面が角度によって様々に表情が違って見飽きない。あるときは悩める女子ちっくにも見え。

舞童の観世和歌ちゃんの姿がキリリとうつくしい。
竹市学さんの笛、すてきだった。

まーでも、この日のピカイチは、なんといっても裕基くん。
この日の裕基礎くんの目撃者になれた幸せに感謝。

日々、覚醒を続けてる裕基くんを観れるのは、今しかない!
少しでも多く観ておかなくちゃ、という気にさせられました。