萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「銕仙会青山能〈4月〉」を観る

4月26日、銕仙会能楽研修所へ。

狂言「飛越」
新発意が裕基くん、
何某が萬斎さん、
後見が中村くん、
幕が内藤くん。

新発意くんの能力頭巾は、枇杷色の格子。
ライトな色調の頭巾が新鮮です。
何某サマは、茶の毘沙門亀甲の長裃。

このお二人が連れ立って茶会に向かう様子は、ほのぼのと明るくて、木漏れ日がきらきらするかのよう。

時おは萬斎さんが狂言の解説をなさる時に、「こうやって舞台を周り出しますが、電車ゴッコしてるんじゃーありませんよ」と仰るけど、

ええ、そりゃもう、周ってる場面は、屋内のゴッコじゃなくて、しっかり屋外に見えましたとも。

裕基くんが茶道のウンチクを語る場面も、気心の知れた相手とそぞろ歩くような雰囲気があり。

この日は雨で肌寒い気候だったのですが、それを払拭する陽射しを味わいました。


能「融」
尉&融大臣が観世淳夫さん、
旅僧が野口能弘さん、
所ノ者が太一郎くん、
笛が八反田智子さん、
小鼓が曽和伊喜夫さん、
大鼓が亀井洋佑さん、
太鼓が小寺眞佐人さん、
地謡は長山桂三さんを地頭に、
小早川泰輝さん&
青木健一さん&
安藤貴康さん&
浅見慈一さん&
馬野正基さん。

後見が、観世銕之丞さん&谷本健吾さん。

舞台全体が、バランスを計算され尽くしたオブジェのようでした。
能舞台の上の囃子方地謡は、龍安寺の石のよう。
闇夜の滑らかな美しさが感じられました。

こちらの能楽堂の雰囲気は、「融」にとても合っているような気がします。

ところで、後見の銕之丞センセの目つきが、めちゃくちゃコワかったです。

コワイ後見といえば、今まではダントツで萬斎さん(シテが裕基くんの時)でしたが、その萬斎さんと同格の殺気!

銕之丞センセが他の方の後見をなさるのは過去にも目にした事があるけど、その時と全然ちがう。

やはり流派のお家元の御曹司ともなると、背後から殺気を放たれる運命なのでしょうか。

終演後に、能楽小講座。
囃子方が退出されると、間髪入れずに桂三先生が出てこられ。

よその流派では、おシテを務められた方が解説に出てこられるパターンもありますが、地頭をされた方が講座をなさるパターンもよいですね。

週の半ばの夜ともなると、翌日に備えて早く帰らねば、と守りに入りたくなるもの。
そんな時に、待ち時間なしの講座はありがたいです。
講座の最初に、キーワードは、月光と懐旧の情の2つ、と仰ったのだけど、
講座の締めくくりでは、キーワードは3つ、と。

月光と、懐旧の情と、嗚呼、と1つが思い出せません〜
と、苦悶なさり。
見所のどなたかが、最初に仰ったのも2つです、とお声掛けされれば良いのに。
そういう私も根性がなくて、こういう場面では声が出ないのです。

でも、月光&懐旧の情のワードは、しっかりインプットされました。

もう一つ、桂三センセのお言葉で印象に残ったのは、「ここの能楽堂は、演者とお客さんが一緒に空間を共有できる」とのお言葉。

 

観客である自分は、まさしくそういう思いに満たされていたけど、

演じられる側も同様に感じられるんだ!

と、嬉しいような、畏れ多いようなソワソワ感でした。