萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「第50回 正門別会 二十五世観世左近元正 三十三回忌追善」を観る

6月19日、観世能楽堂へ。

「翁」
翁が観世三郎太くん。
初演だそうです。
三番叟が裕基くん、
千歳が観世淳夫さん、
面箱が太一郎くん。

笛が一噌隆之さん
小鼓頭取が大倉源次郎さん、
脇畳が田邊恭資さん&大倉伶士郎くん、
大鼓が亀井広忠さん。
 
後見は観世銕之丞センセ&坂口貴信さん。
三番叟後見は深田さん&中村くん。

今年は翁を観る機会が無くて、今年初の翁。
大満足でした!
そして、裕基くんの三番叟がスタイリッシュ。
かっこいいにも程がある!!

連吟「経正」
13人もの先生方がズラリ、と。

仕舞
「藤戸」観世恭秀さん。
采女キリ」山階彌右衛門さん。
鞍馬天狗」観世喜正さん。

「無布施経」
僧が万作さん、
施主が石田幸雄さん、
後見が岡さん。

万作さんの度重なる匂わせに、間髪いれず石田さんが左様でござる、とスピード応答。
万作さんが語尾まで言い終わるのを待たずに、という絶妙のタイミングが肝なのでしょうね。

独吟「勧進帳」 梅若桜雪さん。

舞囃子「融」
 観世銕之丞さん。
笛が竹市学さん、
小鼓が源次郎さん、
大鼓が広忠さん、
そして太鼓は、なんと観世元伯さんのご長女の結子さん。
結子さんは、凛とした気品と透明感を兼ね備えたお姿。
掛け声もお姿にピッタリの美しいお声でした。

「檜垣 蘭拍子」
老女&檜垣ノ女ノ霊が観世宗家、
僧が森常好さん
里の者が萬斎さん。

地頭は梅若桜雪さん。
笛が一噌庸二さん、
小鼓が観世新九郎さん、
大鼓が亀井忠雄さん。

小鼓後見は源次郎さん。
中入りの時以外は、付きっきりで座っておられました。

前に読んだ観世宗家インタビューの中で、檜垣をやるには桜雪さんの地頭が必須、と宗家が力説されていた事を思い出しました。
少し前の能楽タイムズだったように記憶しています。

そして、面がとても素敵でした。清浄な美しさがあり。
かつて美貌を誇った人は、骨格からして美しいのですねー

萬斎さんは、鉄紺色に雲丹ちっく模様の長裃。
うわーっ
ありがとうございます!
このアイには、どうあってもアレをお召になってほしい、と切望していた装束です!

段熨斗目は空色。襟は青みの薄灰色。

絶えず悲哀が更新されるアイでした。
プロメテウスの肝臓って、こんな気持ちだったのね。

大鷲に肝臓を食べられては再生を繰り返して、苦痛を受け続けた、あのプロメテウスです。

プロメテウスには、常にフレッシュな苦痛が供給されていたんじゃないかな、と思ってるのですが、
この日のアイからも、次々にフレッシュな悲哀が供給され。
というか、悲哀を辿る深い声色にドキンとさせられ、そのドキンが常時、更新され続けた、と言った方が良いかもしれません。
つまり極上の幸せでした!

さて、小書の蘭拍子ですが、公演パンフによると、
通常は〈序の舞〉のところが〈蘭拍子(乱拍子)〉へと変わる、とのこと。

乱拍子って、道成寺に出てくる、あの乱拍子なの?
と半信半疑でした。
で、蓋を開けてみたら、ほんと〜に、あの乱拍子でした。

足元は縫箔ではなく大口なので、道成寺とは印象は異なるのですが、でも小鼓との間にピンと張られた緊張感は凄まじく。

引っ掛かり、というか、摩擦抵抗が感じらて、老いるとはこれほどのエネルギーを伴うことなのか、と圧倒されました。


この日の見所はお着物率高めだったのですが、特にすてきだなー、と目を奪われたのは、鈍色地に草花のシルエットが染め抜かれた付け下げ(訪問着かも)をお召の方。
馬場あき子先生だったのかも。