萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「第二十四回 加藤眞悟 明之會」を観る

5月5日、国立能楽堂へ。

解説 表きよし先生

独吟「復曲 和田酒盛」加藤眞悟さん。

仕舞
最上川」梅若万佐晴さん
「松風」梅若万三郎さ「熊坂」観世喜正さん。

狂言「鈍太郎」
鈍太郎が萬斎さん、
下京の女(本妻)が中村くん、
上京の女が裕基くん。
後見が内藤くん。

前場の萬斎さんは、深緑と蜜柑色の松皮菱切替の掛素襖。松竹梅&鶴亀が配されています。
狂言袴は、露草色の青海波。
亜麻色に絣っぽい格子の縞熨斗目の裾はグラデーションで辛子色。

裕基くんから心変りを告げられた鈍太郎サマは、
ナギナタ使いをオトコに・・・持った〜げな」と、いきなり節付に。
このシフトが楽しい!

後場の出家スタイルは、掛素襖を亜麻色の水衣にチェンジし、老竹色の角頭巾を。

女性と別れたくらいで躊躇なく出家しちゃうとは、なんと素直な。
出家するって人生の一大事じゃないの?

復縁できそうと分かるや、アッサリ還俗する節操のなさも、素直さゆえと思えば可愛らしい。

ラストは、2人の女たちの手車で退出。
車上の鈍太郎サマは、
中村くんの頭を憎々しげに叩き、
裕基くんの頭を愛しげにナデナデ、
を繰り返す。

が、国立能楽堂の橋掛りが長いせいか、幕に入る間際は、動作と相手がゴッチャに。

中村くんの頭を憎々しげにナデナデ、と。
これって、まるでリアル寝音曲!

能「求塚」
シテが加藤眞悟さん、
ツレが長谷川晴彦さん&梅若紀佳さん。
ワキが安田登さん、
ワキツレが高橋正光さん&吉田祐一さん。
アイが深田さん。
笛が松田弘之さん、
小鼓が幸信吾さん、
大鼓が広忠さん!
太鼓が梶谷英樹さん。
広忠さんのライトグレーの裃が爽やか。

前シテの面が、角度によって表情が全然違う。
真正面アングルは、某洋と遠くを見ている様子。
少し横を向いた時は、彼女の近くに焦点が合っていて、優しく軽やかな表情になる。
それなのに再びこちらを向くと焦点は定まらなくなり、決して視線を合わせてくれない。

他の人には優しいのに、自分だけは冷淡にされてるような。
二人の求婚者は、ちょうどこんな気持ちだったのかも。

不幸てんこ盛りな話なのに、ドロドロはしなくて、そんな事があったのねー、とサラサラした心持ちになったのが不思議。

水の流れのある場所には澱みもできるだろうから、そういう箇所では思いが濃縮しやすいのかな。
で、ちょっとした事で澱みが解消されると、停滞していた思いがユラリと漂い出すのかも。
そのユラリも、またサラサラと流れていってしまうから、ドロドロしないのでしょうか。