萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「釣狐を観る会(第一日目)」を観る

10月20日国立能楽堂へ。

素囃子「高砂 八段之舞」
大鼓が広忠さん、
小鼓が観世新九郎さん、
笛が松田弘之さん、
太鼓が林雄一郎さん。

みなさま紋付裃。
めちゃくちゃ尖ってる~
これまで聴いたなかでも
ダントツの素囃子でした。

狂言「末広かり」
大名が萬斎さん、
太郎冠者が三宅右矩さん、
すっぱが三宅近成さん。

後見が太一郎くん、
幕が淡朗くん。
後半は、先程の囃子方の皆様も。
後見も囃子方も紋付裃。

大名さまは、紅白段熨斗目に、
紺色と退紅色が松皮菱で切り替わっている素襖裃。
紺エリアに松・笹・梅、
退紅エリアに折鶴・亀。

この曲では、いつも向鶴菱の素襖裃をお召しだったので、向鶴菱がキマリ柄なのかと思ってました。

私はあの向鶴菱の素襖がとても好きだったので、ちょっと寂しい。
この曲のトクベツ感を盛り上げてるアイテムのようにも感じていたのに。

でも、片脱ぎにされた辺りから、トクベツな素襖に見えてきました。
脱いだ袖が背中の方へ拡がって、
とても華やかなフォルム。
向鶴菱の素襖裃よりも、張りがある生地なのかしら?

最後に袖をシュバッと捌く時も、気持ちいいくらい美しく翻っておりました。

三宅家ブラザーズは、
片や大銀杏が配された肩衣、
片や細かい銀杏柄の長裃。
モチーフをリンクさせたお洒落、よいですねー。

万作さんによる小舞「貝尽し」 

地謡が石田幸雄さんを地頭に、月崎さん&竹山さん&飯田くん&淡朗くん。

とろみのある柔らかな優美さでした。さきほどの先鋭的な素囃子とは対極。
1つの狂言の公演で、この振幅を味わうって贅沢なことです。

狂言「釣狐」
白蔵主&狐が内藤くん、
猟師が深田さん。

囃子方は、広忠さん&観世新九郎さん&松田弘之さん。

後見が萬斎さん!&高野さん。
幕が中村くん。
後見のお二人は、紋付長裃。

深田さんの肩衣すてき。
背中に8本矢が縦に平行にレイアウトされてる。
太めの矢羽根縞 のようでもあり。

とても面白かった!
内藤くんのヒラキを見届ける儀式に参列する感覚で臨んだのだけど、
いやいやいや、
見届けるだなんて、不遜なことを思った自分が恥ずかしい。

ただもう純粋に堪能しました。

白蔵主の語りがエキセントリック。
世界のナベアツの、3の倍数の時にアホになるネタを劇的にした感じ。

タダナラヌ感を煽ってくる。
こりゃ、何かが起こりそう~、と、どんどんひきこまれてしまいました。

そして、後見の萬斎さんが凄みのある美貌でした。
大名さまの時は、キラキラする滑らかな美しさだったけど、
後見の時は、引っ掛かりのある美しさ。

語りの間は、内藤くんの背後から鬘桶を支えておられ、鬘桶に添える指の先まで、終始うつくしかった!

今回の公演は、正面席が落選してしまい、泣く泣くの脇正面だったのですが、そのお陰で鬘桶の背後のお方を観る幸運に恵まれました。