萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「天保十二年のシェイクスピア」を観る

本日午後の仕事が免除されたので、急きょ、日生劇場へ観劇に行ってきました。

コロナ対策のための免除じゃなくて、残業削減対策のためってトコが、うちの会社の苦しいところです。

さて、観たかった理由は、高橋一生さんが、リチャード三世とおぼしき役をなさる、と思われたので。

実は、秋にシアタートラムで貰ったチラシの束の中に、この公演のチラシを見つけ、

高橋一生さんの役が「醜い顔と身体、歪んだ心を持つ佐渡の三世次」と書かれていたのが、頭の隅に引っ掛かり続けており。

ふいに舞い降りた、このまっさらな時間を充てよう、と思い立った次第。

事前知識なしで、パンフも買わず、読まず、だったので、 実はリチャード三世じゃなかったりして・・・
と、一抹の不安もありましたが、大当り!
いや、大当りより更に上を行く、すばらしすぎる設定でした。

三世次(ミヨジと読むことも、観劇中に知りました)は、

リチャード三世と、
マクベスと、
杉の市がミックスされた人物だったのですーー

ワルモン好きの私には、これでもかっていうゴージャス設定。

するすると嘘八百が口から出てくチャラさ、いい!

私達が歩くのと同じくらいの自然さで、躊躇無なく、なめらかに嘘をつく。
なめらかに人を殺める。

ミヨジは足を引きずってので、ミヨジにとっての歩行は、なめらかに進むものではなかったんだけど。

なめらかな歩行の代わりに、嘘や殺人で穴埋めをしていたのでしょうか。

エネルギーをほとばしらせながら、高い目標に向かって真摯に突き進む姿は、純粋にも思えます。

あっけらかんと悪事を重ねていく悪いヤツなのに、なぜ私は入れ込んで、目標達成を応援したくなるのでしょうか。

高橋一生さんて、もともとの素養として闇を抱えてる風なとこがあるでしょ?(個人の勝手な思い込みです。)

なので、自分の悪事に対して苦悩したりしなくても、どんなにチャラチャラしてみせても、闇がちらつく。
その闇のわずかさ加減が、絶妙だったのかもしれません。


さて、カーテンコールの最後に、中央に立たれた高橋一生さんから、突然の発表が。
コロナウィルス蔓延の状況を踏まえて、今回の公演をもって最後とし、以降の公演が中止となる決定が、なされた、と。

そうだったのかー
では出演者の方々は、演じておられる時は、これで最後とご存知だったのですね。
どんなにか無念だったことでしょう。

また皆さまと再開できる日が来るための中止だと思っています、とのお言葉に、心が塞がれる思いでした。

いつの日にか、どうか再演されますように。