2月19日、日暮里サニーホールへ。
こちらのホールでは、「日暮里グノシー新書」なるシリーズを手掛けておられ、色々なジャンルから都度、「研究者や表現者をセレクト」されているのだとか。
で、今回は、能楽というジャンルがセレクトされた、ということのようです。
コメンテーターは、大島輝久さんと、田邉恭資さん。
以前に輝久さんがシテをなさった「弱法師」を上映しながら、お二人がトークなさる趣向。
これが、とーっても面白かった!
そして、このイベントの影の主役ともいうべき、広忠さんが、ますます好きになりました。
上映された「弱法師」は、昨年6/1の燦ノ会の時のもので、
出演者は、
俊徳丸:輝久さん
そのパパ:宝生欣哉さん
アイ:三宅近成さん
小鼓:もちろん田邉恭資さん
大鼓:広忠さん
笛:藤田貴寛さん
後見:友枝昭世さん&狩野了一さん
地頭:粟谷能夫さん。
上演中は、ときおり司会者の方からの質問も入りながらの、お二人のトーク。
上演後は、休憩をはさんで、聴講者からの質問(休憩終了までに事務局に提出しておく仕組み)に回答する形式でのトーク。
以下、お二人のトークをメモ的に。
上映中のトークだったか、休憩後のトークだったかは、記憶が入り乱れているので区分せずに書きます。
ちゃんと記録を取っていたわけではないので、多分に私の意訳が入っちゃってますが。
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Q:打ってる時は何を考えていますか?
田邊さん
「この大鼓のヒト(このときスクリーンの田邊さんの横には広忠さんが映ってる)は私の先生なんですが・・・大鼓は広忠先生に習ってたんです
・・・これでよろしゅうございますか?って気持ちになっちゃう。
この先生は強制的なんです、俺について来いよ、と。
これ、けなしてるんではないんですけど。
そうすると、これでよろしゅうございますか?ってなっちゃう。ほんとうは、それではいけないんでしょうけど。」
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映像を見ながら
輝久さん
「このとき(弱法師を舞った当時)のテーマは、全力で脱力する、ということ。弱法師は、強い若い肉体が邪魔になる。」
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映像を見ながら(日想観のシーンのちょい前)
輝久さん
「広忠さんが声を張ってきましたねー
広忠さんが声を張ってくると、ヨシ、こっちも行くぞ、という気持ちになる」
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休憩後の開口一番
輝久さん
「さっき上映してるとき、言いそびれたことがあったんです。
クルイのとき、替の手を打ったでしょう?
申し合わせの時は、普通の打ち方だったのに。
でも、聞いてすぐに分かって、
おっ 打ってきたって分かった。
どうして替の手を打とうと思われたんですか?」」
田邊さん
「替の手は先生(=源次郎さんのこと)は教えてくれない。先生がやったのを聴いて、いいな、と思って後日先生に話を仕向けてみても、
『できそうと思ったらやりなさい』というだけで、教えてはくれない。
こっちは、いつかやりたいと思って引き出しにしまってある。
いいおシテだったので・・・ヨイショしてるわけじゃないですよ・・・おシテがよかったので、打ちたくなった。
お流儀の定期能じゃなかったし、
打っても許されるんじゃないかと思って・・・これは甘えなんですけど、打たせてもらった。」
輝久さん
「そうか― やってくれたんだー よかったな、と思った」
・・・ですってー
もおぉーっ
なんですか?!
この萌えに萌えさせる会話は!
そゆことを、おふたりともトツトツと話されるのも、いい。
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Q:いちばん上手くできた舞台は?
輝久さん。
「自分では分かりにくもの。上手くできたと思ってると人からの反応はそうでもなかったり、
いまいちの出来だったと思った舞台を、良かったと言われたりする。」
田邊さん
「半蔀。喜多の定期能で、輝久さん、代役でシテをなさいましたでしょう?」
輝久さん
「代役ではなかったと思うけど、定期能で半蔀、たぶんやりました」
田邊さん
「あ、では代役はまた別の時だったのかもしれませんが、とにかく輝久さんの半蔀です。
大鼓は、私の先生(=広忠さんのコト)で。
打ってる時は、地獄のように苦しかったんです。
終演後に、あの先生が喫煙所に・・・当時は、あの先生はタバコを吸ってらしたので・・・喫煙所に立たれようとしたところで御挨拶をしたら、『たいへん結構』と言っていただいた。」
輝久さん
「思い出した!
私も、その半蔀のあと、広忠さんに『たいへん結構』って言われた!
では、私もいちばん上手くできた舞台は、そのときの半蔀ということで。
何のことはない、二人とも広忠さんがヨシというの、いちばんの舞台だった、と。
しかし、こんなに広忠さんが話題に出てくるとは、本人も思ってないでしょう。」
帰宅して調べてみたところ、2014/8/24の喜多自主公演能にて、輝久さんシテ・広忠さん大鼓・田邊さん小鼓で半蔀が上演されたようです。
5年半前のことでも、田邊さんはシチュエーションも含めて克明に覚えておられるのですね。
広忠さんは、それほどまでに大いなる存在なんだー
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Q:やりにくい相手はいますか?
輝久さん
「もちろん!
合わない人がいても、地謡とかだと団体競技のようなものだから、何とかなっちゃう。」
田邊さん
「広忠先生が大鼓のときは、圧倒的な恐怖はあるけど・・・万力で絞められるような恐怖、これ大げさに言ってるんじゃなくて、ホントにすごい恐怖があるけど、絶対的な信頼感もあります。
一方、ガタガタ(もちょっと別の言い回しだった)の方が相手だと、もう全然あわない。
こっちも譲らないでコノヤローって打つ。
でも、ある時、もう諦めて、相手にまったく逆らわないで打ったら、終演後に『田邊くん、ありがとう、今日すごくやりやすかった』と言われ、悟るところがあった(これも、もっと別の言い回しだったはず)。それ以来、合わない相手への心持ちが少し変わった。」
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どんなQからの流れだったかは不明
輝久さん
「道成寺の直前に風邪をひいて、5キロ痩せて当日を迎えた。
楽屋に行くと、・・・それこそ広忠さんから『オッ道成寺だから絞って来たね~』と言われた。いや、そうじゃないんですぅ・・ていうね。」
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Q:最も緊張する時は?
輝久さん
「広忠先生に役をお願いしに行く時。」
田邊さん
「師匠(=源次郎さんのコト)に稽古をつけてもらいに行く時。」
このあと田邊さんからは、源次郎さんへの尊敬に満ち満ちた、心打たれるお言葉が多々放たれましたが、
ぜったい内緒と、田邊さんが何度も念押しなさったので、自主規制して記載は控えたいと思います。
日暮里グノシー新書シリーズの次回開催は、2020年夏頃とのことです。