萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「山階会」を観る

10月17日、観世能楽堂へ。

「翁 弓矢立合」
翁が観世清和さん
&観世銕之丞さん
&山階彌右衛門さん。

三番叟が萬斎さん、
千歳が観世三郎太くん、
面箱が裕基くん。

笛が杉信太朗さん、
小鼓頭取が大倉源次郎さん、
脇皷が田邊恭資さん
&大倉伶士郎くん、
大鼓が亀井広忠さん。

狂言後見は深田さん&中村くん。

萬斎さんの直垂は、墨紺地に、鶴亀&松の木&笹の葉。
裕基くんの直垂の地色は、明るめの藍色で、柄は萬斎さんとオソロ。

お二人の直垂は、いずれも差し色に露草色や柿色が使われていて、いまの季節に目にすると、柿色の深い色味が殊に魅力的。

閃光するような三番叟でした!
萬斎さんの中に光が漲りすぎていて、
烏飛ビ(今回は5回、いや6回かも。とにかく通常よりたくさん)くらいでは、エネルギー放出が追い付かないって風。

刻み拍子をいくら踏もうとも、
種おどしを、どんだけ振りかけようとも、追いつかない。

圧力鍋のトップのキャップをちょい緩めると、シューッと噴出して、ヒェッてなる、あの感じ。

そのシューッが激しいだけに煌めきも鮮烈で、もう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、
が渦巻いてました。

あ!
ありがたや~、の語源は、
ありがとう、なのかしら?

このときの私の心境は、ありがとう、よりも、ありがたや~、という方に寧ろ近いかも。
萬斎さまを崇めたてまつりたい、という宗教の領域でありました。

三郎太くんの直垂のクタッとした風合いが素敵。
白地にブルーの大きめ檜垣模様のベースに、鶴亀&笹の葉。

柄ゆきとしては、定番かも知れませんが、生地の質感が、優しく柔らかい情感をもたらしています。

織のお着物を着る人の中には、いかにも新品なパリッとした質感を嫌って、
敢えて敷布団の下にお着物を敷きこんで寝たりして、クチャクチャの使用感が出るようにしてから着用する、と聞いたことがあります。

その観点からすると、最高の使用感に仕上がってる直垂ではないでしょうか。

しかも!
お布団パワーを借りた加速ダメージ仕上げじゃなくて、
もしかしたら、
代々の観世宗家たちが、身体にまとってきたことによるダメージ仕上げなのかも。

ところで、翁が三人並ぶと、観世宗家は翁の装束の着こなしが際立っていました。
言うまでもなく、お三方とも微塵の乱れなく、美しい着付けだったのですが、
観世宗家は、なんというか、こなれている、という感じ。
観世宗家が翁をなさる回数は、おそらく群を抜いているでしょうから、それが顕れるのでしょうか。


舞囃子「羽衣 彩色之伝」
山階弥次さん。
笛が一噌庸二さん、
小鼓が飯田清一さん、
大鼓が亀井忠雄さん、
太鼓が梶谷英樹さん。


仕舞「高砂」角寛次朗さん
仕舞「猩々」観世淳夫さん


狂言「財宝」
祖父が万作さん、
その孫が太一郎くん
&内藤くん
&中村くん。

後見が月崎さん、
幕は最初が裕基くん、
2回目以降は深田さん。

笛が杉信太朗さん、
小鼓が古賀裕己さん、
大鼓が原岡一之さん、
太鼓が梶谷英樹さん。

じいじから孫たちへのプレゼントは、いずれもズレた物ばっかりなのに、孫たちは、こんなもん要らないよ、なんて言わずに、
押し戴いてる。
じいじへの気遣いが溢れていて、優しい孫たちなんですね。

シテへの共演者たちの敬愛の念とが、二重写しに感じられます。
この演目のシテをするっていうのは、リアル長寿者の特権なのかしら?


半能「石橋 大獅子」
白獅子が山階彌右衛門さん、
赤獅子が林本大さん
&木月章行さん
&武田祥照さん。
寂昭法師が大日方寛さん。

笛が杉信太朗さん、
小鼓が観世新九郎さん、
大鼓が再びの広忠さん~!
太鼓が金春惣右衛門さん。

一畳台の上に白獅子と赤獅子が載ると、その間にピタリ広忠さんのお姿。

広忠さんがビシビシと鞭を振るって、両サイドの獅子たちを自在に操っているかの御様子。
くうーっ
かーっこいい~!

主演後、銀座SIXを出て地下通路を銀座駅へ向かって歩いていたら、万作家ご一行に追い越されました。

スーツ姿の裕基くん&太一郎くん&深田さん。

裕基くん&太一郎くんは、オソロっぽい紺のスーツ。
みなさまスーツケースをガラガラと。

何やら楽しげにお話されつつ。
太一郎くんは、ぴょんぴょん跳び跳ねたりして、萬斎センセイの烏飛ビの話題でもされていたのかしら?