1月11日、喜多能楽堂へ。
こちらの公演は、当初は昨年10月13日に予定されていたのですが、台風の影響により、この日に振替となったものです。
最初に、馬場あき子センセによる解説。
「天鼓」なるネーミングのことを、「現代の若い人たちのキラキラネームの中に入れても可笑しくない」と馬場センセ。
馬場センセの推しの詞章をいくつか取り上げて、説明してくださったのが楽しかったです。
特に印象に残ったのが、
「忘れんと思ふ心こそ。忘れぬよりの思ひなれ。」
という詞章について。
「これ、いいですね。ちょっと覚えておいて、恋人にイジワルされた時も使える。娘や??(失念しました)に、何か言われた時にも使えそう。いいですねー」
なーんて仰る。
いやいやいや、使えないでしょ!と、みんなが心中でツッコミを入れてることをお見通しのうえで、悠々とされてる風。
なんてチャーミングな方なんでしょ。
でも、謡を習ってる人どうしなら、ほんとに使えますね。
何やら楽しそ―です!
狂言は、「末廣かり」。
果報者が萬斎さん。太郎冠者が太一郎くん、すっぱが石田さん、後見が月崎さん。
私は中正面のお席だったのですが、とてもドラマチックな景観でした。
目付柱、笛柱、切戸口の面に書かれた竹、と、縦のラインが連なるなかに、フワリと豊かに装束を広げて座る果報者サマ。
退紅色の向鶴菱の模様が下の方に配された、鈍色の素襖裃、紅白段熨斗目。
直線的なラインの中で観る袖は、ひときわ軽やかに、優雅にかんじられました。
「天鼓」
シテは友枝真也さん、ワキは大日方寛さん、アイは竹山さん。
後シテのビジュアルが美しかったです。
冒頭の解説で馬場センセは、
「綺麗に梳かれた前髪から見える、面を観賞してほしい」と。
それを伺ってから観たためか、私は、面に映る前髪の影にフハーッとなりました。
童子の面はツルピカお肌なので、影が美しく投影され。
更に、優しげなカーブを描く額や頬に落ちる影は、そのカーブに沿ったラインを描くことで、優美な造形が際立つのでした。
公演パンフに書かれたご挨拶文によると、この15回目公演をもって、「ひとまず会の活動に区切りを打つことに」なさったとのこと。
ただ、「燦ノ会として集結して舞台に臨むことも、またあるいは・・・」と、思わせぶりな一文も。
楽しみお待ちしております。