萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「第六回 坂口貴信之會」を観る

先日は、昨年末に亡くなった祖母の命日でした。
私は東京都の西端から東端へ移動し、川向こうのお墓へ。

で、電車が川を渡っている時にフト気付いたんだけど、川を越えたってことは川向こうは千葉県なのか、と。
てことは、いま自分は「隅田川」してるんだなー、と。

隅田川」は、西から東へと旅路をたどり、一年前に亡くなった身内の命日に、東京都から川向こうの千葉県のお墓にたどり着く、というお話。

川を越えた先で電車を下り、改札口の駅員さんに「ここって千葉県ですか?」と訊くと、はたして、そのトーリ!でした。

先祖代々のお墓ゆえ以前にも訪ねてるのに、今更ながら気付いたのは、少し前に「隅田川」を観たからでしょうか。

拝見したのは12月16日、観世能楽堂にて。

狂女は坂口貴信さん、その子供・梅若丸が谷本康介くん。
船頭が宝生欣哉さん、旅人が御厨誠吾さん。
大鼓が亀井忠雄さん、小鼓が飯田清一さん、笛が松田弘之さん。

哀れな死をとげた少年の出自が、船頭から語られた時、狂女は瞬時には反応しませんでした。
ややあって、じわーっとお顔を背後の船頭の方へ少し回しただけ。

が、面の瞼に当たるライティングが微妙に変わり、瞼がヒクリとしたかのよう。
はげしい衝撃を、こんな風に表現できるんだーー

この公演で上演された狂言は、船つながり、ということで「舟渡聟」。

船頭&舅が萬斎さん、聟が裕基くん! 姑が太一郎くん。
わー 裕基くんのこのお役、はじめてですー

船頭サマは、小豆色のよろけ縞の水衣、「ま」の腰帯、鶸色の格子の縞熨斗目、辛子色の襟、薄青藤色の青海波の狂言袴を括り袴に。

聟が舟に乗ろうとして、舟がグラグラグラーっと揺れるところ、息ぴったり!
これは、かなりのオニ特訓があったものと思われます!!

それにしても、グラグラの時、船頭サマの身体のしなること、しなること。
鮎がピチピチピチ!と躍りハネるよう。

この船頭サマってば、どうにも船弁慶の船頭サマに見えてしまう。

フツーにゆっくり漕ぐ時も、舟をわざと揺らしてキョーカツする時も。

この揺らしキョーカツの時、なっかなか止めないんですよねー
こんなに長かったっけ?というくらい。
ほーら、まだまだ! という高笑いが響いてなかった?

しかし、そこは身体能力バツグンの裕基くん、背後の船頭サマの動きと見事なまでにリンクした跳ね転げぶりでした。

ここのシーンも、ソートーな特訓があったものと思われます!

さて、場面かわって、髭を剃ることを妻から提案された舅は、髭ブランドの渡し舟として営業してるんだから、そんなことできるかい!とキョヒ。

この謎のプライドが、妙に可愛かったです。


他に、坂口貴信さんとお父さまの信男さんによる舞囃子「小袖曽我」と、観世宗家による舞囃子「葛城 大和舞」がありました。

いずれも大鼓は広忠さん。
「小袖曽我」ではチャコールグレーの袴、「葛城」では紅藤色の袴でした。


次回は、2019年8月31日、「道成寺」とのこと。
アイは、太一郎くんと裕基だそうです!