萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「橘香会」を観る

10月23日、国立能楽堂へ。

能「三輪 白式神神楽」
里の女&三輪明神が加藤眞悟さん、
玄賓僧都が安田登さん、
三輪里人が深田博治さん、
笛が栗林祐輔さん、
小鼓が久田舜一郎さん、
大鼓が亀井広忠さん、
太鼓が小寺真佐人さん。

面の下からのぞく顎がハッとするくらい華奢に見えて、繊細な美しさを感じました。

天岩戸が閉ざされてしまった謂れを語る辺りで、両袖で頭頂を覆う所作が。
この所作、1週間前に観たボレロにも出てきたやつ!
萬斎さんが三輪からボレロに採り入れられたのでしょうか。


狂言「 磁石」
すっぱが萬斎さん、
田舎者が裕基くん、
宿屋が石田さん。
後見が飯田くん、
幕が岡さん。

萬斎さんは、柔らかな雰囲気をまとって登場され、とても悪者には見えません。


オレオレ詐欺よろしく裕基くんの話に合わせていく場面は、緩急が絶妙で。
まるでバランスボールに載って制御しておられるかのよう。

そして、最初はコロリと騙されてしまう裕基くんですが、詐欺だ、と気付いてからのリカバリーが鮮やかです。

磁石の精のフリにも、全く照れがありません。
アガーッと口を開いて構える時なんか、むしろ楽しんでおられるような。
磁石になりきる事も、お父様と対決する事も。

この「アガーッ」の場面は、お二人が光り輝くよう。
このお二人が揃うと、何か特別な空気感になります。

仕舞「邯鄲 アト」
梅若紀彰さん
仕舞「夕顔」
梅若万佐晴さん

紀彰さんのお着物が、白緑色を少し暗くしたような不思議な色。
茫洋とした色味は、まだ何者でもない若者の雰囲気にピッタリ。

能「船弁慶 前後之替 早装束」
静御前&平知盛の霊が梅若久紀さん、
義経は青木健一さん(梅若紀佳さんの代演)、
弁慶は森常好さん、
従者は梅村昌功さん&吉田祐一さん、
船頭は高野和憲さん。

笛は藤田次郎さん、
小鼓は鵜澤洋太郎さん、
大鼓は柿原弘和さん、
太鼓は澤田晃良さん。

静御前は、黒紅色の七宝繋のベースに、雪もち椿。
椿がポインセチアのようにも見えて、クリスマスちっくな趣もあり。

義経の腰帯は、梅若家の紋。
笹竜胆じゃないパターンもあるのですね。
それ以前に、この演目の義経は、子方じゃなくてもいいんだ、という新たな発見!
番組表の義経の欄には、「ツレ」と表記されていました。

ほほーぅ
子方を卒業してしまった凜三くんが、いつかこのお役をなさる可能性もあるのかも。
望みを持って気長に待ちたいと思います。

「MANSAI CREATION BOX ~萬斎のおもちゃ箱~」を観る

10月16日、
石川県立音楽堂コンサートホールへ。
コロナ禍が始まって以来の初の遠征でした。

いきなり最初から萬斎さんがご登場!
しかも、解体新書コーデ。

うわー
そのコーデって、セタパブの特別支給服ではなかったのですねー
芸術監督を退任された時に、セタパブに返還されたものと思い込んでいました。

なんだか嬉しい。
そして、コーデだけでなく、
トークの進行の形態までもが解体新書ちっく。
ここはセタパブなんじゃなかろうか?と錯覚するくらい。

肩書が変わっても、ご自身の中に揺るぎないものをお持ちだからこそ、拠点は関係ないのかもしれませんねー

さて、
配布された番組表から、出演者のページを転記してみます。

ホスト・舞:野村萬斎(石川県立音楽堂邦楽監督)
ゲスト・指揮:井上道義(OEK桂冠指揮官)
管弦楽オーケストラ・アンサンブル金沢
照明:若泉純
音響・映像
:藤田莉佳 前田賢吾

となっていました。
なるほど、演目別に出演者を記載する書式ではないのですね。

プログラムのページも。

グリーグ
ペール・ギュント」第1組曲より
山の魔王の宮殿にて
Op.46-4

萬斎×道義トークセッション 〜萬斎ボレロへのプレリュード〜

武満徹
ワルツ
(映画「他人の顔」〜みっつの映画音楽より)

ヨーゼフ・シュトラウス
ワルツ「天体の音楽」
Op.235

ラヴェル
ボレロ

・・・と書かれています。
このプログラムを見ただけでは、萬斎さんが頭から登場なさるとは、予測できなかったです。

萬斎さんがご自分のおもちゃ箱の中へ案内人として、まず出てこられて私達を招き入れてくださる、という趣向だったのか、と遅ればせながら気づきました。

で、トークですが、お二人のお話がしっかり噛み合ってる様子が気持ち良かったです。
指揮者とは何ぞや、いうご説明もわかりやすい。
 
三番叟とボレロの関わりに話が及んだところで、
では三番叟は実演を交えてご説明しましょう、と仰る!

ん?
じ、じつえん?
三番叟の?

そして、黒門付きの裕基くんと中村くんがご登場。
中村くんがアカペラでお囃子を、裕基くんが三番叟を。

大地を地ならしする型(?)や、烏飛ビの辺りをスポット的に。

三番叟って、ある部分だけをポコッと取り出して演れるものなの?

揉み出しを聴くっていうルーチンからスタートしないと、不可能なのかと思ってた。

それで言うと、終わる時も、ブツッと中断できると思わなかった。
圧力鍋の蓋をいきなり外せないのと同じように。

萬斎さんの微かな合図で
裕基くんがスッと中段されたのを観て、またビックリだったのでした。

1つめのワルツは、萬斎さんパフォーマンスのとコラボ。

解体新書コーデのまま、小さい衝立の後ろにスッと隠れたあと、
うそふきの面、
乙の面、
乙&尉(?)の面、と、面を付け替えていかれる。

うそふきの面の時は、小さめポニーテールつき。
乙&尉(?)の面は、お顔の左右に。
ご自分の直面は扇で隠しておられ、客席に向けた方の面に合わせて、所作をスイッチング。

途中で少しだけ直面も出されたので、直面の人物が面を掛け替えながら3人の役を演じた、という意味でしょうか。

休憩時間になると、舞台後方の壁が一部撤去され、そこから橋がかりが前方の能舞台サイズ台へ設えられました。
そして、舞台と客席の間に、分厚い大きなクッションが搬入されてくる!

ぎゃーっ
ラストは前に飛んでくるバージョンだ!!

そして、ついにボレロの始まりです。

白地に金糸で鳳凰が大きく配された狩衣を衣紋つけに。
狩衣の露は、白と(5朱色のグラデーション。
厚板は、亀丸紋の白地&向鶴菱の朱色地の段替。
朱色に金の唐草の半切、金地に赤青の花紋の腰帯。
烏帽子は無し。

舞の最初の方で、萬斎さんは舞台の際まで出ていらして、下方を見つめられ。
うむ、飛び込むべきマットはアレか、と。

いやいや、もっと万物のコトワリの深淵とか、そのような対象をのぞきこまれていたのでありましょう。

ソロの奏者に順番にスポットが当たっていくのが、とーってもカッコいい。
ゾクゾクしました。

そして、奏者の方の中には、ご自分のパートじゃない時に萬斎さんを目で追っておられる方も。
そーでしょうとも、そーでしょうとも。
つい視線を奪われてしまうのですよねー

面替が美しかった。
袂のシュバッも美しかったー

クライマックスに向かっていくと、"シュバッ"はキレを増し、演奏もどんどん高揚していく。

うあぉーぅ
なんて幸せなんだー
でも終わりが迫ってくるー

クライマックスへのワクワクと、終わらないでの願いはトレードオフなのが困った困った。

エネルギーが集まり過ぎて、それが萬斎さんを最後に飛翔させたかのようでした。

萬斎さんにエネルギーがゴゴゴゴゴーッと集まってる感じは、ほんとに発電とかできそうな感じだったもの。

とにかくカッコいいったらありません!

これを毎月恒例でやってくださらないものでしょうか。
そしたら毎月、金沢に通います。

ところで、井上さんて、萬斎さんに負けず劣らずチャーミングな方。
好奇心でキラキラしておられました。

「野村裕基・初演 釣狐」を観る

10月1日、国立能楽堂へ。

舞囃子高砂
観世三郎太くん

笛が一噌隆之さん
小鼓が大倉源次郎さん
大鼓が広忠さん
太鼓が林雄一郎さん

狂言「末広かり」
果報者が三宅右近さん
太郎冠者が佐藤友彦さん
すっぱが石田幸雄さん

笛が一噌隆之さん
小鼓が大山容子さん
大鼓が亀井洋佑さん
太鼓が林雄一郎さん

仕舞「熊坂」
観世淳夫さん

仕舞「三山」
大槻文蔵さま&大槻裕一くん。

いずれの仕舞も、地頭は観世喜正さんで、他の地謡観世会メンバ。

熊坂ではキレキレの謡。
曲のイメージに似合う!

一転、三山では艶やかやな響き。
優美な舞に似合う〜

私、三山の解説を事前に読んでなくて、勝手に男女のペアの曲なのかと思いこんで臨みました。

が、舞が始まるとどうにも文蔵さまが優美な女性に見える。
かといって裕一くんが男性の役かというと、文蔵さまより更にたおやかなに見える。

むむむー
一体どんな話なのか?
で、帰宅してから公演パンフを読んで謎が解けました。
桂子&桜子という恋仇どうしの女性たちだったのですね。


一調「勧進帳
観世清和さん
大鼓が広忠さん
広忠さんはダークグレーの裃。
さっきの高砂の時はブルー系の裃だったような。

一調「松虫」
観世喜正さん
小鼓が大倉源次郎さん。

狂言「釣狐」

白蔵主&狐が裕基くん、
白蔵主の甥である猟師が萬斎さん。
後見が万作さん&太一郎くん。
後見は紋付長裃です。
万作さんの厳粛な空気間が神々しい。

笛が一噌隆之さん
小鼓が大倉源次郎さん
大鼓が広忠さん
広忠さんは、ライトグレーの裃。

すごい狐でした!
若さの輝きに圧倒されました。

裕基くんは常のお声が低いので、白蔵主の声が甲高くなる時の音の振れ幅が際立ちます。

そして、圧倒的にカッコいい!
シャープな顎と、長い首筋が美しい。

一般的な狂言の役では、頭は胴体と一体化したような動きをする印象がありますが、
この演目では、頭と胴体が別々の方向を向く場面が多く、
そうすると首筋が冴え冴えと浮かびあがり。

首の長さが及ぼす美点がもう一つ。
頭巾をかぶった側面フォルムです。
後頭部の丸みを経て首筋の辺りで緩やかに凹み、襟足で凸になるラインが◎!
この横向きショットのお写真が欲しい〜

後シテの狐もカッコいい。
細身で身長があるためか、しなやかな獣が躍動しているようで。

思えば、数年前に軽井沢の止動方角で裕基くんがなさった馬の役も、これまでの同曲の馬のイメージを覆すカッコよさでした。

そして、萬斎さまの猟師が、これまた拮抗するエネルギーで。
一筋縄ではいかない闇黒を内包した猟師さまでした。

ううう、こんなテゴワイ猟師に意見しようだなんて、無謀過ぎるよぉ、と100%狐さんに肩入れわ1

狂言「髭櫓」
夫が万作さん、
妻が野村又三郎さん
立衆が月崎さん
&高野さん
&竹山さん
&遼太くん
&深田さん
&太一郎くん
注進の者が野村信朗くん。

地謡は、萬斎さんを地頭に、
中村くん&内藤くん&飯田くん&淡朗くん。

後見は、石田さん&裕基くん。
裕基くんは寂とした佇まい。
さっきの狐からのギャップに唸ってしまう。

囃子方は、末広かりと同メンバ。

又三郎さんは、楽しんで演じておられる雰囲気が佳き。

萬斎さんの地謡は、刻むようなシャウトあり、地底にズズズとめり込んでいくよな重低音あり、バリエーション豊か。

 

最初から最後まで超絶贅沢な番組でした。

 

 

 

 

 

「現代の匠たち 藝能と工藝の饗宴2022 茶の湯と匠の文化」を観る

9月24日、観世能楽堂へ。

1.基調講演
千宗屋さん
(この講演の時から、シンポジウムのメンバも登壇されていて、講演を聴講なさいました。)

今年は、千利休生誕から500年にあたるのだとか。

萬斎さんは、見所をキョロキョロしたり、とフリーダム。

2.シンポジウム
千宗屋さん
室瀬和美さん(漆芸家)
萬斎さん
聞き手(進行役)は近藤誠一さん

近藤さんから振られた方が話をする、というスタイル。

萬斎さんは、利休が出てくる映画に出演した事があるんですよー、という話から始まり、
基調講演の中にでてきた話題や、他の登壇者のコメントにもリンクさせたりしつつ、落ち着いたトーンの語り口。

あんなにキョロキョロなさってても、講演はちゃんと聴いてらしたのですね。

4人の方々みなさま和装でした。
萬斎さんは黒紋袴で、安定の麗しさ。

3.仕舞「頼政
大槻文蔵さま
後見は大槻裕一くん。

文蔵さまの紋付の鈍色に、豊かな深みが感じられました。

この次の演目「通円」は、「頼政」のパロディとして知られています。
この度の仕舞の選曲って、狂言の「通円」に合わせての事でしょうか。

だって、通円は今回のテーマに対して、ガッツリ「お茶」繋がりの演目だけど、頼政は、「通円」繋がりでセレクトされたと思われます。

何が嬉しいって、お能の会では、お能ありきで狂言の曲が決められる事が多そうなのに、これはその逆パターンと捉える事ができる点。

4.狂言「通円」
通円が万作さん、
僧が裕基くん、
所の者が遼太くん、
地謡は、萬斎さんを地頭に、
高野さん&中村くん&内藤くん&飯田くん。
後見は深田さん。

笛が栗林祐輔さん、
小鼓が大倉源次郎さん、
大鼓が柿原孝則さん。

萬斎さんのお声の響きに圧倒されました!
裕基くんの僧は、静謐な風情。ワキ方が本業ですか?というくらいにワキ方が板に付いてる。
前日の安宅のアドアイに続き、大役です。


「釣狐」の1週間前は、そんなに重たい役は割り振らないであげよう、とか、そういう配慮は、萬斎先生はいっさいなさらないのですね。

フルマラソン本命試合の直前であっても、ばんばん長距離マラソンの試合を組んでしまうコーチのよう。

萬斎さんは地頭をつとめられつつ、万作さんを熱心に目で追われていました。
狂言では、地謡が座る位置は囃子方の背後のため、萬斎さんと万作さんの間には、囃子方の壁が。

囃子方の死角に万作さんが入ってしまう場面では、萬斎さんは身体を横に傾けて死角を避けようとなさり。

最初は、万作さんのお身体を気遣って見守ったおられるのかな、とも思ったのですが、
1ファンとして片時も目を離したくない、という可能性の方が高い気も。

わかります、わかります、着流しの万作さんの所作って格別に美しいのですよねー

9/24夜からは、仕事に戻って、怒濤の7日間を過ごしました。
何度も、もー降参しようかな、という思いもよぎりましたが、降参しなかったのは、
この公演のエネルギーチャージのおかげです。

この7日間の工程が1日でも遅れると2ヶ月分の遅れが発生する、という瀬戸際を乗り切れました。
ありがとう萬斎さん!

「能を知る会 東京公演」を観る

9月23日、観世能楽堂へ。

講演 「男のドラマ 女の運命~安宅~」 葛西聖司 さん

狂言「今参」
大名が萬斎さん、
太郎冠者が太一郎くん
阪東方の者が中村くん
後見が内藤くん。

冒頭の講演での葛西さんのご説明によると、"今参"とは、"今、参りました"という新参者を意味する呼び名なのだとか。

更に、洒落が出てくるので、とヒントまでだしてくださり。
"判官殿の恋人"っていうのは、"義経の恋人"ですからねー、と。

さて、今参くんは、大名の採用面接を受けますが、最初は緊張して思うように本領発揮できません。


で、その事を一生懸命に訴えるのですが、言い回しが独特で。
「お目が小鷹のようにぐるぐるされるので、緊張してしまい」とかなんとか。

昔は、その比喩で見所の人達ともイメージが共有できてたのかぁ、と新鮮でした。

この演目、前半までは「蚊相撲」と殆ど同じなので、
あれれ今日の演目って「蚊相撲」だったんだっけ?
と観てるうちに心許なくなってくる。

すると、
大名サマまで、"相撲"と口が滑ってしまわれ!
「相撲・・・ではなくて秀句」という感じでススススーッと軌道修正されていましたが。

あるフレーズを口にすると条件反射で、いつも言い慣れたフレーズをツイ続けてしまうって事でしょうか。
どんだけ蚊相撲を演じておられるのかしら?、と感嘆してしまう。

能「安宅 勧進帳 瀧流」

弁慶が中森貫太センセ
子方ちゃん(義経)が富坂耀くん
義経ノ郎等が、
永島充さん
&佐久間二郎さん
&桑田貴志さん
&石井寛人さん
&奥川恒成さん
&中森健之介さん
&遠藤和久さん
義経一行の強力が高野さん

富樫某が森常好さん
その従者が裕基くん。

囃子方は、
広忠さん&
飯田清一さん&
杉信太朗さん。

子方ちゃんのお着物は、山桜が大きく描かれたもの。
きれ〜

裕基くんカッコ良かった!
この日は目元の天然アイシャドウが際立ってて、それが冷徹キャラにピッタリ。

弁慶たちと一触即発か?の場面では、眉間を寄せたお顔に。
うわーっ
お父様にそっくり!
険しいお顔になると魅力倍増する、という家系なのですねー

「七代目杵屋和吉襲名披露公演」を観る

9月19日、国立劇場大劇場へ。
私には未知なる長唄の会だったのですが、大トリに萬斎さんが三番叟を踏まれると知り、これは行かねば、と。

袴三番叟でした!
茄子紺の紋付に、京紫の細縞の袴、京紫&シルバーのウロコ模様の角帯。
袴は、広忠さんブラザーズとオソロ。

この袴は、後日ラジオで萬斎さんが仰ることには、広忠さんからのプレゼントなのだとか。

揉み出しがはじまると、もうフツフツと血が沸き立って、歓喜の念でいっぱいに。

萬斎さまが橋掛り(の想定のエリア)で後ろ向きからの、キッ、という構えをなさると、ヤジルシがビュンッと飛んでくるかのよう。

直垂でなく紋付袴だと、ただでさえシャープな舞が一層際立つような気がしました。

揉之段の後、飯田くんが鬘桶の蓋に入れた鈴を運んでこられ。

鈴を手にされた萬斎さんがスッと静止されると、松の鏡板の背景(幕?)が上がり、雛壇に長唄&三味線の方々がズラリ、と!

その長唄&三味線も込の伴奏で、鈴之段の後半を踏んでくださいました。
面替とかはワープで、刻み拍子とかはアリ。


番組表で数えてみたら、雛壇の方々だけで、35人。
唄14人、三味線21人
圧巻でした!

番組表は、厚み4mmほどもある豪華な冊子。

萬斎さんの三番叟のページのみ夕方ごろ差替えとなったと伺い、帰り際に差替え版をいただきました。
差替え版から下記に転記します。

三響會版
 三番叟

杵屋利光改メ
杵屋和吉

三番叟 野村萬斎
笛 福原寛
笛 竹市学
脇鼓 田中傳次郎
小鼓 田中傳左衛門
大鼓 亀井広忠

そして、ご出演のお名前が並んだ下の欄には、三響會ブラザーズからの祝辞。
タイトルは「新・和吉氏と三響會」。
この祝辞は、司会の葛西アナが、三番叟の直前に読み上げくださいました。

竹市学さんは、揉之段のお笛を担当。
「いちばんすきだなー」と仰る萬斎さんからのたってのご指名でしょうか。

差替え前の番組表には、竹市さんのお名前が見当たらず、あれれラジオの予告と違う、と心配になりましたが、お姿を確認できた時には、ホッといたしました。

今回拝見してみて、自分が如何に三番叟に飢えていたかを実感しました。
極め付きの養分注入となりました。

感謝です。

「第10回 坂口貴信の会」を観る

9月17日、観世能楽堂へ。

お話
リンボウ先生
能楽では、悲壮感を出したい時は、だいたい漢詩を使うんです、とのこと。
パターンとして捉えるという発想が面白いです。
今後はお能漢詩が出てくる度に、リンボウ先生説が当てはまるか検証してみるという楽しみができました。

仕舞
「箙」観世三郎太くん。
「菊慈童」坂口信男さん。

「貰聟」
舅が萬斎さん、
妻が裕基くん、
夫が太一郎くん、
後見が内藤くん。

まず、萬斎さんと裕基くんが本舞台に出てこられて、「居るけど居ない」エリアへ向かわれます。

萬斎さんは、金茶の段熨斗目、水色の襟、鉄紺地に雲丹ちっく模様の長裃。
私がいちばん好きな長裃!
ここぞ、のお役でお召しになるヤツ。

裕基くんは、お花の丸紋が配された白練の縫箔。

なんと美しい親娘。
リアル親子による親娘って、今まで、ありそうで無かったパターンかも。

所作が美しいだけでなく、空間も清らかになる!
お二人は別々の空間に居る設定なので、個々に空間浄化なさっているためか、清らかさも倍増です。

今回のお役の萬斎さんを拝見したのは、初めての気がします。
わからず屋の厳しい舅サマでした。
裕基くんを匿ってたことが太一郎くんにバレた後も、悪びれないトコが、あっぱれ。清々しいくらいでした。

仕舞「遊行柳」
観世清和さん。
なんだかとても良かった。
宗家ご当人に曲の雰囲気がマッチしてたからでしょうか。

「善知鳥」
老人&漁師の亡霊が坂口貴信さん、
漁師の妻が谷本健吾さん、
その子供・千代童が鵜澤虎之介くん(鵜澤洋太郎さんのご子息だそうです)。
旅僧が殿田謙吉さん。
里人が太一郎くん。

囃子方は、一噌隆之さん&飯田清一さん&亀井忠雄さん。

後シテの面が、正面と斜めとで、表情が劇的に違う。
正面アングルも十分に怖しい風貌なんだけど、斜アングルは頬の削げ方というか、えぐれ方が狂気的で。

鳥を獲る場面では、動きが激しくて、こんなお能もあるんだ、とビックリ。
すごい人生を見てしまった。。。という余韻が残りました。
旅僧も、おんなじような気持ちなったのでしょうか。
殿田さんはポーカーフェイスでしたが。