11月11日、横浜能楽堂へ。
3ヶ月ぶりに対面する大好きな鏡板。
最初に黒紋付の貫太センセからご挨拶。
続いて葛西聖司さんの講演「安倍晴明没後1100年企画 夫婦の事件簿ー愚かな男に怖い女ー」
葛西さんが仰ることには、今日のテーマは、泣き寝入りしない女、です、と。
そして、狂言もお能も、登場する女の共通点は、下京の女デアル、と。
そういえば「鈍太朗」でも、夫のお気に入りは、下京に住む本妻ではなく別宅・上京の女。
下京というのは、捨てられる女のイメージがあるのでしょうか。
狂言「因幡堂」
夫が萬斎さん、
妻が高野さん、
後見が飯田くん、
幕が淡朗くん。
萬斎さんは、栗皮色の格子の縞熨斗目、葡萄茶色の襟、枯葉色の変わり市松模様の狂言袴、蒸栗色の地に笹の葉&ふくら雀が焦茶で染め出された肩衣。
もっともっと、とお酒を要求する高野さんの所作が楽しい。
頭から絹をかぶってるのに、手つきだけで、"ならず者"感ありあり。
あれれ、なーんかヤバい妻を貰っちゃったかも、と思いつつも、相手の顔を見ようとする、夫の思考回路って、どうなってるのか?
ヤバそうだけど、めちゃくちゃ美人だったら、酒乱もアリだな、という心理なのでしょうか。
萬斎さんてば、前向きです!
このカップルは、なんだかんだいって、このまま添い遂げそう。
まるで「川上」のパロディのようなお話。
一方は、仏のお告げで離縁を決意し、他方は偽のお告げで再婚を斡旋され。
でも、どっちも、妻が頑として離婚に応じず、これからも共に暮らしていきそう、と思わせてくれます。
能「鉄輪 早鼓之伝」
女&女ノ生霊が貫太センセ、
その、もと夫である男が大日向寛さん。
安倍晴明が森常好さん、
社人が深田博治さん、
囃子方が藤田貴寛さん&飯田清一さん&安福光雄さん&林雄一郎さん。
地謡は、観世喜正さんを地頭に5人編成。
公演冒頭のお話の際、前シテの面にギョッとするかも、と貫太センセも葛西さんも脅すので、怖いもの見たさ、という意味で、私は興味深々。
ところがところが、とても美しい面!
葛西さんが額の皺もオロソシイ、というような事を仰っていたけど、寧ろ美貌を際立たせているような。
皺というよりも、私にはティアラのように感じられ。
上村松園の「焔」を思い出しました。「焔」は「葵上」がベースらしいのですが。
葛西さんも「葵上」に言及され、あちらは六条御息所なので高貴な女性、「鉄輪」は町の女性、という差がある、と仰っていました。
でも、情念の強さは共通するものがあるのでしょうね。
字幕で囃子の説明もしてくださったのが、ありがたかったです。
ほえー
ここの囃子は女の歩みを表してるんだー、と分かると、女が姿を現す前から、おどろおどろしい気分を味わえて。