萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「父子の愛ー石橋山のドラマ〜頼朝の旗揚げ〜」を観る


1月5日、鎌倉芸術館なる場所を始めて訪れました。
大船駅から徒歩10分ほどの、かっこいい建物です。
大船って、鎌倉市だったのか!

最初に、葛西聖司さんによる講演「父子の愛 石橋山のドラマ 大河ドラマに因んで〜頼朝の旗揚げ〜」。

葛西さんのご説明によると、今回のお能「七騎落」に登場する岡崎義実の子供・真田ヨイチが、子供の頃から親しんでいたのが、文蔵である、と。

今回の狂言お能は、石橋山の合戦場つながり、という所までは想定内でしたが、真田ヨイチつながりだったのですね。

狂言「文蔵」
主が萬斎さん、
太郎冠者が石田幸雄さん、
後見が飯田くん。

萬斎さんは、鉛色の襟、同色の熨斗目、支子色の毘沙門亀甲の長裃。
新年らしい華やかな発色に、気持ちも晴れやかになります!
扇はシルバー地に藍鉄色の飛雲。

萬斎さんが片足を強く踏むと、大きく
床が鳴る。
気持ちイイ音!
今回の能舞台は、ホールの舞台に、10センチくらい嵩上げして設置されたもの。

葛西さんからの事前インプットのおかげで、語りの終盤に「真田」のワードが出てくるのが、聞き取れました!
何とは無しに嬉しくなります。

手酷いところを食ろうたな、という主のコメントが楽しい〜

いや、ホント、主が語ってる内容って、なかなかハードなのですよねー
文字通り、命懸けの戦いを語るのですから。

でも、残虐っていうより、ドキドキハラハラのスポーツ実況のよう。
しかも、戦闘時の扮装まで細やかに実況してくれる。
衣装ディティール込みのスポーツ実況というと、フィギュアスケートが近いかも。
新年早々、大好きな演目が聴けて幸せでした。

能「七騎落」
土肥実平(シテ)が観世喜正さん、
その子供である土肥遠平(子方ちゃん)は富坂唐くん。
小学3年生だそうです。
子方ちゃんが演じるけど、16歳くらいの設定だと思ってください、と冒頭の講演の中で葛西さんからご説明あり。

曲目に出てくる"七騎"というのは、
現状8騎なんだけど、それを縮小して7騎にせよ、という頼朝の指令に由来しているようです。

で、その8騎のメンバなんだけど、
まず、前記のシテ&子方ちゃん、
そして、頼朝(中森健之介さん)
岡崎義実(中所宜夫さん)。

ここまでの登場人物は個々にセリフあり。
残りの4人は、同時発声のセリフのみではあっても、ちゃんと名前が付いており。

土佐坊(小島英明さん)、
田代信綱(佐久間二郎さん)、
新開次郎(奥川恒成さん)、
土屋三郎(石井寛人さん)。

以上が、8騎のメンバ。

頼朝一行の舟を追ってきた和田義盛(ワキ)が舘田善博さん。
船頭(アイ)が裕基くん。

笛が杉信太朗さん、
小鼓が飯田清一さん、
大鼓が亀井広忠さん、
地謡は、中森貫太センセを地頭に、5人編成。

囃子方地謡も後見も紋付裃。

前場では、岡崎義実の台詞の中に、真田ヨイチがしっかり登場!
我が子・ヨイチが石橋山の合戦で戦死したのだ、という発言があり。
葛西さんのお陰で、しっかり繋がりを検証できました!

ドラマチックなハッピーエンドでしたが、そもそも頼朝が我儘を言い出さなければ済んだのにな、という気もしてしまいます。
他の7人は、そんな事は微塵も考えなかったのでしょうね。

そんなにも主君は絶対的な存在なのか?と、理不尽な気もしますが、
絶対的な存在たらんとするプレッシャーも、はかり知れません。

それと、裕基くんの船頭さん、キリリと俊敏でした。
肩衣を片脱ぎにする所作と、それをシュッと元通りに整える所作が美しい。
目が洗われるよう、とは、このことです!!