萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「第33回 朋之会」を観る

12月7日、観世能楽堂へ。
最初に、武田宗典さんによるお話。

「清経」の解説では、この演目にゆかりの宇佐神宮のお話が。
この神社では年1回、お能が奉納されているそうなのですが、
「清経」だけはやっちゃいけないことになっているのだとか。

また、清経の妻は、座り続けるのが大変なんですよ、とも。
右膝を着いて、その足裏の上へ左足の甲を乗せる、その姿勢のまま1時間も動かずにいるそうで。

また、「三輪」の解説では、宗典さんがお好きな場面をお教えくださり。
玄賓が里の女を見送る時の無音のマがとてもお好きなのだとか。

更に、衣を如何に手際よく、杉の木に掛けるか、という後見の大変さがあるんです、とも。

そうなんだ!
そこを注目して観てみよう、という気にさせてくださるのが、上手なんですよねー

「熊坂」の解説では、シテが扱う長刀は、身長に合わせてマイサイズの物を使うのだ、と。

今回シテをなさる小早川泰輝さんは長身なので、長刀も長くなり、すごい迫力になりますよ、とのお話に、ガゼン興味が高まります。

解説に続いて、「清経」。
清経は武田崇史さん、妻が武田祥照さん。
清経の家臣・淡津三郎が村瀬慧さん。
囃子方が、小野寺竜一さん&田邊恭資さん&柿原光博さん。

清経が入水したシーンが美しかった。目付柱近くで着水した後、流されながら沈んでいきました。

狂言「柿山伏」
山伏が萬斎さん、何某が裕基くん。
今回のエンディングのパターンは、初見でした。
なんと山伏が某にオンブを迫る!という。

よりによって何某をなさるのが裕基くんの時に、そのパターンをセレクトする?
いくら萬斎さんがスレンダーとはいえ、ご一門のなかでも特に細い裕基くんに、おぶえるもんなのぉ?

まず、膝を着いた裕基くんの背に、がっつりパパがオブさります。
裕基くんは果敢に立ち上がろうとしますが、1stトライは立ち上がれず。

ゆ、ゆうきくん、がんばってー

2ndトライは、ぷるぷる震えつつも、何とか立ち上がったー!

さて、初見の演出ゆえに、私はこの後の展開が分からないけど、まさか、このまま幕まで行くつもりじゃないよね?

観世能楽堂の橋掛かりが、いくら短いからって、今いるソコ(キザハシ近く)から橋掛かりの取っつき迄だって、行けそうに思えない。

少しでも身動きしたら、バランスが崩れて、親子して総倒れになりそうだ。

が、なんとか数センチほど、歩を進める裕基くん。
そして、山伏を振り落とす、とい
う展開となりました。

最後までオンブするって演出じゃなかったのね。安心したよー

いやホントは、もう何歩か歩いてから振り落とすのがノーマルなのかもしれないけど、
むしろ数センチでも移動したことを讃えたい。

裕基くんも必死だったでしょうが、その背中のパパもヒヤヒヤだったことでしょう。

観てる私も冷や汗が出ました。
でも終わってみれば、レアな演出を、他でもない萬斎さん・裕基くんコンビで観れてラッキーでした。

いつもの、あのエンディングのパターンでいいよね、とならない、攻めてる親子に感謝です。

「三輪 二段神楽」
三輪明神が武田宗和さん、玄賓僧都が森常好さん。里人が石田さん。
囃子方松田弘之さん&鵜澤洋太郎さん&柿原弘和さん&小寺佐七
さん。

後シテの面が妖艶で、とても好きな顔立ちでした。
しかし同行の友人は、後シテの面が可愛らしかった、と言う。
隣どうしの席だったので、殆ど同じアングルで観てたはずなのに、受けとる印象がこうも変わるって不思議です。

「熊坂」
熊坂長範が小早川泰輝さん、旅僧が野口能弘さん、里人が太一郎くん、囃子方が藤田次郎さん&曽和伊喜夫さん&亀井洋佑さん&加藤洋輝さん。

めっちゃカッコいいーー
宗典さんの予告どおり、というか、予告を上回るダイナミックさ。

しかも、この秋に他流だけど「烏帽子折」を観た記憶が新しい内だったので、「烏帽子折」のスピンオフだー、というのもあり、楽しかったです。
それとも、「熊坂」のスピンオフが「烏帽子折」なのかな?
いずれにしても、別々の作品どうしの世界がつながっていくのが面白いなー、と。

この朋之会は、パンフも解説も丁寧で、いつも公演の中身も充実してるし、しかも、そんなに高くないので、とってもお得感があります。

次回は、2月11日だそうです。
お能は3番ありますが、個人的には武田宗典さんの「自然居士」が気になります。
宗典さんが若きスーパーヒーローをなさるって、ぴったり過ぎでしょ。
しかもワキが大日方寛さん。酷薄なワルモン役が、実はお似合いになるのですよーー