萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「未来につながる伝統ー能公演ー」を観る

9月4日、宝生能楽堂へ。

スペシャトーク
佐野登さん
&会津の大川荘の社長さん
&佐賀の矢野酒造の会長さん。
司会は本田勝之助さん。

佐野登さん以外の御三方は、佐野さんの素人のお弟子さんという御関係とのこと。

矢野酒造が所在する地域には、趣味が高じて自分んチに能楽堂を作っちゃった方がおられるそうで。

で、その能楽堂で「猩々」を来春に上演しよう、という事になり、会長さんは地謡としてご出演すべく、お稽古中だとか。
「最近は車の中でも、ずっと猩々を流してるんですよー」とイキイキおはなしされ。

「七人猩々」の世界(演目解説)
解説で佐野登さん再登場。
案内人が小山龍介さん(京都芸術大学非常勤講師)。

赤頭の素材として使われるヤクの毛のお話も。
ヤクの毛があまりに貴重だったので、江戸城開城(?)の時には入城した人達は、まず最初に大量にストックされていたヤクの毛を確保したのですって。

何らかの機密文書でもなく、武器でもなく、
食糧でもなく?
なんだか嬉しくなります!

舞囃子「枕慈童」
宝生和英さん
笛が一噌幸弘さん、
小鼓が観世新九郎さん、
大鼓が柿原弘和さん、
太鼓が桜井均さん。

和英さんのお着物は、白緑色で、生地の風合がすてき。
柔らか物っぽくなくて、紋も見当たらず、織のお着物のような質感。
袴も同系色のワンカラーコーデで、リネンのワンピースを纏ったよう。
深い山奥に湧き出でるお酒のイメージに、ぴったりなコーデでした。

狂言「寝音曲」
太郎冠者が萬斎さん、
主が高野さん、
後見が中村くん。

しぶしぶながら太郎冠者が謡う一曲目は、「大原木」。
真剣なお顔が麗しい〜
そして、なんと美しい響き!
日常の気掛かりが、全て遥か彼方に吹っ飛ばされていきます。
一曲目の時は、主が静かに膝枕の役目に徹してくれてるお陰で、「大原木」単独を一つの演目として味わいつくしました。

二曲目は、「玉の段」。
謡の良し悪しのチェンジが鮮やか。
特に、起きた姿勢から寝そべり姿勢に遷移していく切り替わりが最高でした。

身体が下方へ倒れ掛かっていく視覚的なダウンと、
お声のトーンがズンと重低音になる聴覚的なダウンが重なり、
まさに謡の詞章のごとく深い海底へ、萬斎さんが誘ってくださる感覚に。

姿勢と謡の良し悪しの関係はトレードオフっていう設定が逆転してる、と気付いた高野さんの反応も楽しかった。
「ぬ?」という表情も、フリーズするマも。
で、もういっぺん再現するか検証してみた後に、再び「ぬ?」と。これで可笑しさが加速しました!

能「七人猩々」
シテの猩々が佐野登さん、
ツレ(残り6人の猩々)が、
小倉伸二郎さん
&和久荘太郎さん
&辰巳大二郎さん
&當山淳司さん
&金森良充さん
&辰巳和磨さん。
ワキ(高風)が殿田謙吉さん。
囃子方舞囃子と同メンバ。
地頭に辰巳満次郎さん。

殿田さん扮する高風は、お酒売りの青年という設定なんだけど、ふと気が緩むと僧に見えてしまう。

「殿田さん=僧」という図式が私の中では出来あがっちゃってる為、あれはお酒売りの青年、と何度も自分に言い聞かせても、ふと油断すると僧という認識に舞い戻ってしまい。

シテは朱色地に、金糸の立涌の半切り、扇は波飛沫。
両脇のツレは、朱色地に金糸の青海波の半切、扇も同色の青海波。

一畳台の側面は、銀糸の波飛沫の模様。
装束や扇だけじゃなくて、一畳台まで、これでもか、の波づくしで、波間に舞う猩々の風情を楽しめました。