3月9日、横浜能楽堂へ。
最初に中森貫太センセによる解説。
今回の隅田川の子方ちゃんは、貫太センセのお孫さんで、この度が初舞台とのこと。
まだ3際にもなっていなくて、彼のコンディション次第では子方が登場しないかもしれません、と!
お稽古してみて、さすがにデビューさせるのが早すぎたか、と思われたそうで。
さらに仰る事には、子方ちゃんが出てきたとしても、黒頭を付けていないかも、と。
黒頭の装着感がご不快の由。
はい!
心得ましてございます!
何が起こっても受け止めます〜、と心中に決意して臨みました。
狂言「名取川」
僧が萬斎さん、
名取りの何某が高野さん。
地謡は、太一郎くんを地頭に、内藤くん&裕基くん&飯田くん。
後見が中村くん。
袂に書かれた名前が流されてしまう、という発想が粋。当の本人に粋の自覚がないトコも良い。
シュールなだけでなく、雅やか味わいがあります。
川面をヒラヒラと流れてゆく文字が目に浮かぶよう。
書かれていた文字は、漢字じゃなくて平仮名だったに違いない。
流されながら文字の形がほどけていく様子も、平仮名だと殊に風流なんじゃないかと。
萬斎さんの謡をいろんなパターンで堪能しました。
自分の名前を連呼し続けるだけなのに、華やかなショーのようになっちゃうってどゆこと?
節と舞と、お姿の美しさの成せる技なのでしょうか。
背後にズラリと並ぶ若手くんたちが、これまた颯爽と清々しい。
終演後、立ち上がる直前の太一郎くんは笑いをこらえておられる様子。
なぜか口元がニマニマされてました。
能「隅田川」
狂女が中森貫太さん、
子方ちゃん(梅若丸)が中森陽大くん。
渡守が殿田謙吉さん、
旅人が則久英志さん。
笛が竹市学さん、
小鼓が幸正昭さん、
大鼓が亀井広忠さん。
渡守がすてき。
淡々としたなかに、狂女への労わりの心根が垣間見えて。
当時は似たような事がけっこうあって、もしかしたら渡守はそういう不幸を幾度も見聞きしてきたのかも。
そんななかで、子供の最後を母親に伝えられて、お墓の場所も伝えることが出来て、渡守にとっては救いのある事案だったのかなぁ、と感じました。
さて、1番心配だった子方ちゃんですが、無事に登場してくれました。
黒頭もしっかり装着して。
子方ちゃんよ、
登場を受諾してくれてありがとう。
黒頭の不快感を我慢してくれてありがとう。
南無阿弥陀も唱えてくれてありがとう。
ハラハラさせてくれた事も含めてありがとう。
思い出に残る公演になりました。