萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「能を知る会 横浜公演」を観る

3月9日、横浜能楽堂へ。
最初に中森貫太センセによる解説。

今回の隅田川の子方ちゃんは、貫太センセのお孫さんで、この度が初舞台とのこと。
まだ3際にもなっていなくて、彼のコンディション次第では子方が登場しないかもしれません、と!

お稽古してみて、さすがにデビューさせるのが早すぎたか、と思われたそうで。

さらに仰る事には、子方ちゃんが出てきたとしても、黒頭を付けていないかも、と。
黒頭の装着感がご不快の由。

はい!
心得ましてございます!
何が起こっても受け止めます〜、と心中に決意して臨みました。

狂言名取川
僧が萬斎さん、
名取りの何某が高野さん。

地謡は、太一郎くんを地頭に、内藤くん&裕基くん&飯田くん。
後見が中村くん。

袂に書かれた名前が流されてしまう、という発想が粋。当の本人に粋の自覚がないトコも良い。


シュールなだけでなく、雅やか味わいがあります。
川面をヒラヒラと流れてゆく文字が目に浮かぶよう。

書かれていた文字は、漢字じゃなくて平仮名だったに違いない。
流されながら文字の形がほどけていく様子も、平仮名だと殊に風流なんじゃないかと。

萬斎さんの謡をいろんなパターンで堪能しました。
自分の名前を連呼し続けるだけなのに、華やかなショーのようになっちゃうってどゆこと?
節と舞と、お姿の美しさの成せる技なのでしょうか。

背後にズラリと並ぶ若手くんたちが、これまた颯爽と清々しい。
終演後、立ち上がる直前の太一郎くんは笑いをこらえておられる様子。
なぜか口元がニマニマされてました。

能「隅田川
狂女が中森貫太さん、
子方ちゃん(梅若丸)が中森陽大くん。
渡守が殿田謙吉さん、
旅人が則久英志さん。
笛が竹市学さん、
小鼓が幸正昭さん、
大鼓が亀井広忠さん。

渡守がすてき。
淡々としたなかに、狂女への労わりの心根が垣間見えて。

当時は似たような事がけっこうあって、もしかしたら渡守はそういう不幸を幾度も見聞きしてきたのかも。

そんななかで、子供の最後を母親に伝えられて、お墓の場所も伝えることが出来て、渡守にとっては救いのある事案だったのかなぁ、と感じました。

さて、1番心配だった子方ちゃんですが、無事に登場してくれました。
黒頭もしっかり装着して。

子方ちゃんよ、

登場を受諾してくれてありがとう。
黒頭の不快感を我慢してくれてありがとう。
南無阿弥陀も唱えてくれてありがとう。
ハラハラさせてくれた事も含めてありがとう。
思い出に残る公演になりました。