12月18日、 武蔵野大学の雪頂講堂へ。
三鷹駅からバスで行ったのですが、ギュウギュウ詰めの車中で金子直樹センセをお見かけしました。
講堂に入って、最初にアレッと思ったのが、鏡板の松。
梅若能楽学院会館の鏡板と松の形が同じ!
タッチというか塗り方は違うけど、形がソックリ。
こちらの講堂には、以前にも数回お邪魔したことありますが、今まで気付きませんでした。
さて、最初に、三浦裕子先生による解説。
この講堂のお席は530席とのことで、落選者1500人とのこと。
今回は、小林責先生の追悼公演でもあり、鑑賞補助ツールに関する研究目的も兼ねている、とのご説明。
そうなのです、入場時に、音声ガイド用イヤホン、もしくは英語字幕用のタブレットが全員に手渡されていたのです。
で、鑑賞補助ツールですが、そのことを三浦先生が万作さんに相談されたところ、「補助ツールを使うのにふさわしい狂言を選びましょう」
と、即座に、柔軟に対応してくださったのですって。
すなわち、難しい言葉が出てくる演目をセレクトされたとのこと。
万作さん!
川上セレクトありがとうございます!
このラインナップは、そのような理由によるものだったのですねー
解説後に5分くらい「準備」時間があり、その時間帯から音声ガイドでは事前解説がスタート。
最初の演目は「川上」。
夫が万作さん、妻が萬斎さん、後見は月崎さん。
萬斎さんは、白地に華丸文の縫箔、橙色の襟、同色に金糸いりの帯。
別れ話を毅然と撥ね付ける妻のうつくしさ!
憤れば憤るほど、うつくしく光り輝きます。
萬斎さんがなさる女性って、憤りのエネルギーが発光強度に比例するシクミなのかも。
夫が再び盲目に戻ったあとに、夫に掛ける言葉は、短いながら深い思いが満ちていました。
キリリと白い縫箔からチラ見えするサーモンピンクの八掛は、優しく繊細な心根の発露のよう。
そして謡が!セッピン!!でしたー
休憩を挟んで「文荷」。
こちらも休憩時間の終盤5分くらいから事前解説が。
「恋重荷」の中でパロディにされてる箇所の謡がしっかり紹介されるのも嬉しい。
太郎冠者が石田幸雄さん、次郎冠者が深田さん、主人が竹山さん、後見は石田淡朗さん。
”小人狂い”は、音声ガイドでは何と訳されるのかな、と待機していたところ、”少年愛”と訳されていました。
音声ガイドは、極力セリフと被らないように考慮されていて、私には好印象。
今回、太郎&次郎冠者が奪い合ってラブレターが破けちゃうシーンでは、とても見事に2等分に裂けました。
なので、扇でパタパタすると、どちらの紙片も気持ちよくフワフワと。
ここで紙片がピターっと床に貼り付いたままだと、ハラハラしちゃうんですよねー
番組表には、万作さんから寄せられた小林責先生へのお言葉が。
その締めくくりの一文がサラリとしていながらも重く、胸に迫るものがありました。
今回の私のお席は、広ーい講堂の後ろから2列めでしたが、
傾斜が大きいので、能舞台を眺めおろすような感じ。
狂言は人間を俯瞰する視点で描かれている、というようなことを以前に何かで耳にしたことがあるけど、
今回はお席のポジションとも相まって、俯瞰の視線が実感として感じられました。
私が抱えている悩み・・・というのもおこがましい気がしてきたから、困り事とでも言い換えるとして、
そんなもなーぁ、些末なことに過ぎないんじゃないの?って思えてしまいます。