萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「開館40周年記念事業 狂言の世界」を観る

12月9日、サンシティ越谷市民ホールへ。

今年は休日開催としてくださったお陰で、数年ぶりに伺うことができました。

最初に萬斎さんによる解説。

「福の神」の解説では、

昔は、数えだったから、年が変わると、みんな一斉に年齢がイッコ繰り上がる、とのご説明に目からウロコ。

この演目、過去に観たときは、漫然と「トシをとりにいく」を聞き流してました!

私は「年越す」としか念頭になかったので、「年をとる」なのかと思ってた。

が、もしかして「歳をとる」だったってこと?


今回は、狂言デビューの友人が一緒だったので、解説を丁寧にしてくださって嬉しかったです。

更に、お囃子のご説明まで。拍が伸び縮みすることにも言及され。


しかも、解説の最後には、「この辺りの者でござる」をリピートアフタミーで、と。

ファーストトライの出来がイマイチで、

「ちゃんと聴いてくださぁい。2音めを張るんですよ」と。

わーい! 叱られたー

セカンドトライでオッケいただけました。
わーい! 及第してもらった―


解説は25分間でした。


解説につづいて、素囃子「高砂 八段之舞」。

大鼓が佃良太郎さん、小鼓が森澤勇司さん、太鼓が大川典良さん、笛が槻宅聡さん。

次に「福の神」。

万作さんが福の神、参詣人が裕基くん&飯田くん。

地謡が、太一郎くん&内藤くん&月崎さん&石田淡朗さん、後見が岡さん。

裕基くんは、群青色に白抜きの立涌の長裃、ペールグリーン&クリーム色&ライトグレーの段熨斗目、水色の襟。

裕基くんは、毎年、飯田くんと一緒に年越しの参詣に行ってるらしく、今年も行こ!と飯田くんチを訪ねます。

年越しの瞬間を、親しい友達と分かち合うってだけでもテンションあがるのに、
お誕生日も同時に祝いあえるんだー

・・・と、さきほどの解説が、ここで思い返されます。

そんなら、昔の人たちのお正月って、とんでもなく大きなイベントだったんでしょうね。


長裃の裕基くんて、ほーんと姿がうつくしい!
道行の背筋も。
豆をエアで掴む所作も。
豆を放つ所作も。


9月に他流の同曲を観たときも思ったけど、この演目ってお能っぽい。

参詣人コンビの装束を、水衣に無地熨斗目に脳内チェンジしてみると、もはやワキ&ワキツレです。

そして万作さん!
可愛らしさのなかに厳かな気品があり、まさにシテ方のよう。

面も、ニッカリ100%スマイルじゃないタイプで、万作さんの端正な雰囲気にピッタリでした。


休憩を挟んで「鬮罪人」。

太郎冠者は萬斎さん、主が深田さん、立衆は、石田幸雄さん&高野さん&太一郎くん&内藤くん&中村くん&岡さん。

後見は月崎さん&石田淡朗さん。


前場の太郎冠者サマは、レモンイエローにテールグリーンの格子の縞熨斗目、三匹のウサギがバックに染め抜かれテールグリーンの肩衣、同色の襟、
並び唐団扇の紋の腰帯。
(12/16追記:もしかしたら並び矢の紋だっのかも。今日は裕基くんが並び矢の紋の腰帯をつけておられ、それを目にして、あれっと不安になりました。)

太郎冠者サマは、お祭りの企画に参加したくてしょうがないんだけど、ちょっと口を挟むと、主からは、でしゃばるな、と
扇でパシッと打たれちゃいます。

打たれた太郎冠者サマは、後ろ様にコテッと尻餅をつき、片手が「びっくり」風にあがる。

なーんてカワイイ!

カワイイんだけど、フォルムとしてバランスが取れていてうつくしい。

オブジェにしたいくらい。

何度もパシッと打たれ、そのたびに、このポーズを寸部違いなく繰り返してくださる!


太郎冠者サマのアイデアは、主には却下されますが、石田さんが肩入れしてくださり、めでたく採用に。

もー 石田さてば、なんていい人!

太郎冠者サマのやりたいことを何おとか実現させてあげたい!とヤキモキしてたので、いつも以上に石田さんが仏様に見えましたよぉ


鬼のこしらえをするために太郎冠者サマが中入りしてからが、ぐーんとお能チックに。

後場の太郎冠者サマは、肩衣を外して毘沙門亀甲の段替の厚板をアウターっぽく着付けて、武悪の面を。

杖の音を響かせて運びも重々しく。


悪の面を跳ね上げるようにして直面をのぞかせて、無音で哄笑するとこ、とーっても魅力的でした。

三番叟の鈴之段の時って、面の下では、こういうお顔をなさってるんだろう、と私はいつも思ってます。

そう思い込みはじめてから数年経って、直面での鈴之段を拝見する機会にめぐまれ、私の思い込みは違ってた、と判明したんだけど、

なぜか、それ以降も鈴之段のときは、つい、この哄笑フェイスを妄想しちゃうんですよねー


常日頃、ままならない鬱屈をかかえて奉公してるであろう太郎冠者サマがハジける、というか暴走する様は、爽快でした。

このお役をなさる萬斎さんて、特別にチャーミングです!

「鬼の役をやることでカタルシスを感じる太郎冠者」という役をやることで、
萬斎さんもカタルシスを感じておられのかも。

で、それがチャーミングさを増強してるのかしらねー


狂言デビューの友人も楽しそうで、私も二重に嬉しかったです。

友人は昔、オーケストラをで打楽器を担当してたそうで、お囃子にも興味をそそられた模様。

てことで、今度はお能デビューが決まりました。

お囃子つき狂言、かつ、萬斎さんによるお囃子の解説つき公演、の効果が早速あらわれました!