12月2日、国立能楽堂へ。
最初に、松澤徹さん(早稲田大学高等学院の歴史の先生だそうです)による解説。
「鉢木」のシテ常世(つねよ)は実在の人物だったか否か、というお話のなかで、
「これは無かったというのは、とても難しい」とのお言葉が印象的でした。
あったことを証明するほうが簡単で、1つでも証拠を見つけられればOKだけど、
無かった、と言うためには、あらゆる文献を調べて、どれにも出てこないことを示さなくちゃいけないからだ、と。
数学のように、真なり、とか、偽なり、がスッパリ導出できるようなモンではないトコがロマンですねー
今回の狂言は「木六駄」。
お能が「鉢木」なので、大雪つながりということでしょうか。
太郎冠者が萬斎さん、主が裕基くん、茶屋が高野さん、伯父が万作さん。
裕基くんは、群青色の松皮菱の長裃に、同系色の段熨斗目。
清新な色調が、スッキリと細身のお姿に、とーっても映えます!
この大曲にふさわしく、格調高い佇まい。
どー考えたってオニな任務を命じる時も、まるで簡単なことかのように、サラリと。
うんうん、お偉いさんて、そゆ人、多いよね
自分でやったことないから言えるんだよねー
太郎冠者サマは、青朽葉色の地に紅葉と笠が配された肩衣、グレーの格子の縞熨斗目、紺の襟、常盤色の狂言袴、竜胆の腰帯。
主に飴をちらつかされて、太郎冠者は、オニの任務を浮けてしまう。
で、身支度のために太郎冠者サマが中入り(?)したあと、茶屋が出てきます。
吹きすさぶ大雪の世界を作っておくのは、茶屋の高野さんの任務なのですね。
防寒対策して出てきた太郎冠者サマは、こげ茶のよろけ縞の水衣(編綴?)、鶸色の格子の縞熨斗目、鉄紺色の網目模様の狂言袴の括り袴、まの字(?)の腰帯。
12頭の牛たちが好き勝手に動き回るので、太郎冠者サマはカナリ苦労なさってました。
茶屋でお酒を飲みたくなるのは、そりゃ無理もない。
酒宴の謡が素敵でした。
酩酊状態になってからは、フラッフラな様がダンスのようにも見え。
身体は揺れまくってるんだけど、ぐにゃぐにゃではないのですよね。
醜態がうつくしく見える、という不思議。
さて、太郎冠者サマに負けず劣らず、大雪に手こずる旅僧が登場するのが「鉢木」。
旅僧を泊めてあげる常世が佐久間二郎さん、その妻が永島充さん。
旅僧(実は最明寺時頼)が森常好さん。時頼の家来が野口能弘さん。
時頼の下人が太一郎くん、早打が飯田くん。
笛が松田弘之さん、小鼓が大山容子さん、大鼓が広忠さん。
地頭は観世喜正さん、後見は、観世喜之さん&奥川恒治さん。
前シテの素襖裃は、黒地にドットの斜めチェック風。
観世喜正さんの写真集に記載の説明によると、これは「浜松刺」なる模様だそうで、観世流では、この曲の専用装束なのだとか。
同写真集によると、後シテの腰帯の釘抜き紋も、決まりなのですって。
中入りする時、囃子が、さーぁ そろそろクライマックス!と煽ってくるので、わくわくが膨張していきます。
時頼が自分の身上を明かすところからエンディングまでは、一気にグイーン、と急加速で展開するんですね。
水戸黄門みたいに、盛り上がりドコロは、しっかりコッテリ、とかは、やらないものなんだー
その潔さ、好きです!