萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「第84回 野村狂言座」を観る

12月7日、自分にとっては今年ラストの宝生能楽堂へ。

最初に萬斎さんによる解説。

今回は、1つめの演目「棒縛」が大蔵流のゲスト公演とのことで、和泉流との違いをご説明くださいました。

大蔵流では、棒に縛られる方が次郎冠者で、後ろ手に縛られる方が太郎冠者なんだそうで。

大蔵流では、最初に登場する方を太郎冠者とする、とされているから、とのこと。
とてもスッキリしたルールです!


「楽阿弥」の解説では、竹を「タメル」の説明をなさる際に、曲げるってことですよー、

と、ここで右膝をあげ、両手でエアーの棒の両端を持って膝でへし曲げるしぐさをなさる。

とっても自然に、スっと。

実際に普段から、そーいう曲げ方をやってる人でないと、スッと膝は上がらないんでは?

ほえー 萬斎さんてば、プライベートでそんな風にして、世間一般のオトーサンみたいなことなさるのかしら?

ちょっと想像つきません。


楽阿弥が尺八を吹き死にした、というのを現代の何かに例えようと、考え込まれたあげく、

一噌幸弘さんのお話に。

坂田明さんに、ウルサイから止めろ、と言われるくらい、始終、吹いていたんですね。吹いてないと死んじゃうんじゃないかってくらい。
ま、彼も大人になりましたが。」ですってー

ぷくくくくく
まるで御自分のほうが年長者のような口ぶり。

たしかに精神年齢では勝っておられるように見えますけども。

「鈍太郎」の解説では、「オトコのバカな願望だと思って、女性のお客様はどうぞ広い心でご覧になってください」なーんて仰ってました。

いえいえ、この演目で、不快な気持ちになったこと、いっぺんも無いですよぉ

鈍太郎が愛嬌にあふれてるからでしょうかね−


解説につづいて「棒縛」。

次郎冠者(←シテです)が大蔵彌太郎さん、主が大蔵彌右衛門さん、太郎冠者が大蔵基誠さん。

後ろ手に縛られた手で蔓桶のフタを持つ、というアイデアは、大蔵流では、後ろ手に縛られた本人からの発案になってました。

相方になんとかして飲ませてあげたい、というコンビ愛が強いのが大蔵流なんですねー


休憩のあとに、素囃子「急ノ舞」があり、そのまま囃子方が舞台に残られ、「楽阿弥」のはじまりー

楽阿弥の霊(シテ)が万作さん、旅の僧(ワキ)が萬斎さん、所の者(アイ)が裕基くん。 

地頭は、中村くんを地頭に、内藤くん&太一郎くん&飯田くん&石田淡朗さん。

後見は月崎さん。     


松の作りものがキザハシの前に出されます。

解説で萬斎さんがモミの木に似てる、なーんて口にされていたためか、
たしかにモミの木だ。

尺八を模して吊るされた10本弱の竹は、オーナメントにしか見えません。


萬斎さんは、水色の縷水衣、柳鼠色の能力頭巾、同色の緞子の腰帯、藍鼠色の無地熨斗目。

紺鉄色の模様(青海波かな? 遠くて模様不明確)の狂言袴の括り袴。
テールグリーンの房つきの黒い数珠を手にされて。


謡が!もぉ素敵過ぎて、素敵過ぎて、萬斎さん、イッソ ワキ方専業になってほしい〜!

と思ってしまうほど。

シテの登場前に、ワキ待謡があり、その最後に

「フーウウウーーーーー」と謡われたお声が、ゼッピン!


ワキ座に控えておられるとき、肩や袂のあたりには影の溜りができてなかった?

照明は実際には明るかったのかもしれないけど、滞留した空気が作る感じられ、ひっそりとした薄闇に水衣の袂が浸されているかのよう。


萬斎さんと万作さんが向かい合って尺八を吹き交わすシーンは、とても美しかった。

尺八への愛の強さをお互いに感じ取って、共鳴しあってたんじゃないでしょうか。

共鳴しあえる相手に遂にめぐりあえた、という風。

逆髪と蝉丸が邂逅して、向き合ってシオるシーンみたい。


アイの裕基くんは、抹茶色の段熨斗目、黄唐茶色の長裃。

裕基くんが幕から橋掛りへ滑るように出てきたとき、はっ 萬斎さん!と一瞬思ってしまった。

姿・形が似てるというより、アイをなさる時の萬斎さんが橋掛かりを進んでゆく跡にできる軌跡みたいなものが一緒。

ドレスのトレーンのように、長く後ろに、淡くゆるゆると静謐な空気をひきずっておられ。


2年前にも、このお三方の「楽阿弥」を拝見しましたが、その時は万作さんと萬斎さんのお役が逆でした。

その時のブログはこちら。↓

https://yaplog.jp/2109447/archive/822

2年前も、なんて素敵な狂言なんだー、と感激しましたが、今回の配役版のほうが、私は更に好きかも。


ラストは「鈍太郎」。

鈍太郎が石田幸雄さん、下京の妻が深田さん、上京の女が高野さん、後見が竹山さん。

萬斎さんがなさる時って、そーとーロコツに上京の女にラブラブ光線を放ってたけど、石田さんは多少控えめでした。

石田さんのやり方が正統なのかな。

鈍太郎のハシャギっぷりがカワイく、本妻はきっと呆れつつも、ま、いっか、と思ってるんでしょうねー