萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「第101回 野村狂言座」を観る

1月12日&13日、宝生能楽堂へ。

木曜・金曜で三番叟の小書が違う、との事だったので、両日伺いました。

「三番叟 三上山」(1/12)
「三番叟 田歌節」(1/13)
三番叟が萬斎さん、
千歳が裕基くん、
地謡が、太一郎くんを地頭に、
中村くん&内藤くん&飯田くん&岡さん。

後見が深田さん&高野さん。

大鼓が広忠さん!
小鼓頭取が鵜澤洋太郎さん、
脇鼓が清水和音さん&飯冨孔明さん、
笛が竹市学さん。

感動の三番叟でした!
全ての音が、萬斎さんの身体から放出されているかのよう。

烏飛や刻み拍子は、実際に萬斎さんの足裏が床を鳴らしているのでしょうが、
それだけじゃなくて、お囃子も萬斎さんの所作が、音に変換されているみたいで。

2日間に渡って正面席と脇正面の両方から拝見して、発見した事が。
面替りって、背後から観ても美しい!

裕基くんの装束は日替わり。
1/12は、白地に藍色の松皮菱へ鶴亀が配された直垂、厚板は暗褐色や朱色の強めの色調。

なんと凛々しい御姿!
松皮菱の直垂は、シテ方が千歳をなさる時の特別な柄なのかと思っていました。
狂言のおうちでも保有してOKだったのですね。

万作家で新たに誂えられたのかしら?
それにしては新品のパリッと感がないので謎です。

一方、1/13の裕基くんは、
若緑地に鶴亀&梅が配された直垂、白地に橙&緑の格子の厚板。

こちらの装束は時々お召しになる物ですが、前日と対比させて、うーんコッチもやっぱり佳いー、と楽しませていただきました。


三番叟の後に、休憩を挟んで解説。
先月の狂言座に続いて、今月も解説のお役は萬斎さん!
大サービス〜

三番叟の時は、全方位に意識を向けている、とのお話。
はい!脇正面からだと、特に実感を伴ってそう思います。
背中からも気が飛ばされておりました。

そして、今回は両日とも
"橋掛かりに素っ飛んでいく"(←萬斎さんの言)演出がありましたが、これは「翁」を連日上演する場合の、2日目以降の演出なのですって。


富士松
太郎冠者が万作さん、
主が太一郎くん、
後見が裕基くん。

万作さんの肩衣は、暗褐色&ろくしょう地に伸びやかな太いラインの梅。

連歌の付け合いっこのお話。
番組表に詞章が記載されていたけど、萬斎さんの解説がなければ、私には難しかったかも。

どれとどれのセンテンスがセットなのか、というのが俄かには把握しにくくて。
・・・という私の気持ちに、ピンポイント処方してくださる解説でした。

ところで、この演目の場面転換が、お能ちっくなのが興味深かったです。
何処へ移動する時に舞台を一周するのが狂言では一般的だと思うのですが、
この演目では座したままで、今は歩いてる設定、という斬新な展開で。
場面転換の仕方が大仰じゃないのが、カッコイイ。


「不腹立(はらたてず)」
僧が石田さん、
地主が内藤くん&中村くん、
後見が月崎さん。

イーエ、怒ってませんっ、という石田さんの反応が、愛嬌ありました。
怒りの蒸気が、ぷすぷすと耳や口から出掛からんばかり、という風なんだもの。

でも、本物の僧でも、あんな目に遭わされたら怒ってしまうと思うんだけどなー


「三人片輪」
シテの博奕打が深田さん、
他の博奕打が高野さん&竹山さん、
有徳人が飯田くん、
後見が岡さん。

そうとう悪どい事をしてるんだけど、なぜか好感を抱いてしまう。

就職したいのは本当なのでしょうが、ゲーム感覚で有徳人を攻略してみた、というライトな風が始終吹いてるようで爽快。

博奕打どうしが有徳人の家で再会した時も、ゲーマー同士でお互いの攻略成功を讃えあってるみたい。
楽しげな雰囲気に、すっかり感染されて帰路につきました。

そういえば1年前は、
よぉーし今日は狂言座だ!
と意気込んで宝生能楽堂の前まで行ったら、延期と知らされ悄然と帰ってきたのでした。

ヨイヤの皆様が揃って舞台に立ってくださるって、当たり前の事じゃないんだなぁ、
と、ありがたみを改めて感じています。