萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「第30回 櫻詠会」を観る

8月21日、観世能楽堂へ。
3週間ぶりの能楽堂


「卒都婆小町」
小野小町が山中一馬さん、
高野山の僧が森常好さん、
従僧が舘田善博さん、
笛が藤田次郎さん、
小鼓が大倉源次郎さん、
大鼓が柿原弘和さん。

10年前に観た松井冬子さんの九相図を思い出しました。

面には特に皺がある訳ではなくて、脂肪の削げ感で小町の年齢をあわらしているのかなぁ、と感じました。

険しい容貌にも見えるんだけど、こめかみ〜頬への稜線が美しい。
面を作った人は、光のあたり方を知り尽くして、このようなフォルムを造形したのでしょうか。
でも、昔の屋外での自然光は、能楽堂の照明とは方向や強さも違ったでしょうに、今みても美しく感じさせてくれるって、すごい。

さて今回は、上演中に風折烏帽子が、カッコンと前に倒れかかるアクシデントが。
烏帽子の紐は、面紐(それとも鬘帯?)に絡めてあるようで、両耳の辺りを支点にして、がっつり顔前へ。

するとシテ当人が片腕でスッと払い上げられ、見事に頭上に再セットされたのでした。
まるで舞の所作の一部であるかのような、自然なひと払いで。

能楽界のルールでは、アクシデントがあってもセルフでは対処しちゃいけないのかと思い込んでいましたが、そんな事はなかったのですね。

「隠狸」
太郎冠者が万作さん、
主が萬斎さん。
後見は岡さん(番組表の表記は飯田くん)
幕は内藤くん。

萬斎さんは、明るい紺の亀甲模様の長裃、ブルーグレー&柳色&白の段熨斗目、甕覗色の襟。

至福の時でした。
タヌキ狩の話題になると、つい夢中になってしまう太郎冠者が可愛い。
イキイキしてます。

確固たる証拠を押さえた後も、しばらく太郎冠者を泳がせておく主サマには、太郎冠者への親愛の情が感じられます。

嘘をあばくやり方もウェットが効いていて、2人のレクレーションの一環かのよう。

ネタは違えど、出し抜いたり、出し抜かれたり、を、2人でいつも楽しんでいるのかなー、と思えてきました。
この演目に、この配役は、しみじみ最高です!