萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「喜多流 秋麗特別公演」(第二部)を観る

10月8日、喜多能楽堂へ。

六地蔵
すっぱが万作さん、
田舎者が深田さん、
すっぱ仲間が
中村くん&内藤くん&飯田くん。
後見が月崎さん。

深田さんの腰帯は桔梗紋。
いまの初秋の時期にぴったり。

万作さんが軽やか。
仲間たちの肩衣をシュッと引き抜く所作も洗練されています。

それが万作さんの芸からくる洗練なのか、はたまた、数々の悪事を遂げてきた手練の象徴なのか、わからなくなってきちゃいます。


「安宅 延年ノ舞 貝立」
弁慶が長島茂さん。
義経が大島伊織くん。
大島輝久さんのご子息です。

義経一行の強力が萬斎さん。

義経の郎党が、
狩野了一さん&友枝雄人さん&粟谷浩之さん&友枝真也さん&塩津圭介 さん&佐藤寛泰さん&狩野祐一さん&谷友矩さん&金子敬一郎さん。

富樫が殿田謙吉さん。
富樫の太刀持が裕基くん。

笛が藤田貴寛さん、
小鼓が観世新九郎さん、
大鼓が亀井広忠さん。

地謡メンバのなかに、輝久さんのお姿。
ワキ座に一番近い、つまり、子方ちゃんポジションに近い場所ですね。

囃子方地謡も後見も紋付裃。
この演目の、この配役!という期待感わくわくの所に、紋付裃コーデ大群に、ますますテンションも上がります!

今回の二つの小書のうち、「貝立」は狂言方の小書。

萬斎さんは橋懸りに立ち、拡げた扇を法螺貝ちっくに掲げ、要の側を口元に当てて、
「つおぉぉぉぉぉーーーーーーーーん」
と。

なんと佳い音色!
「鐘の音」のワンシーンが紛れ込んできたかのようです。

萬斎さんは、
栗皮色&紺色の格子の地に刀のツバがランダムに配された厚板、
紺の狂言袴の括り袴、
金茶地に白い伊達巻・・・に限りなく近い飛雲らしき文の腰帯。
頭には頭巾。

ダークな色調がカッコいい。
偵察に行くために頭巾を外すと、
ちょっと雰囲気が和らぎ、能力さまのオフの日って、こんなんなのか~、と私はニマニマ。

偵察から戻られ、橋懸りで後ろを向いて頭巾を再送着してこちらを向かれると、
わーっ
オンの日の能力さまってば、キリッとしてるぅ、と、さっきと同じ格好に戻っただけのはずなのに、感嘆を新たにしておりました。

チョコレートとポテトチップを交互に食べるのと同じように、頭巾の有り無しで無限に楽しめそう。

そして、負けず劣らずカッコよかったのが裕基くん。

いつもは淡々としてるイメージが強い裕基くんですが、ギラリ、と殺気があり。
昨日も山伏を3人ばかり斬り捨てたのだゾ、と凄む言葉にも説得力が。

弁慶&山伏達と富樫が、互いに刀の柄に手を掛けて睨みあうシーンでも、
裕基くんのかっこよさが水際だってる。
裕基くんは、富樫を庇うように腕を水平に伸ばし、その姿が頼もしく、かつ美しいのです。

この睨み合いのシーンでは、萬斎さんは橋懸りに控えていたのだけど、鋭く横目でガン見されてました。

今回のお役目を裕基くんがなさるにあたって、おそらく萬斎さんの
熱血お稽古があったに違いなく、
プログラミングした通りに作動してるだろうな?おい!、という横目でしょうか。

が、なんといってもズシンときたのは、萬斎さんvs裕基くんが対峙する場面。

狂言の中でお二人が向き合うときとは全く違う。
その緊迫感たるや。

殺すか殺されるか、という平安時代に生きる、敵対する立場の二人の対峙、なんだもの。

敵対する立場でありながら、両者の声が同じ、というのも、なにやらドキドキが煽られます。

それと、義経をなさった伊織くんが、ハッとする気高さで。
みんなと同じ山伏コーデだと、あまりに目立ちすぎる、と弁慶が懸念するのも頷ける。
お顔立ちが整っているってだけじゃなくて、佇まいが清らかなのでした。