萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「還暦記念 第17回 櫻間右陣之會る」を観る

7月30日、国立能楽堂へ。

狂言「樋の酒」
太郎冠者が萬斎さん、
次郎冠者が深田さん、
主人が高野さん、
後見が月崎さん。

太郎冠者サマは、
花緑青色の地に、波頭&橋の肩衣、
白地に紺&黄の格子の縞熨斗目、
瓢箪の腰帯、
洗朱色の狂言袴。
扇には、紺碧色の朝顔&緑青の葉。

この前日にエイスケさんが死去してしまい、私はうちひしがれていたのですが、
生きて、動いて笑っている萬斎さんを観れて、慰められました。

樋づたいのお酒を呑もうとしてむせたりしてるのも、やたら楽しそう。盛大な水遊びのノリで、はしゃいでる風。

水しぶきが、太郎冠者サマのまわりでキラキラしているかのよう。

そして、酒宴で謡う萬斎さんのお声が、そらもぉ、美しいったらなかった!

ところで、前髪がかなりながくなられたような。
左頬の辺りにかかる程でした。

先日の、やっとな会の時は気付かなかったけど、今回は樋ごしの
お酒ごくごくシーンなぞがあり、
乱れ落ちてきたものと思われます。


仕舞「笠之段」
本田光洋さん。


能「道成寺
シテが櫻間右陣さん。

道成寺の僧が森常好さん、
従僧が舘田善博さん&梅村昌功さん。

オモアイが萬斎さん、
アドアイが裕基くん、
狂言方鐘後見が、
中村くん&内藤くん&飯田くん&淡朗くん。

大鼓が広忠さん、
小鼓が幸正佳さん、
太鼓が金春惣右衛門さん、
笛が藤田次郎さん。

萬斎さんは、裏葉色の縷水衣、
同色の麻の葉柄の腰帯、
白地に茶の篭目模様が配された狂言袴の括り袴。
濃紺の無地熨斗目、山葵色の能力頭巾。

前場の萬斎さんのセリフは重々しく、ときどきタメもあったりして、
空間が鈍くウネってゆきます。
ムンク叫びの背景みたいな感じ。

きゃ~
今からナニゴトかが起こるぅー
という予兆が煽られて、
ゾックゾクのワックワクです!

そして、今回は、アイお二人が鐘を釣るしてくださいました。
なんとゆーサービス!

1つの公演の中で、
萬斎さんの狂言も観れて、
道成寺のオモアイも観れて、
しかも鐘釣りワークも観れる、と。

帰宅して調べてみたら、
金春流&金剛流&喜多流は、アイが鐘を釣ることになっているのですね。

すなわち、僧がオモアイ(萬斎さん)に、鐘を釣るすよう命令すると、それを受けて萬斎さんはいったん幕に入ります。

少しして、
エーイーヤー、エーイートー、と掛け声が幕の中から響きだし、幕が上がると、

萬斎さんを先頭に、
、中村くん、鐘、内藤くん、裕基くん、という順番で、橋懸にあらわれました。

中村くん&内藤くんは、紋付裃。
裕基くんの装束は、萬斎さんとオソロで、無地熨斗目だけが色違いで青藍色。

まず、萬斎さんが、先端がJ字形の棹で、滑車の角度を調整。
大まかな角度は調整できても、J字の先端を滑車内に入れちゃうと
微調整がやりにくいようで。

最後は、滑車を外側から棹で、
カンカンカンッ
カンカン! カンカンカンカンカンッ
と叩いておられ。
怒ってないですよね?

なんとか微調整ができて、いったん萬斎さんは棹を下げて、小休止。
いや、実際には休んでるんじゃないんだろうけど。

あんだけ長い棹を操って微調整するって、かなりの重労働なことでしょう。

続いて、裕基くんの出番です。
裕基くんは、Y字の棹に綱の先端の輪っか部を挟み、滑車通しのファーストトライ。

が、輪っか部が少しお辞儀したよう下に垂れ下がってしまって、滑車をくぐらせることができず。

裕基くんは直ぐに棹を下げて、輪っかを挟み直して、セカンドトライ。

裕基くんの背後の内藤くんが落ち着き払って棹のサポートをなさり、頼もしい限り。

セカンドトライで滑車を通し成功!

すかさず萬斎さんがJ字棹を高く上げて、滑車から頭を出した輪っかを引っ張り下ろす。

けっこう抵抗があるみたいで、背後の中村くんもサポートしつつ、
最後は無理やりねじ伏せるかのように、ずずずーっと引き下ろすことができました。

ここで、萬斎さんの残量は、もはや6%か7%という様相。
が、まだ休めません。

ぐっちゃりの綱をたぐって、それなりに整線して、シテ方鐘後見に渡して、ここで漸く一区切り、となったのでした。
お疲れ様でございました。

ところで、今回の道成寺では、
白拍子はホントに供養をするつもりでやって来たのかな、という気がしました。

供養のつもりだったんだけど、
蛇に豹変するスイッチを
萬斎さん(寺男)に押されてしまった、という風に感じられて。

舞を所望したのも寺男で、
更に、ちょうどイイモンあったよ、と、烏帽子を渡したのも寺男

前に観た観世流では、白拍子の方が、もうちょっと能動的だった記憶あるのですが。

で、そのスイッチが入ってく過程なんだけど、これが大鼓の一調で、
もーめちゃくちゃカッコいい!

続いて、大鼓から小鼓にバトンタッチして乱拍子に。

前シテの面は、切れ長の目に、少し腫れたような瞼が妖しくも艶やか。

その美貌の白拍子の後方の橋懸にも、同じく切れ長の美貌の寺男コンビが。
橋懸にこのお二人が並ぶと、絵が締まりますねー

後シテの蛇ちゃんは、けっこう早く退散してしまい、可哀想でした。

やはり、今回の白拍子は、蛇に豹変なんかしたくなかったのに、スイッチ押されちゃったに違いないです。