萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「「萬斎インセルリアンタワー 20」を観る

12月16日、セルリアンタワー能楽堂へ。
見所に、杉本博司さんのお姿。

最初に萬斎さんによる解説。
茄子紺の紋付きに袴。

時々、お言葉が出てこなくなってフリーズなさる。
そのご様子がかわゆくて、フリーズなさろうとも、十分に間が持ちます。

賽の目
採用される聟が中村くん、
舅が深田さん、
太郎冠者が月崎さん、
不採用になっちゃう聟が、岡さん&内藤くん、
深田さんの娘が飯田くん、
後見が淡朗くん。

不採用を宣告された内藤くんが、橋懸りを戻っていくと、向こうから、ツツーッと出てきた中村くんに行き遭う。
お互いに身体を斜にしてすれ違う場面が、映画のワンシーンみたいで印象的。

お互いに恋敵だと、ピンときた、って風でした。

狂言「寝音曲」
太郎冠者が萬斎さん、
主が高野さん、
後見が月崎さん。

太郎冠者さまは、
テールグリーン地に三匹の兎の肩衣。ウサギちゃんの目はボルドー色。
白地に小豆色の格子の縞熨斗目、朱色に露芝模様の狂言袴。

クリスマスカラー

鬘桶の蓋は金の露芝模様。
袴とリンクさせてるのねー
なんてお洒落なんでしょ。

この晴れやかなキラキラしさは、どうしたことでしょう。
ハッとするほど艶やかな、太朗冠者さまでした。

さて、五輪開閉会式の演出チーム解散の会見が行われたのは、
この公演の1週間後のことでした。

セルリアンの解説のなかで、コロナで中止となってしまった演劇界の苦渋を出産に例えられ、

「大変な生みの苦しみを経て、ようやく出産という段階になって、それが無になってしまった、というのは、本当にやりきれなかったろうと思います」

といった主旨のことを仰っていたことが、解散ニュースを聞いて、まざまざと蘇ってまいりました。

あれは、演劇界の苦しみに、五輪開閉会式の演出た携わってこられた、ご自身の思いを重ねての、ご発言だったのかもしれませんね。

また、こと公演の通例では、解説のあとに質疑をお受けくださっていましたが、今年は無しで。

コロナ対策なのだろうと思い込んでいたけど、今にして思えば、五輪関連の質問を避ける意図もおありだったのでしょうか。

五輪開閉会式の演出チーム解散の会見は、ノーカット版を夜、会社から帰ってから拝見しました。

萬斎さんは1回目のご発言の後に、目を何度もシバシバ瞬かせてらして、涙をこらえておられるの?と、私はオロオロ。

かれこれ7~8年くらい前でしょうか、
国立能楽堂での「花盗人」で
落涙された時と、まったく同じ「シバシバ」なんだもの。

その時は、シバシバさせて踏ん張った末に、崩壊しちゃったのだけど。

桜の枝を盗みに入って家主(万作さん)に見つかり、桜の木に縄でつながれ、死罪を宣告されるシーンだったと記憶しています。

でも、でも、この会見は、どうか全集中で止血、いえ、止涙なさってくださいーー
と、念じる私。

私の個人的な嗜好からすれば、
あのお方が落涙なさる光景だなんて!ウェルカム!!なんだけど、

ご当人としては、あの会見の場では、どうあっても涙を見せるのは本意ではなかろうと思ったら、念じずにはおられず。。。

放映された画面の範囲では、無事に防御できたようで良かったです。

そして、このような複雑な状況での会見は、質疑応答の1つ1つが、ロシアンルーレットのような怖さを孕んでいる気がしますが、
萬斎さんのご回答は、非の打ち所がありませんでした。

萬斎さんが選ばれるお言葉の的確さには、ひれ伏すばかりです。

口に出さずに胸に秘めおかれた事柄は、そりゃも~山ほどあるでしょうが、
少なくとも口に出された言葉は、真意なのだと感じられました。

ご無念さは、いかばかりかとは思いますが、子午線の祀りにスッパリとお気持ちが向かわれますように、と願っております。