萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「野村萬斎 新春江戸前狂言(1月3日)」を観る

1月3日、東京国際フォーラム、ホールB5へ。
 
まずは11:00の部。

最初に萬斎さんによる解説。
黒紋付にグレーの縞の袴、若紫色&銀色の鱗模様の角帯、水色の長襦袢
瑞々しく晴れやかなお姿に、心が洗われます。

正面席だけでなく、まんべんなく色んな方向を向いてお話くださる。
一の松~三の松のご説明の際には、橋掛りを長くゆっくり歩いてくださる。
脇正面だった私としては、嬉しさ満点です。

歌と謡の違いのご説明が興味深かったです(もしかしたら、13:00の部でのお話だったかも)。
歌はメロディーありき。
一方で、謡は言葉ありき。言葉を強調したいがために、結果的に節がついてくる、といったようなお話でした。
 
リピートアフタミーで、
「あーめもかーぜも ふーかーぬーに、
デーザーカ―マ打―ち割ろ
デーザーカ―マ打―ち割ろー―」のレクチャーもしてくださいました。
 
解説は32分。
いったん切戸口がら退出され、再びご登場。
 
萬斎さんによる小舞「若松」
地謡は、中村くん&月崎さん&岡さん&飯田くん。
 
扇は、薄水色&金・銀の抽象柄。
萬斎さんが袖を翻すごとに、浄化
されてゆく気持ちに。
今年は初詣に行ってなかったんだけど、ここで大きなご利益を戴きました。

狂言「蝸牛」
山伏が裕基くん、主が淡朗くん、太郎冠者が高野さん、後見が月崎さん。

裕基くんのカタツムリの舞(?)が、キレがあり、かつ軽やかで見とれてしまう。
何と高く飛び上がられるんでしょ。

疑うことを知らないピュアな太郎冠者が、高野さんにジャストフィットでした。


13:00の部。

こちらも解説は萬斎さん。
新年早々、お休み返上でのサービスに、ただただ感謝です。
 
道行のご説明では、手を車輪のように体側で回して、シュッポッポッのジェスチャーを。

「電車ゴッコしてる訳じゃないけど・・・
なんでコンナンしてるのか分かりませんが、」
と、ここでちょっと照れた風になり、
「まあまぁ やらしてくださいな」
と、照れを残しながら、シュッポッポッを継続なさる。
 
うぬ―
かわい―い!
電車ゴッコなる用語を使ってのご説明は、過去にもあったけど、これは新パターンじゃないでしょうか。

キツネ居ないでしょ、と言われて佐渡のお百姓は、居る、と嘘をついちゃうです、というご説明の流れで、
「キツネは居ないがトキは居るっ(ここで、クイッと顎を上げ、体をエビ反らせられる)
・・・と胸を張れ、と言いたくなりますが。」
と。

なんて見事なエビ反り!
アニメちっくに冗談ぽく、サッとなり、何事も無かったようにシュッと背筋を戻されたけど、すっごい高度なことだっんじゃない?

下半身は少しもブレず。
しかも、背筋ピーンからの反り、から再びの背筋ピーンなので、メリハリが気持ちいいくらい。

狂言の精神のご説明のなかで、例えを挙げようとして、萬斎さんは
「男性でも女性でも、その人に会うためになんかお金をつぎ込んじゃう人いるでしょう?」と。
(←ホストとかホステスに入れ込んでる人のことを指しているのかな?)
 
「あ、そういう人は、お能に出てくる人なんです。」
(えっ そなの?・・・とハテナが脳内で飛び交う私。)
 
「すごい間違った説明をしてるような気もしてるけど、」
(は・・・い・・・ そんな気がします、と、私も内心で賛同)
 
「えーと、それくらい すごい情念を扱っているということです。
お能は、すごい情念。
狂言は、まあまあ、止めときなさい。と声をかけたくなるような滑稽さがある。
それを俯瞰して・・・上から目線ということではないですよ、笑い飛ばして明日からの活力に変えていくのが狂言です」
 
云わんとなさりたいこと、伝わりました。
なんだかモーレツに微笑ましく(って失礼な言いようだけど)、そして嬉しかった。

萬斎さんにしては珍しく、話が迷子になりかかりつつも、仰りたいことを正確に伝えようと、言葉を選ばれながら丁寧に説明なさる姿勢が。
 
さらには、オリパラ開閉会式への思いもお話しくださり、そのあとに

「開閉会式をご覧になった時に、ああ、そういうことだったのか、と感じていただければと思いまして、私の思いを述べさせていただきました。」と。

萬斎さんが志しておられる開閉会式が、どうか成就しますように。
届けたいと思われてきるメッセージが、どうか全世界に届き、受けとめられますように。

私もテレビ越しであっても、それを受けとめたいです!
まだ現場で受けとめる夢は捨てずに、あらゆる応募にトライしつづけますが。

解説は33分。

萬斎さんによる小舞「土車」
地謡は、中村くん&月崎さん&裕基くん&淡朗くん。

午前の「若松」は、祝言性が溢れる舞だったのに対して、「土車」
は颯爽と駆けていくかのような舞。

年頭に、色んな萬斎さんを観れる、なんという幸せよ。

少し謡が揃わなかった瞬間があり、懸命に立て直す中村くんが頼もしい。

狂言佐渡狐」
佐渡のお百姓は太一郎くん、越後のお百姓は内藤くん、奏者は深田さん、後見は岡さん。
 
太一郎くんの陽性さにぴったりのお役。
お隣の席のご婦人が、何度も大笑いされていて、嬉しくなってしまう。
深田さんもご婦人の大きな反応に視線を走らされ、ふふふ、というご様子。

太一郎くんのコーデが、オシャレ高校生の制服に見えてしょうがない。
松竹梅・折鶴・亀が配された藍鉄色&納戸色の掛け素襖、濃紫色の狂言袴、白地に紺&オレンジの格子の縞熨斗目、こげ茶の襟。
 
太一郎くんの掛け素襖は、柄は定番だけど色は初見。
オソロの内藤くんの掛け素襖と比べてみると、太一郎くんの装束の方が少しだけ丈が長めのような。

万作家で新しく誂えられたのでしょうか。誂えるときは、ご一門の皆様の身長に照らしながら、寸法を少しづつ見直していかれるのかもしれませんねー