萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「観世元伯三回忌 観世元伯を偲ぶ」を観る

12月14日、新宿のスペース・ゼロを出て、その足で矢来能楽堂へ。

この度の公演の主催元は、チラシの記載によると、「残った神遊メンバー4人と息女の観世結子、絢子(元伯長女、次女)」とのこと。

「神遊」は、一噌隆之さん、柿原弘和さん、観世新九郎さん、観世元伯さん、観世喜正さんが結成しておられたグループです。

2016年に活動を終了された後、元伯さんに病が見つかり、元伯さんは2017年12月に51歳で亡くなられました。

特別な会に、一般観客の私達も参列できる機会をくださったことに、心より感謝申上げます。

独鼓「海士」
観世淳夫さん。太鼓は観世絢子さん。
 
一調「江口」
観世銕之丞さん。大鼓は亀井広忠さん。
 
連調「當麻」
観世宗家&三郎太くん。太鼓は小寺佐七さん&林雄一郎さん。
 
独吟「祐善」
山本泰太郎さん。
 
能「融」
融大臣は観世喜正さん、旅僧は森常好さん、所の者は萬斎さん。
大鼓は柿原弘和さん、小鼓は観世新九郎さん笛は一噌隆之さん。
そして太鼓が観世結子さん。
後見が観世銕之丞センセ&敦夫さん。
地頭は観世宗家。 
萬斎さんは、金茶の銀杏の長裃、ブルーグレーの段熨斗目、同色の襟。

青白い月光がきらめく静謐な雰囲気が、この会の厳粛さを象徴するかのような「融」でした。

二人のお嬢様は、小柄で華奢なお姿ですが、
芯の強さが感じられるキリリとした気品に、清らかなお声。

座る姿の美しさや、バチを振り下ろす所作に、お父様の面影が薫ります。

今回の公演パンフには、ご出演者の大半の方々が追悼文を寄せておられました。

掲載順に記すと、
観世宗家、銕之丞センセ、小寺佐七さん、森常好さん、
萬斎さん、広忠さん、山本泰太郎さん、林雄一郎さん、
観世新九郎さん、一噌隆之さん、柿原弘和さん、観世喜正さん、観世結子さん。
 
お一人あたり1ページづつ。
思いが凝縮された言葉に、ページをめくる毎に涙がブワブワ沸き出してしまう(帰宅してから拝読しました)。
 
その中でも、ひときわ心に響いたのが、広忠さんのページ。
だって、平たく言うと、
「遺された太鼓方には、いつも私が
『そこは元伯さんの打ち方と違います(超・意訳です。実際に記載されていた言葉遣いは、もっと、もっと、丁寧です)』
とダメ出ししてますからねー」
といった主旨が綴られているんですもの。
 
私が全面サポートしてますから安心してください!というメッセージが根底にあることはヒシヒシとわかりますが、そのキビシサにしびれます。

ソレ違うんだけどなー、と思っていても、呑み込んでしまう事ばかりの我が身からすると、眩しいったらありません。

相手のことや能楽界のことを真摯に考えているからこそ、のご言動ですよねー
惚れ直しました!