萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

主に萬斎さん公演メモ 2019年5月

●5/6、「文の会 第二回 社中発表会」
観世能楽堂にて。

広忠さんてば、お社中でも、袴の色をチェンジなさることがわかりました。


●5/9、「野村萬斎 狂言の夕べ 立川公演」
自分んチのすぐ近くまで萬斎さんがいらしてくださるって、すごいことです。

今年に始まったことではないんだけど、しみじみ ありがたいことです。

最初の萬斎さんによる解説は、なんと30分も。

「膏薬煉」のシテは、「上方の膏薬煉」なんだけど、萬斎さんいわく
「はんなりと・・・まあ、そんな細かいことできるかどうかわかりませんが。まあ、これは楽屋に聞こえるように言ってるんですけど。」
とニヤリ。

萬斎さんは、「首引」の親鬼サマ。
出てらしたお姿は、「恋重荷」の後シテかのような荘厳さ。

白頭に、八割がた金糸が入った藤色の袷法被、テールグリーン地に金糸で飛雲&輪宝の半切、紺地に白い渦巻き紋の腰帯。

親鬼サマのコーデって、バリエーションが色々あるのですねー
私は、今回の格調高いバージョン、特に気に入りました。


●5/15、「NANSAI 解体新書 その弐拾九
「発酵」〜ジャパンカルチャーという文化変容(アカルチュレーション)〜」

ゲストは、TAKAHIROさん、山田文彦さん。
山田文彦さんの儀式&お話が未知の領域すぎて、めちゃくちゃ新鮮で楽しかったです。


●5/25、「第15回 武田の杜 薪能
甲府駅からタクシーで5分ほど。

「二人袴」は、萬斎さん&裕基くんのリアル親子。

劇中で、お互いの烏帽子のちょっとした傾きを直しあう微笑ましい場面も。
あまりに手馴れた風なので、もしかして楽屋裏でもこんな風になさってるのかしら。

パパが一方的に直すんでなく、裕基くん側からも直してあげるってトコがレアですー

ラストの連舞の謡が、とーっても素敵でした。


そして「道成寺」!
薪能の「道成寺」は、私には初でした。

さらに、こちらの舞台でも「道成寺」の上演は初とのこと。

シテは佐久間二郎センセ。
ワキは森常好さん、能力は萬斎さん&高野さん。
狂言鐘後見は、中村くん&深田さん&裕基くん&飯田くん。

中村くんは、棹で綱を上方へ持ち上げる係。
深田さんは、滑車の向こうで縄を受け取る係。

裕基くん&飯田くんは、長い棹を本舞台に搬入し、弧を描く軌跡を描きながらる床に横たえます。

お二人の動きはシンメトリーに揃っていて、かつ美しい所作で、とても気持ちのよいものでした。
きっと、いっぱい練習なさったのでしょうね。

今回、私は脇正面で、滑車の箇所が克明に見えたんだけど、ちょっとヒヤリとした一幕が。
まず、深田さんは、わりとすんなり綱のループ部をキャッチ。

で、深田さんがグイと綱を引き降ろそうとしたところ、
中村くんの棹の先端の紐が滑車に巻き込まれてしまい。。。

ハッとなる中村くん。
その背後でサポートする裕基くんにも緊張が走る。
同じく私にも緊張が走る!

懸命に棹を引っぱる中村くん。
が、抜けません 抜けません

こゆ時ってどうするの?
もしや中断して、梯子とか持ち出す事態になっちゃうのぉぉ

と、内心オロオロする私。

しかし、中村くんは諦めない。
何度か ガッ ガッと引っぱりにトライされ、無事に抜き取ることができたのでした。

さて、鐘が無事に揚がり始まった「道成寺」ですが、こんなにも屋外が相応しい演目が他にあろうか?というベストマッチ。

日が徐々に暮れていく様も、背後でざわめく木立も、すべてが道成寺の周囲の景色のようで。

萬斎さんは、鶯色の能力頭巾、柳裏色の縷水衣、同色の緞子の腰帯、藍鼠色の無地熨斗目、薄藍色地に渦巻&カブ文が配された狂言袴の括り袴。

橋掛りに控えておられるお姿には、室内とは異なる陰影が形成され、造形の美しさが際立ちます。

後シテの蛇ちゃんの姿には、怨みや憤りよりも、一途な想いが感じられ、その真摯さがいとおしく思えてしまいました。

道成寺って、信念を貫き通そうとした女性の物語だったのですねー