萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

『TENCHIJIN 「○□△」〜三日月公演〜』を観る(その2)

(その1のつづき)

「翁」が終ったのが16:33。

実は今回の公演は、開演前のロビーが異様な雰囲気で、なんか来てはいけないトコに来ちゃったかな、と気後れしていました。

キラびやかな女性たち、
ビジネスマン風の男性の群れ、
個性派ファッションのオシャレ男子、
と、いつもの能楽堂とは、どうも様子が違いまして。


で、ロビーは人がひしめいてるのに、開演時間の間際になっても見所は人がマバラ。

さらに開演時間が過ぎても、いっこうにお調べも聞こえてこず、こりゃ見所崩壊になってしまうんじゃないか、と心配になったほど。

が、幕が揚がる前には、お席はほぼ埋まり、かつ見事に静まり返り、まったく問題ありませんでした。


休時間には、見所でデビ夫人のお姿をお見掛けしました。

テレビと同じだー


さて、休憩20分を挟んで「末広かり」。

果報者が萬斎さん、太郎冠者が中くん、すっぱが高野さん、後見が内藤くん。

果報者サマは、紅白段熨斗目に、裾の方に薄紅色の鶴菱模様が入った藍鉄色の素襖裃。

後見の内藤くんは、紋付裃。

果報者サマが名乗りで、ずいいっとキザハシの間近まで出てこられると、私はもー嬉しくて。

萬斎さんのシテを拝見するのは、年が明けてからは、これが初。

袖さばき、袴さばきの「バッサー」が何て美しいんでしょ。

三番叟の狂言後見も素襖裃ですが、(目線や気配はトモカク)最小限に動きを抑制されてるので、それとは対極です。

お屋敷の外から太郎冠者の囃し物が聴こえてくると、果報者サマはじっとしてられせん。

ノリノリで浮き沈みを繰り返す所作が軽やか〜

座りながら舞ってるかのよう。

そのあとに、「???(セリフ忘れました) もろはーくを 飲ーめかしー」って言うとこが、

大らかさの中に気品があって、私の耳にも目にも幸せが満ちます。


太郎冠者が赦されるっていうストーリーもメデタイんだけど、
それを超越して、果報者サマの醸し出す晴れかな明るさが、祝言性を盛り上げてるんじゃないかと。


見所からは、ここぞという要所
要所で笑いが起こり、なぜか安心する私。

うん、よかった よかった 受け容れられてる、と。


続いて、半能「石橋 群勢」。

シテ(白獅子)が金春安明さん、
ツレ(赤獅子)は、辻井八郎さん&柏崎真由子さん&林美佐さん。何と3人も!

寂昭法師は森常好さん。

大鼓は大倉正之助さん、小鼓は幸正昭さん、笛は松田弘之さん、太鼓は金春國直さん。

2つの一畳台の他に、山の作り物も設えられ、白獅子は山から登場しました。

25分くらいのコンパクトな演目でしたが、獅子の舞が華やかで、囃子がかっこよく、観たーっという満足感を戴いて終演となりました。


今回が観能デビューという方々が多くいらした公演だったようですが、これは当たりの番組編成だったんじゃないでしょうか。

音楽的にも視覚的にもキャッチ−だったのではないかと。

入門編は「羽衣」&「附子」といったイメージがありますが、今回の組合せ、アリだと思います!