萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「第661回 大槻能楽堂 自主公演能 新春能(1月4日)」を観る(その2)

(その1のつづき)

「翁」の後、20分の休憩を挟んで「隠狸」。

太郎冠者が万作さん、主が萬斎さん、後見が中村くん、幕が深田さん。

主サマは、群青色の松皮菱の長裃、ブルーグレー&抹茶色&白の段熨斗目、ライトグレーの襟。

新年初に拝見する萬斎さんの狂言が、万作さんのアドって、こんな幸せなことがあるでしょうか。
・・・と思っているのは私だけではないようで。

舞台上のお二人からも、嬉しい 嬉しい 嬉しい 嬉しい 嬉しい と、喜びがリンリンと溢れ出ていました。
万作さんからも、萬斎さんからも。
冒頭の屋敷内での場面から既に。

お二人そろって出演される公演は多々あっても、それぞれ異なる演目に出られることが多く、共演の機会は少ないですもんね。

特に二人きりでの共演は。
これは、やはり共演キター!の喜びということでしょうか。

お二人のハッピーオーラが新春の晴れやかさにもオーバーラップします。
しかも、いつにも増して立ち居振る舞いがウツクシイお二人。
新春を寿ぐってこういうことかも。


主サマは、「みどもは手酌がよい」と、エア手酌をなさる時、扇をごくわずかにクイと返される。
あっ ちょびっとしか注いでない!
太郎冠者は、これを見逃してなければ、主サマの策略に気付けたのにね。

酒宴の謡が神でした!
このお二人の取り合わせに勝る「隠狸」があるでしょうか。
しかも、萬斎さんが主っていう、まさに今回の配役が最高峰!!


酒宴の途中で一度、万作さんの腰に挟まれたタヌキちゃんがポロッと床へ抜け落ちてしまう場面が。

落ちたのを中村くんが見逃すはずもありませんが、中村くんはクールに動かず。

と、ややあって万作さんは気付かれ、太郎冠者の振る舞いのごとく、さり気なく腰に戻されました。

中村くんは、このリカバリーを想定されて静かに待機することを選択されたのでしょうねー


ところで、後見の中村くんと、幕の深田さんは紋付裃でした。

萬斎さん&中村くん&深田さん、と3人の方が、休憩の20分でお着替えをされたってことですね。

三番叟の終わり際に深田さんは後見座から抜けて幕へまわられてたので、万作家メンバは
万作さん&萬斎さん&裕基くん&深田さん&中村くんだけだったのかも。

裕基くんは三番叟終わりでハーハーされてたでしょうに、動ける方が限られた中で、3人同時着替えって鮮やかです。


10分の休憩を挟んで「国栖 白頭 天地之声」。

漁翁(前シテ)&藏王権化(後シテ)は観世銕之丞さん。 

老媼(前ツレ)が長山桂三センセ、天女(後ツレ)が観世淳夫さん。
天皇(子方)が浅見悠花ちゃん。

侍臣が福王知登さん、輿舁が中村宜成さん&喜多雅人さん。

追手の兵が萬斎さん&深田さん。
アイの幕は中村くん。
萬斎さんてば、出ずっぱり。

笛は竹市学さん、小鼓は久田舜一郎さん、大鼓は河村大さん、太鼓は上田悟さん。

天皇ご一行の登場、川の上の老夫婦、川からの帰宅、と場面が転換していくと、物語の中にどんどん誘い込まれていく感じ。

さて、そこにバッと現れたのは、攻めのダーク系コーデも禍々しい追手コンビ。

萬斎さんは黒に近い焦茶に胡桃色の格子の縞熨斗目、鷹(鳶?)がバックに染め抜かれた焦茶の肩衣の右肩を片脱ぎに。
ターコイズブルーの青海波の狂言袴を括り袴にし、長い槍を手にされています。
深田さんは色違いの装束で、左肩を片脱ぎにし、弓矢を携えています。

隙のない追手コンビの登場に、ひっくり返した川舟の下に潜む天皇は大ピンチ〜

が、応酬する銕之丞さんは、全く怯まず。すっごい気迫で応酬。

あー、こりゃ勝負あった、
この貫禄で凄まれたら、追手は引き下がらざるを得ないよね。

もぉ見るからに不自然な川舟なんだけど、追手コンビはその川舟を目前にしながら「はっちゃ こわもの」とかいって、退散してゆきました。

この演目、前シテは正真正銘のお爺さんで、実は自分は・・・という曰くがある訳じゃないんだけど、とんでもなく威厳があったのでした。

後ツレの天女さまの面が魅力的。
番組表によると、「万媚」という面とのこと。


終演時間を、来年の自分のためにメモ。終演は17:25。

当日貼りだされていた番組進行表では17:40。


最後に、三番叟の裕基くんのことで書き忘れてたことを。

鈴之段が終わっていったんピタッと静止されたとき、扇が小刻みに震えていました。

面箱の前へ移動する間もずっと。

緊張のブルブルというより、アドレナリンのブルブルに見えました。

三番叟に愛され、三番叟に魅入られた方の二世も、こうして三番叟に魅入られいくんだ、と、ゾクゾクッとしました。


さて、来年も、万作家は1月4日にご出演だそうです。

大槻能楽堂の2019年度番組表の1/4の蘭には、「翁」とあり、その直下に文藏さんと萬斎さんのお名前が併記されており。

で、小書として「大黒風流」と書かれ、その直下に万作さんのお名前が。

これは期待してしまいます!

お能は、野村四郎さんの「鞍馬天狗」とのことです。