萬斎さん観賞と日本画修得の日々

吉祥寺で一棚だけの本屋さん(ブックマンション,145号,いもづる文庫)を始めました。お店番に入る日や棚のテーマ更新は、Instagramでお知らせします。

「第一回 観世淳夫之会」を観る

12月25日、宝生能楽堂へ。

仕舞 
「生田敦盛 クセ」大槻裕一くん、
鞍馬天狗」観世三郎太くん。

狂言「舟渡聟」
船頭が萬斎さん、
聟が裕基くん、
船頭の妻が太一郎くん、
後見が中村くん。

聟が船に一歩、踏み出すと、船がメッポウ激しく揺れる!
萬斎さんが船頭をなさると、
船が揺れる表現は、こうなるんだー

グラグラグラグラグラッ、と、なかなか減衰せず、
長いこと高周波で揺れ、萬斎さんの身体も激しく揺れつづけ。

といっても、船はエアーなので、船が揺れてるから萬斎さんが揺れてるじゃなくて、萬斎さんの身体の揺れが、エアー船が揺れてるかのように見せている、と。

そんなに激しく揺れても両足で踏ん張れちゃうって、船頭サマってば、体幹つよすぎ。

舅が実は船頭だった、と知ってしまった聟の態度が、凛々しく優しい。
船頭に脅されたら脅されっぱなしだった青年ですが、ここぞ、の時に彼の真の人となりが現れたのでしょう。

聟の神対応が、バッドエンドを鮮やかにハッピーエンドに反転させ、品格溢れる美しい別れの場面となりました。

仕舞
「難波」 観世銕之丞さん、
「鳥追舟」 観世喜正さん。

能「井筒 」
里の女&紀有常の娘が観世淳夫さん、
旅の僧が宝生欣哉さん、
所の者が太一郎くん。

囃子方が竹市学さん&大倉源次郎さん&亀井広忠さん。
小鼓後見は大倉伶士郎くん。
後見は鵜澤久さん&大槻裕一くん。
地頭は観世銕之丞さん。

業平と紀有常の娘が交わしあった和歌が出てくるんだけど、業平からの和歌は、どうもフワッとしてる。

現代の人だったら、この和歌が自分への告白って認識できないのでは?

イヤイヤしかし、相手が気になる人であれば、えええ?それって、それって、もしかして?、と、正解に到達する可能性はある。

そう考えると、業平は気づいてくれたら脈あり、スルーされたら脈なし、と思って諦めよう、くらいの気持ちだったのかしら。

業平は敢えて、フワッとした、いかようにも解釈できる和歌を送って、恋が成就しなくても幼馴染と気まずくならないよう配慮していたのかも。

実は舞台上には業平は登場してないのに、こんな風に、業平と紀有常の娘の関係性を考えさせられるとは、面白いことです。

「第一回 観世淳夫之会」を観る

12月25日、宝生能楽堂へ。

仕舞 
「生田敦盛 クセ」大槻裕一くん、
鞍馬天狗」観世三郎太くん。

狂言「舟渡聟」
船頭が萬斎さん、
聟が裕基くん、
船頭の妻が太一郎くん、
後見が中村くん。

聟が船に一歩、踏み出すと、船がメッポウ激しく揺れる!
萬斎さんが船頭をなさると、
船が揺れる表現は、こうなるんだー

グラグラグラグラグラッ、と、なかなか減衰せず、
長いこと高周波で揺れ、萬斎さんの身体も激しく揺れつづけ。

といっても、船はエアーなので、船が揺れてるから萬斎さんが揺れてるじゃなくて、萬斎さんの身体の揺れが、エアー船が揺れてるかのように見せている、と。

そんなに激しく揺れても両足で踏ん張れちゃうって、船頭サマってば、体幹つよすぎ。

舅が実は船頭だった、と知ってしまった聟の態度が、凛々しく優しい。
船頭に脅されたら脅されっぱなしだった青年ですが、ここぞ、の時に彼の真の人となりが現れたのでしょう。

聟の神対応が、バッドエンドを鮮やかにハッピーエンドに反転させ、品格溢れる美しい別れの場面となりました。

仕舞
「難波」 観世銕之丞さん、
「鳥追舟」 観世喜正さん。

能「井筒 」
里の女&紀有常の娘が観世淳夫さん、
旅の僧が宝生欣哉さん、
所の者が太一郎くん。

囃子方が竹市学さん&大倉源次郎さん&亀井広忠さん。
小鼓後見は大倉伶士郎くん。
後見は鵜澤久さん&大槻裕一くん。
地頭は観世銕之丞さん。

業平と紀有常の娘が交わしあった和歌が出てくるんだけど、業平からの和歌は、どうもフワッとしてる。

現代の人だったら、この和歌が自分への告白って認識できないのでは?

イヤイヤしかし、相手が気になる人であれば、えええ?それって、それって、もしかして?、と、正解に到達する可能性はある。

そう考えると、業平は気づいてくれたら脈あり、スルーされたら脈なし、と思って諦めよう、くらいの気持ちだったのかしら。

業平は敢えて、フワッとした、いかようにも解釈できる和歌を送って、恋が成就しなくても幼馴染と気まずくならないよう配慮していたのかも。

実は舞台上には業平は登場してないのに、こんな風に、業平と紀有常の娘の関係性を考えさせられるとは、面白いことです。

「第33回 久習會」を観る

12月21日、国立能楽堂へ。

狂言名取川
僧が太一郎くん、
名取の某が深田さん。
地謡が、高野さん&中村くん&内藤くん、
後見が岡さん。

名取川、久しく観ていなかった曲です。
こんなにも佳い演目だったんだっけ?と唸りました。

そもそも、川に名前を流されてしまう、という発想が粋。
更に、魚すくいと同じ感覚で川をさらって、流された名前をキャッチしよう、とする。
なんて伸びやかな思考回路なんでしょー

謡が盛りだくさんなのも嬉しい。
謡に織り込まれた川の名前の中に、藍染川のワードが。
おおーっ
単なる川つながりではなく、ずばり、藍染川つながりでセレクトされた演目だったのですね。

能「藍染川」
シテ(都の女&太宰府の天神)が荒木 亮さん、
ワキ(太宰府の神主)が福王和幸さん、
都の女と神主の間にできた子供・梅千代が根岸しんらちゃん。

ワキツレ(都の女が子供づれで泊まる宿屋の亭主・左近尉)が福王知登さん。
この左近尉が、とても良い役で、むしろコッチがワキなのでは?と思ってしまう。

ワキツレ(太刀持)が村瀬慧さん。
笛が栗林祐輔さん、
小鼓が後藤嘉津幸さん、
大鼓が柿原孝則さん、
太鼓が金春惣右衛門さん。

正妻・萬斎さんは、自分の夫へ届いた都の女からの手紙を開封したうえに、偽の返事をしたためる。
その時の所作に見惚れました!

文章の区切りごとに、
筆に見立てた扇をピンと跳ね上げ、その扇の先から憤りを噴出なさる。

跳ね上げるたびに、ナイフがシュバッ、シュバッと天井に刺さっていくかのよう。
そして、ナイフを飛ばせば飛ばすほどに、美貌に凄味が増してゆく。

演劇的になり過ぎることなく、様式美の枠の中で憤る事で、メロドラマになってしまわず、却って心中の業火の激しさが際立つように感じられました。

アイの役の中で、ダントツに冷酷な女性ではないでしょうか。
というか、狂言方のワワシイ女ではなく、「鉄輪」か、はたまた「葵上」のシテのよう。
萬斎さんがこのアイをなさるなら、何度でも観たい!と思わせられるベストマッチのお役でした!!

さて、この演目では、都の女の遺体(のつもりの小袖)を正先に置くのですが、
今回の公演リーフレットによると、置く向きは「葵上」と逆向きなのですって。
藍染川」では遺体なので北枕の意味がある、と。
なるほど〜

後シテの装束が素敵でした。
半切は、まるで唐織のように立体的な織模様で、重そー。そして高そ〜。
こんな豪華な半切、初めて見た。
袷狩衣はピカピカしすぎず、鈍い色味が重厚で美しい。
シテはわりと小柄な方だったので、もしかしたら昔に作られた、由緒ある装束をお召しになられていたのでしょうか。
美術館のショーケースの中で見る装束もよいけど、それが動いてるのを観れるのは、より幸せなことです!

「第33回 久習會」を観る

12月21日、国立能楽堂へ。

狂言名取川
僧が太一郎くん、
名取の某が深田さん。
地謡が、高野さん&中村くん&内藤くん、
後見が岡さん。

名取川、久しく観ていなかった曲です。
こんなにも佳い演目だったんだっけ?と唸りました。

そもそも、川に名前を流されてしまう、という発想が粋。
更に、魚すくいと同じ感覚で川をさらって、流された名前をキャッチしよう、とする。
なんて伸びやかな思考回路なんでしょー

謡が盛りだくさんなのも嬉しい。
謡に織り込まれた川の名前の中に、藍染川のワードが。
おおーっ
単なる川つながりではなく、ずばり、藍染川つながりでセレクトされた演目だったのですね。

能「藍染川」
シテ(都の女&太宰府の天神)が荒木 亮さん、
ワキ(太宰府の神主)が福王和幸さん、
都の女と神主の間にできた子供・梅千代が根岸しんらちゃん。

ワキツレ(都の女が子供づれで泊まる宿屋の亭主・左近尉)が福王知登さん。
この左近尉が、とても良い役で、むしろコッチがワキなのでは?と思ってしまう。

ワキツレ(太刀持)が村瀬慧さん。
笛が栗林祐輔さん、
小鼓が後藤嘉津幸さん、
大鼓が柿原孝則さん、
太鼓が金春惣右衛門さん。

正妻・萬斎さんは、自分の夫へ届いた都の女からの手紙を開封したうえに、偽の返事をしたためる。
その時の所作に見惚れました!

文章の区切りごとに、
筆に見立てた扇をピンと跳ね上げ、その扇の先から憤りを噴出なさる。

跳ね上げるたびに、ナイフがシュバッ、シュバッと天井に刺さっていくかのよう。
そして、ナイフを飛ばせば飛ばすほどに、美貌に凄味が増してゆく。

演劇的になり過ぎることなく、様式美の枠の中で憤る事で、メロドラマになってしまわず、却って心中の業火の激しさが際立つように感じられました。

アイの役の中で、ダントツに冷酷な女性ではないでしょうか。
というか、狂言方のワワシイ女ではなく、「鉄輪」か、はたまた「葵上」のシテのよう。
萬斎さんがこのアイをなさるなら、何度でも観たい!と思わせられるベストマッチのお役でした!!

さて、この演目では、都の女の遺体(のつもりの小袖)を正先に置くのですが、
今回の公演リーフレットによると、置く向きは「葵上」と逆向きなのですって。
藍染川」では遺体なので北枕の意味がある、と。
なるほど〜

後シテの装束が素敵でした。
半切は、まるで唐織のように立体的な織模様で、重そー。そして高そ〜。
こんな豪華な半切、初めて見た。
袷狩衣はピカピカしすぎず、鈍い色味が重厚で美しい。
シテはわりと小柄な方だったので、もしかしたら昔に作られた、由緒ある装束をお召しになられていたのでしょうか。
美術館のショーケースの中で見る装束もよいけど、それが動いてるのを観れるのは、より幸せなことです!

「第33回 久習會」を観る

12月21日、国立能楽堂へ。

狂言名取川
僧が太一郎くん、
名取の某が深田さん。
地謡が、高野さん&中村くん&内藤くん、
後見が岡さん。

名取川、久しく観ていなかった曲です。
こんなにも佳い演目だったんだっけ?と唸りました。

そもそも、川に名前を流されてしまう、という発想が粋。
更に、魚すくいと同じ感覚で川をさらって、流された名前をキャッチしよう、とする。
なんて伸びやかな思考回路なんでしょー

謡が盛りだくさんなのも嬉しい。
謡に織り込まれた川の名前の中に、藍染川のワードが。
おおーっ
単なる川つながりではなく、ずばり、藍染川つながりでセレクトされた演目だったのですね。

能「藍染川」
シテ(都の女&太宰府の天神)が荒木 亮さん、
ワキ(太宰府の神主)が福王和幸さん、
都の女と神主の間にできた子供・梅千代が根岸しんらちゃん。

ワキツレ(都の女が子供づれで泊まる宿屋の亭主・左近尉)が福王知登さん。
この左近尉が、とても良い役で、むしろコッチがワキなのでは?と思ってしまう。

ワキツレ(太刀持)が村瀬慧さん。
笛が栗林祐輔さん、
小鼓が後藤嘉津幸さん、
大鼓が柿原孝則さん、
太鼓が金春惣右衛門さん。

正妻・萬斎さんは、自分の夫へ届いた都の女からの手紙を開封したうえに、偽の返事をしたためる。
その時の所作に見惚れました!

文章の区切りごとに、
筆に見立てた扇をピンと跳ね上げ、その扇の先から憤りを噴出なさる。

跳ね上げるたびに、ナイフがシュバッ、シュバッと天井に刺さっていくかのよう。
そして、ナイフを飛ばせば飛ばすほどに、美貌に凄味が増してゆく。

演劇的になり過ぎることなく、様式美の枠の中で憤る事で、メロドラマになってしまわず、却って心中の業火の激しさが際立つように感じられました。

アイの役の中で、ダントツに冷酷な女性ではないでしょうか。
というか、狂言方のワワシイ女ではなく、「鉄輪」か、はたまた「葵上」のシテのよう。
萬斎さんがこのアイをなさるなら、何度でも観たい!と思わせられるベストマッチのお役でした!!

さて、この演目では、都の女の遺体(のつもりの小袖)を正先に置くのですが、
今回の公演リーフレットによると、置く向きは「葵上」と逆向きなのですって。
藍染川」では遺体なので北枕の意味がある、と。
なるほど〜

後シテの装束が素敵でした。
半切は、まるで唐織のように立体的な織模様で、重そー。そして高そ〜。
こんな豪華な半切、初めて見た。
袷狩衣はピカピカしすぎず、鈍い色味が重厚で美しい。
シテはわりと小柄な方だったので、もしかしたら昔に作られた、由緒ある装束をお召しになられていたのでしょうか。
美術館のショーケースの中で見る装束もよいけど、それが動いてるのを観れるのは、より幸せなことです!

「萬斎インセルリアンタワー21」を観る

12月15日、セルリアンタワー能楽堂へ。

最初に萬斎さんによる解説。
茄子紺の紋付袴。
蜂須賀先生カラー!

解説は40分。
毎年、この解説が楽しみで、なんとしてでも、この公演には行く、と心に誓っている所以です。

今年も、濃い話題いっぱいでした。
時に混じる毒舌も、けっして聞いている側を不愉快にさせない、というのが不思議。
寧ろ、魅力増し増しです。

狂言「磁石」
すっぱが石田幸雄さん、
田舎者が淡朗くん、
宿屋が深田さん、
後見が内藤くん。

石田さん親子ってば、息ぴったり。
石田幸雄さんの、ぬめっとした、すっぱの雰囲気、気に入りました。

狂言「塗附」
塗師が萬斎さん、
大名が太一郎くん&内藤くん、
後見が淡朗くん。

塗師が売り声をあげながら通りを流してゆくんだけど、「しかも、上〜手です!」というフレーズが。
これが自慢げで、

くぅーっ
なんて自信満々なヒトなんだぁ、可愛いっ、

と嬉しくなっちゃう。

塗った漆を乾かす工程では、
あの小さな箱から、大きな「風呂」が出てきて、私は、うわーっとワクワク。

「風呂」の表面に描かれた模様も雅やかで、すぐそこまで新年が近づいているのだなー、と、浮き立つような気持ちを思い出しました。

大名たちの烏帽子がくっついちゃったのは、どう考えても塗師の責任な気がするのに、当の塗師は、少しも悪びれるそぶりなし。

うん、いいよいいよぉ、そのオメデタイ感じ、どんどん調子に乗っちゃてください!!

救世主よろしく、自分が、くっついちゃったのを解決してあげましょう、なんぞと威張ってるのも、チャーミング。

そして、大名側も、どうやら有り難がっている様子。

いえいえいえいえ、大名コンビよ、そこは怒るトコでしょー、
とツッコミどころ盛りだくさんなのも、楽しかったです。

「萬斎インセルリアンタワー21」を観る

12月15日、セルリアンタワー能楽堂へ。

最初に萬斎さんによる解説。
茄子紺の紋付袴。
蜂須賀先生カラー!

解説は40分。
毎年、この解説が楽しみで、なんとしてでも、この公演には行く、と心に誓っている所以です。

今年も、濃い話題いっぱいでした。
時に混じる毒舌も、けっして聞いている側を不愉快にさせない、というのが不思議。
寧ろ、魅力増し増しです。

狂言「磁石」
すっぱが石田幸雄さん、
田舎者が淡朗くん、
宿屋が深田さん、
後見が内藤くん。

石田さん親子ってば、息ぴったり。
石田幸雄さんの、ぬめっとした、すっぱの雰囲気、気に入りました。

狂言「塗附」
塗師が萬斎さん、
大名が太一郎くん&内藤くん、
後見が淡朗くん。

塗師が売り声をあげながら通りを流してゆくんだけど、「しかも、上〜手です!」というフレーズが。
これが自慢げで、

くぅーっ
なんて自信満々なヒトなんだぁ、可愛いっ、

と嬉しくなっちゃう。

塗った漆を乾かす工程では、
あの小さな箱から、大きな「風呂」が出てきて、私は、うわーっとワクワク。

「風呂」の表面に描かれた模様も雅やかで、すぐそこまで新年が近づいているのだなー、と、浮き立つような気持ちを思い出しました。

大名たちの烏帽子がくっついちゃったのは、どう考えても塗師の責任な気がするのに、当の塗師は、少しも悪びれるそぶりなし。

うん、いいよいいよぉ、そのオメデタイ感じ、どんどん調子に乗っちゃてください!!

救世主よろしく、自分が、くっついちゃったのを解決してあげましょう、なんぞと威張ってるのも、チャーミング。

そして、大名側も、どうやら有り難がっている様子。

いえいえいえいえ、大名コンビよ、そこは怒るトコでしょー、
とツッコミどころ盛りだくさんなのも、楽しかったです。